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決められる力と韜晦する技量

 組織の幹部であることの最大の条件は、決められる力だと感じます。
 わかりやすい、典型的なケースであれば、社内のルールをそのまま運用することで対処可能であったり、複数の選択肢があれば、ルールやこれまでの事例の積み重ねの中から、説明可能な判断をすることは比較的容易です。
 ただ、世の中、ルールをそのまま適用すると、基本ダメだけれど、組織の利益(これは金銭的なものだけでなく、信用の維持とか、リソースのより効率的な活用も含めて)との比較衡量で、ルールの中で読むことが可能と判断できるか、といった難しい判断を迫られる場面が、多いように思います。
 また、本来の「お作法」としての手順は定められているけれど、時間的な制約があり、この制約を無視してお作法どおりに進めると、組織が利益を逸失することが確実視される時には、緊急避難的に、お作法を外れた手順を取らざるを得ない場合もあります。
 こうした場合は、現地指揮官たる中間管理職の判断が重要になります。後で報告する際に、その判断を責められる可能性はあるけれど、組織の利益を考えると、その場では最適な判断をする、これは非常に難しいことで、逃げたくなりますが、逃げては指揮官の存在価値はありません。戦争での現地指揮官の判断は命がけであり、それに比べれば平時の組織の中間管理職の責任は軽いものといえますが、とはいえトレーニングができていないと、判断を躊躇してしまうと思います。
 一方で、想定外の方向から攻撃を受けた場合には、慌てたり無理に反撃したりすると、かえって混乱しますので、まずは守りを固め、不利な地勢にあれば散開し、その後、情報を収集して相手を見極め、それから反撃に転じることになります。取引先とのトラブル発生や不祥事の発覚などは一種の奇襲攻撃であり、まずは汎用性の高い守りの対応でしのぎつつ、情報収集し、攻めに転じないと、初動の失敗でより大きなダメージを受けて、反転までに余計な時間がかかってしまいます。
 そうしたときに組織幹部に求められるのは、韜晦する技量だと思います。はぐらかすというと、聞こえが悪いですが、そうした奇襲攻撃時のルールは、一旦凌いだ後の守りから書かれており、その前段の、第一撃へのリアクションは、それがどの程度、深刻な事態に発展するのか、そもそもトラブルなのかも判じ難い場合もあります。どちらに転んでも良いように、第一撃に対処する時は、動物的な勘に基づき、はぐらかすことができる、できればそうした事態に遭遇することは避けたいですが、同時に身につけておくことの重要性を感じます。

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