とある地方都市の外れにて #02 おかんの学歴詐称

少し前にマウンティングという言葉が流行った。
おかんはまさにマウンティングおかんであった。
兎にも角にも自分が一番でないと気が済まない。
お陰で今で言うママ友は皆無に近かった。

そんなおかんは事あるごとに自分の出身高校の自慢をした。
おかんの出身校は県内一の公立進学校とのことだった。

そんなある日のこと。
中学受験専門の塾に通っていた私に、とある進学校の教頭先生からの面談の話が舞い込んできた。
当時そちらに進学する気のない私を何とか説得しようとの試みだったようだ。

所詮本人の意思を伴わない面談である。
軽い気持ちでノコノコ出かけた。

何を話したか覚えていないが、そろそろ帰ろうかとなった時、教頭先生がおかんにふと出身高校を尋ねた。
どうやらおかんが当時私に吹聴していた進学校で教壇に立っていたことがあるらしい。
年代的にも合うので、もしかしたら教え子ではないかとのことだった。

当然おかんは意気揚々と答えるもんだと思ってた。

『あ、いえ、私はそんな進学校の出身ではないので…(笑)』

耳を疑った。
と同時に思わず『えっ?!』と声が出てしまった。

その日一番、何とも言えないビミョーな空気が漂った。

おかんは力なくヘラヘラと笑いながら『子供にはちょっといい学校を出てると言ってたもので…。』と嘯いた。

おかんの学歴詐称が、この上なくみっともない格好で露見した瞬間であった。

よくも窓から飛び降りなかったものである。

その後の帰りの車の中で、おかんは何故か逆ギレ気味に『あの高校には地域枠のせいで入れなかったんだ!』と捲し立て、本当は県内で二番目にレベルの高い高校の出身なのだと言い放った。

別におかんがどこの高校を出ていようが、知ったことではなかったのだが、この事件がちょっと面白かったこともあり、私はここの中学を第一志望校にすることにした。

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