
ショートショートnote杯 結果発表です!
2021年10月1日から11月14日まで募集をさせて頂いた、カードゲーム「ショートショートnote」を使って短い物語を書くコンテスト、題して「ショートショートnote杯」。
最終的に2600点以上ものショートショート作品をご応募を頂きました。改めまして心から御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
審査員長であるショートショート作家の田丸雅智さんを中心に、約1ヵ月をかけて審査を行わせて頂きました。以下に、結果を発表させて頂きます。
◆最高賞(1作品)
大賞
『君に贈る火星の』 ますだななこ
審査員選評
【田丸雅智】
刑務所を火星に見立てた発想、そして、自分のいる場所が刑務所であることを含ませつつもあえて火星にいるかのように振る舞っている主人公の描写もお見事でした。その振る舞いは最後の最後まで貫かれ、いっそう胸に迫ります。この短い分量で年月の経過を描き切った点も素晴らしかったです。
【せきしろ】
この作品は全体的なトーンは変わらず、リズムの変化もなく、終始淡々としている。それなのに突然頭の中に浮かびあがる色が変わる。モノトーンだった景色に鮮やかな色が入ってくるのだ。それはまるで芥川龍之介の『蜜柑』を読んだ時のようだ。同時に感情が大きく揺さぶられる。美しいショートショートである。
【高橋晋平】
僕はこの作品を読んで本当に少し泣いてしまったのですが、わずか410字という短さで人を泣かせるのは本当にすごいことだと思いました。最後の2行もグッときますが、途中の言葉ひとつひとつが、情景を思い浮かべられるほど洗練されていて素晴らしかったです。本コンテストのお題であった、この難しいタイトルにふさわしい内容であったことにも脱帽しました。
【大澤孝(Ideastation代表)】
満場一致での受賞です。“君に贈る火星の”のタイトルで素敵な作品を多数いただきましたが、その中でも一つ抜けて印象深く、また心に残る一作でした。偶然生まれたことばの組み合わせからこんなすばらしい作品が生まれるなんて、ショートショートの奥深さや面白さをあらためて感じさせていただきました。おめでとうございました!
◆審査員特別賞(4作品)
田丸雅智賞
『空飛ぶストレート』 森
審査員選評【田丸雅智】
幻想的で、とても魅了されました。実際に目の前で星が爆ぜたように感じ、星が震えて落ちてくる様子も目に浮かぶようでした。全体に漂う静かな雰囲気も、音や色を際立たたせます。この冬は、星を見上げるたびにこのお話を思いだすことでしょう。
せきしろ賞
『しゃべるピアノ』 むう
審査員選評【せきしろ】
選考をしている時に衝撃を受けるのが、自分には到底思いつかない、あるいは自分には絶対に書けない作品に出会った時であり、そうなると呆然と立ちすくすしかない。この作品はショートショートでありつつも、絵本を読んでいるようでもあり、NHKの『みんなのうた』を聞いているようでもある。私はただただ立ちつくし、この方の他の作品も読みたくなった。
高橋晋平賞
『金持ちジュリエット』 中臣モカマタリ
審査員選評【高橋晋平】
落語好きな自分は、こんなふうにオチの1行でズバッと来られると、どうしても心をつかまれてしまいます。端々に見える遊び心、アイデア、物語のゲーム感なども、おもちゃクリエーターとして勉強になりました。多くの方に読んでほしい作品です。
Ideastation賞
『君に贈るリストラ』 又吉マタキチ
審査員選評【大澤孝(Ideastation代表)】
僕自身、家庭では洗い物の担当をしていますので、とても共感?できる作品でした。とくに最後の一文の強烈さがみごと!まよわず個人賞に推させていただきます。作者のかたのほかの応募作も、どれもひとひねりあって楽しく読ませていただきました。これからも、すばらしい作品を楽しみにしています。おめでとうございました!
◆佳作(5作品)
笑えるで賞
『穴の中の履歴書』 たらはかに(田原にか)
審査員選評【田丸雅智】
蟻を使って履歴書の選別を行うというアイデアに魅せられました。甘い言葉の具体例にも、思わずニヤニヤしてしまいます。そして、主人公が自分の想いをしたためた手紙に関する、たたみかけるようなラスト。ブラックな笑いを誘われずにはいられませんでした。
斬新で賞
『株式会社リストラ』 浅賀らす
審査員選評【田丸雅智】
いわゆる「お祈り」を事業に活用するという風刺的なアイデアもお見事であれば、挨拶文とお知らせという形式で描く方法にも斬新さを感じました。ビジネス調の挨拶文に対して、お知らせでは口調が組織に合わせた雰囲気に変化していて、ニヤリとさせられました。
ゾッとするで賞
『冷蔵庫カフェ』 文京小噺(刈川メリ)
審査員選評【田丸雅智】
こんなカフェと真夏に遭遇したら、反射的に中に入ってしまうことは間違いありません。最初は心地よかった冷たさが長居するうちに寒さに変わっていく感覚は誰もが経験があるはずで、嫌な予感にとらわれます。そして、そこからの結末。まさにゾッとした一作でした。
心に響くで賞
『ATMに教えられたこと』 天野弱 Jaku_Amano
審査員選評【田丸雅智】
ATMを使っていてやり直しを求められることはときどきありますが、その文言を主人公の人生と巧みに重ねた点が素晴らしかったです。同じ文言が3回反復されたあとの、意表を突く文言。そして、とどめとなるラスト一行。自分も励まされたようで、ぐっときました。
天才!?で賞
『バナナドライバー』 鈴懸ねいろ
審査員選評【田丸雅智】
一行目から惹きつけられ、つづくバナナのセリフで完全にノックアウトされました。異様な状況をすんなり受け入れる主人公。次々と繰りだされる、バナナによる、バナナにちなんだエピソード。そのわけの分からなさに、中毒性のある強烈な魅力を感じました。
◆特別メディア協賛賞(5作品)
ガジェット通信賞
『数学ギョウザ』 水沢ながる(絵は描けない)
【ガジェット通信からの選評】
キャッチーな反面、難しいお題だと思うのですが、店主の遊び心でそんなサービスをする町中華のお店が実在するのかも……と思わせるリアリティがあり、引き込まれました。読後感もよく、「この話面白いよ」と人に教えたくなる作品です。余談ですが、作中に登場する数学の未解決問題が、いかにもありそうだけど実は存在しないのが面白かったです。
家men賞
『空飛ぶストレート』 かなつん____ʃ⌒ʅ_🖋
【家menからの選評】
家menのパパ友&編集部で今回賞を選出させていただきました。
ほっとする話やビックリする話など、作品の切り口がすべて異なっていて選ぶのはなかなか難しかったですが、今回はショートショートということで、短くても読後、心に残った「空飛ぶストレート」を選ばせていただきました。
改めて複数拝読させていただき、ショートショートの面白さや魅力などを再発見できた審査会になりました。素敵な機会をありがとうございました。
モノ・マガジン賞
『しゃべるピアノ』 へいた
【モノ・マガジンからの選評】
「しゃべるピアノ」というタイトルで、安易にSF設定やシュールな展開にすることなく、ニヤリとするオチに収束していく話の流れがお見事。冒頭、ピアノが“しゃべる”ではなく、“歌っていない”というのも上手い。最後の母の一言によって救われたであろう主人公の気持ちを思うと感動すら覚えます。モノ的にもピアノでなければ成立しない話であり、短い文章の中で主人公の性格、時の経過、現在の状況など、端的に読者にイメージさせる無駄のない演出、構成力がすばらしい。読後の余韻がいちばん残った作品でした。
GetNavi web賞
『違法の告白』 氷堂出雲
【GetNavi webからの選評】
(編集長コメント)
個人的にショートショートは大好きで、出版社を目指したきっかけも「星新一先生に小学生時代に触れたから」という私なので、ショートショート然とした作品が好みです。
氷堂出雲さんの「違法の告白」は、ショートショートにつきものの行き過ぎた文明社会への皮肉が込められた作品。今風なら「AI」とするところを「コンピュータ」と表現する点にもこだわりが感じられます。いまや恋愛や結婚はテクノロジーが支える行いになりました。こうした未来が絶対にやってこないとは言えない気もしています。
今回ご応募いただいた作品は、どれも視点が斬新。「適度な制限」が「自由な発想」を助けるーーそんな魅力を「ショートショートnote」に感じたことにも触れておきます。
未来へいこーよ賞
『助手席の雨雲』 吉村うにうに
【未来へいこーよからの選評】
作者の登場人(雲)物への「スキ」という気持ちが、セリフや状況描写のあちこちに感じられる作品。「雨が降らなくて困っている場所に、雲をお届けする」というファンタジー的な設定でありながら文章が読みやすく、情景が目に浮かぶようでした。ラストで主人公が声をかけて「雷鳴は止み~」となるところは、主人公とお父さんのやさしさが端的な文章で伝わるのが見事。読後とてもほっこりした作品です。
入賞作品は以上の15作品となります。
本当におめでとうございます。
入賞者の皆様は、12/21(火)20:00からZoomで開催される表彰式&ゲーム会にご招待させて頂きます。(該当の方々に12/13(月)以降数日以内に順次noteアカウントを通して今後の事務連絡をメールさせて頂きますので、noteアカウントに登録しているEメールアドレスをチェックしておいてください。)
今回の審査は、作品数の多さもありましたが、レベルが非常に高く、議論にとても時間がかかってしまいました。惜しくも入賞に届かなかった作品にも素晴らしいものがたくさんありました。あまりにも惜しいので、今回、入賞作品を決めるための最終選考まで残った作品も以下に列記させて頂きます。よろしければこちらも読んでみて下さい。本当に甲乙つけがたい作品ばかりでした。
・最終選考まで残った作品
『失恋自己紹介』 あかいしん
https://note.com/akaisinn/n/nda45880f33f9
『1億円の低カロリー』 はつみ https://note.com/hatumi79/n/nae003df25196
『プロの神様』 又吉マタキチ
https://note.com/matamatakichi/n/n2322ee143409
『鬼ごっこ』 小牧幸助|1分ショートショート
https://note.com/komaki_kousuke/n/nd9f10b6fef68
『1億円の低カロリー』 はつみ
https://note.com/hatumi79/n/n4f62fa984a91
『しゃべるピアノ』 射谷友里(イテヤユリ)
https://note.com/yuri_iteya/n/n62590cd502f5
『穴の中のピアノ』 田坂惇一
https://note.com/junichi_221/n/n91b017b78bd6
『穴の中のしまうま』 10101298
https://note.com/10101298/n/n5eea2adf1b65
『失恋履歴書』 かなつん____ʃ⌒ʅ_🖋
https://note.com/t_kanatsu/n/n72c68613d3ff
『アナログバイリンガル』 kuutamo(月町さおり)
https://note.com/kuutamo432/n/nf2ac04cd928a
『金持ちジュリエット』 新下彗
https://note.com/aqueousthink/n/ncb88114a8967
『立方体おじいちゃん』 柏森
https://note.com/kashiwamori21/n/n6e2e4353a6ed
『コロコロ変わる名探偵』 たなか
https://note.com/sgt_granite/n/n31039cde0769
『君に贈る最後の』 ichi
https://note.com/korbitt/n/nfe3a73338221
『株式会社リストラ』 あめしき@02文庫
https://note.com/amesiki/n/n36e62b91e0ac
『株式会社リストラ』 広瀬 ひとり
https://note.com/hitori_cough/n/n5bb9206016f3
『君に贈る棒』 小牧幸助|1分ショートショート
https://note.com/komaki_kousuke/n/n05e5a753025b
『君に贈る火星の』 そるとばたあ@ことばの遊び人
https://note.com/wondermaker54/n/n00d457b66593
『数学ギョウザ』 高野ユタ
https://note.com/yuny00y/n/nf1a4652927bd
もちろんこれらの他にも素晴らしい作品がたくさん......と、挙げればきりがないのですが、とにかく関係者全員、本当に感動し、楽しませて頂いた数か月間でした。
結果発表は以上です。今回のコンテストにご参加下さった皆様、応援したりシェアしたり盛り上げたりしてくださった皆様、本当にありがとうございました!
今回残念ながら作品が入賞できなかった皆様も、入賞作品をみんなで祝福していただきつつ、これからもまた面白いショートショート作品を書き続けて頂けますと、関係者一同、嬉しい限りです。
今後も、本コンテストのきっかけであるカードゲーム「ショートショートnote」を全国に広めていく活動は続いてまいりますので、またイベントなどがあった際にはぜひご参加ください。引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。