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詩で愛の告白を

「好きな人に詩なんて書かないよ。」
と言うと
「えーっ!?嘘だろう?」
と驚かれた。驚いたのはこっちの方だ。好きな人に詩を書くなんて、気持ち悪がられるのでは?と思っていたからだ。

カナダ人、アイルランド人、ポーランド人、チリ人なんかがその場にいて、アジア系は自分一人だった。

「日本では好きな人に詩を書いて気持ちを伝えたりしたら気持ち悪がられる」と言うと、「日本人っておかしいんじゃないの?」と言われた。これには本当に驚いた。詩を書くなんて変な奴だと思っていたからだ。

ゲストハウスで知り合い、仲良くなった者同士、テラスで雑談していた時のことだ。カナダ人の男が、ゲストハウスで働くイギリス人の女性のことが好きになったのだった。気持ちを伝えろよ、とみんなに促されて、彼が詩を書くと言ったことから、そんな話になったのだった。

「俳句とかあるじゃん、日本には」

「俳句はそうゆう時につかう詩じゃない。それなら短歌だ」

「短歌ってなに?」

 
そんな話をやんややんや、としていたが、結局日本では恋人に詩を書く文化は、昔はあったが(平安時代とか)今ではないのではないか、という結論に至ったのだった。(あくまで日本古来のという意味で)

その翌日詩を書き上げた彼は、みんなが寝静まった夜遅く、ゲストハウスのテラスのすぐ上にある彼女の部屋の真下で(彼女がそこにいることを確認して)その詩を読み上げたのだった。みんな真剣に聞いていた。


詩のタイトルは「Kitchen development」で、その由来は、彼女がキッチンで働いているところを狙って料理を作ったり皿を洗ったりしていたところからきたようだった。

詩の中身までは、自分の英語力では残念ながら細かいニュアンスまで分からなかったが、正直それほどいい詩とは思わなかった(失礼)ただみんなが真剣に聞いているのには驚いた。

翌朝、目が覚めると自分のベッドの枕元に、マジックでなぐり書きした貼り紙がはってあった。

「早く起きろよ、俺は寂しいんだ。遠慮するな。」

見事に玉砕したわけだ。


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