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これからの時代を生き抜く、グローバルな人事プロフェッショナルになるためにできる7つのこと

前回、「なぜグローバルなフィールドで活躍できるようになった方がいいのか」についてまとめてみました。

今回はその続編について書いてみたいと思います。

先日、とある日本の人事関係者の方とお話ししていたときに、どうやったらTimtamさんのように、グローバルで活躍できるようになるのだろうか、といろいろとご質問を受けました。その場では思いついたことしか言えなかったのですが、その後も「う~ん、どうすればいいのか」と考え続けており、ここにその思いをまとめたいとおもいます。

正解などないので、若干以下とりとめがありませんが、ご容赦ください。

ちなみに、私自身は、実は日本と米国でしか働いた経験がないです。またグローバル=アメリカ、というつもりも毛頭ありません。ただ現在の立場上、欧州およびアジアでもチームを持ち、彼らと一緒に仕事を進めている事と、移民国家であるアメリカの私のチームには、中国、香港、台湾、日本、UK、カナダ、ニュージーランド、イタリア、等々様々な国の出身者がおり、性別、世代、性的嗜好も非常に多様です。こういうDiversity溢れるチームを率いたり、他のチームの関係者と協業や交渉しながら結果を出す事につなげるスキル・能力は、どうしたら身につくのか、という事です。

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そのためには、まず今自分が置かれた環境において、ハイパフォーマーであることが最初の出発点です。当たり前ですよね? 母国語で意思疎通が図れるというというのは、イージーモードな環境なわけです。そこで仕事ができない人が、より難易度の高いグローバルなフィールドで突然仕事ができるようになるというのは絶対にあり得ません。「日本はもうだめだ、ここでは幸せになれない」という風に現実逃避的に海外に行く人がそこで成功する確率は低いのです。

その上で、環境を変えてもその高いパフォーマンスを発揮できるようになるにはどうすればいいか?私はそれを「ホメオスタシス人材」と呼んでいます。正直にいうと、昔どこかの人事コンサルの方がこの言葉を使ってらっしゃって、説得力があったので、未だに使っている言葉です。ホメオスタシス、昔理科で習いませんでしたか?つまり外部環境が変わっても、物事を一定に保というとする体の働きです。暑い季節になって体温が上がったら、汗をかいて体温を一定に保とうとする、というのも一つのホメオスタシスの事例です。

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ここまで、こういう風に整理してきました。(中間まとめ)

グローバルな人事プロフェッショナルになるとは、
・多様なチームを率いたり、他のチームの関係者と協業や交渉しながら結果を出していく持っていくスキル・能力を持つこと
・ホメオスタシス人材になること

その上で、上記を達成するための幾つかのヒントになりそうな事柄を挙げていきます。

1. 当たり前になっている今の考え方や環境すべてが、実は特殊かも、と疑ってみる事がスタートポイントになります。世界において、日本がどれだけ特殊な環境であるかを認識する必要があります。特に米国に住んでいると日本の特徴がよく分かります。まずは、周りがほぼ全員日本人であるという事。そう、これはかなり特殊な事なんです。島国ですからね。最近でこそ東京にいると、少し多国籍になってきたかなと感じる事もありますが、それでも基本的には、ほぼ全員日本人であり、日本語で会話ができ、同じような常識や似た価値観を持っている。会社の組織図を見ていても、そこにならぶ部長やら役員の名前は、全部漢字の名前(そして、ほとんど男性)。また、ほとんどが生え抜きで一社しか経験がない。これって海外が長い私のような人が見ると、大変な違和感があります。

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2. 1.の続きになりますが、やはりその特殊な環境(日本)を抜け出し、修行するのが一番の近道です。言葉だけでなく、文化面や、考え方、アプローチについてもバイリンガルになる必要があります(「バイカルチャー」ともいいますね)。そのためには早ければ早い方がいい。できれば20代の時に海外に出る道を探るのがベストです。学生の方なら留学をする、積極的に海外交流して何かのプロジェクトを一緒にまわしてみるとかです。

既に社会人の方が、どうやって海外にでるか? ですが、アメリカの場合については、今からアメリカで働く方法、というものを別記事でまとめてみたいと思います。

3. 「英語で」勉強すること
エンジニアなど専門性がものをいう職種であったり、Individual Contributor(部下をもたない個人プレーヤー)の場合は別として、チームが大きくなってくるとやはり高いレベルの英語が必要です。たかが英語、されど英語。英語の勉強はやって決して損をする事はありません。また、先に述べたように、言語だけを習得するのではなく、自分の今の考え方は独特なのだと改めて認識したうえで、異文化の考え方、アプローチなども積極的に理解・吸収しようとしてみる。つまり英語を勉強するのではなく、英語で勉強するという姿勢が大切です。逆の事例でを思い浮かべてみてください。たまに日本語が超堪能なノン・ジャパニーズの方がいます。彼らは、日本の文化や日本人の考え方についても大変詳しいですよね。それと同じ事の逆をやればいいわけです。手始めに異文化研修を受けてみるのもありかもしれません。

余談ながら、近い将来、AIが進み、外国語などできなくても自動翻訳機が発達するから困らない、という考え方があります。これは、外国語そのものだけに注目した場合はそうかもしれません。ですが、言葉そのものの習得が目的ではありません。言葉を通じ、異文化における考え方、マインドセット、文化、アプローチなど、もう少し幅を持って身に着けて、バイカルチャーになることを目標にした場合にAIで置き換えられるかは疑問です。

4.  ダイバーシティの本質を理解し、多様なバックグラウンドの人と協業できるようになることを意識すること
ダイバーシティの本質については、別記事でまとめたとおりです。日本における多様性は海外のそれに比べて大変に低いです。そのような同質性の高い環境における、種類の少ないダイバーシティですらハンドルできない人が、グローバルなフィールドで人事として活躍できるわけがありません。海外に出て活躍できるのは、やはり何事に対してもオープンなマインドを持つことが大事です。

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5. 各個人の都合や家庭の事情を「わがまま」と思わないこと。
これ、日本人が一番苦手な事です。基本的に集団主義の日本の会社においては、会社で個人や家族の都合を前面に出して、他の社員に迷惑をかけないようにしよう、というのは暗黙の了解。だから有休も取得しづらい傾向にあります。例えば、私の知り合いの米国駐在中の日本人人事担当者が、日本への帰任時期を日本本社と交渉したときに、あと数か月だけ長く米国滞在できたら、自分の子供が帰国子女枠で中学校を受験できるので、何とかそこまで滞在させてもらえないかとお願いしたところ、ビジネス上の理由ならまだしも、こんなのは「個人のわがままだ」と一蹴されたそうです。欧米的にはまったく理解されることのないロジックです。

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勿論、私の働く米国でも、他の人に迷惑をかけないように配慮するのはビジネスプロフェッショナルとして当然ですが、各個人個人、それぞれの事情があり、それを前提にビジネスをまわしていけるように考えていくのが普通です。会社としてどこまで個別の状況をaccomodateしつつ(考慮しつつ)チームのPerformanceをマネージしていくかは、各マネジメントに課されたチャレンジと言えます。日本では、その教育制度ゆえ、大量生産をベースとした考え方が未だに刷り込まれた価値観として脳みその奥深くに眠っています。皆、同じような状況であり、個別にパターンを作ることを良しとしない風潮。普通はこうあるべきものだという同調圧力。こういうのを乗り越えるためにも、ダイバーシティに対応していく事はこれからますます重要になっていくでしょう。こちらも別途詳しく記事を書いていきたいと思います。

6.自分の考えをはっきり持ち、論理的に説明できる能力を身につけること。いわゆるassertivenessというものですね。"I think A is B because..." という事をきちんと説明できるかどうかは大切です。日本のように単一民族の島国における「ハイコンテクストカルチャー」では、みな似たような考え方や常識を持っているので、「一を聞いて十を知る」という諺があるとおり、すべて語らなくとも相手が理解してくれる可能性が高いです。ハイコンテクストカルチャーにおいては、話が理解されるかどうかは、聞き手に責任がありますので、相手が理解できなかった場合、「なんでわからないの?頭悪いんじゃないの?」となります。一方、移民国家であるアメリカでは、共通の常識的なものはあまり存在しません。このため、「ローコンテクストカルチャー」と呼ばれ、相手が話を理解してくれるようにちゃんと説明しないとわかってもらえません。意を汲んで気を利かせて欲しい、空気読めよ、などというのはありません。話が理解されるかどうかの責任は話し手にあります。細かいルールも含めて法律で定められているのはこのためです。(もちろん、長年連れ添った夫婦や、同じ職場の仲間同士では、過ごす時間が長ければ長いほど、「コンテクスト」が醸成されていきます)

例えば、日本から派遣された駐在員でうまく行かない場合に「彼/彼女はいつも静かで何を考えているか分からない」という声が周囲から上がる事があります。

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7.外資系に勤めてみる
現在の日本は、伝統的な日本企業と、外資系企業の2つに大きく分かれます。外資系企業は、欧米のフレームワークをそのまま日本に持ってきて展開しようとします。よって、一般的なHRのフレームワークやTerminology(専門用語)は身につくでしょう。もしこの時に上司やチームが日本人ではないという体験ができれば、より得るものは大きいはずです。外資系と一口にいっても、歴史が浅い企業をお勧めします。最近だと、アマゾン、グーグル、Facebook、Netflix、などそういう会社です。日本にローカライズして長い歴史をもつ外資系企業では、日本式になっている可能性が高いです。

外資系に就職というと、よく言われるデメリットもあります。例えば以下のようなものです。
1)日本企業から外資系への転職は後からでもできるが、外資系から日本企業への転職は一般的に難しい
2)日本企業のほうが海外赴任しやすいが、外資系は基本的にそれぞれのローカルマーケットでの採用なので、赴任はない
3)日本企業は日本が本社だが、外資系の日本ブランチはローカルブランチの一つであり、本質的な意思決定にかかわる事ができない、などが挙げられます。

ですが、運が良ければ上司にかけあって海外の本社や別ブランチに出してもらう、というケースもあります。よほどのシニアなポジションであれば難易度は高いですが、比較的ジュニアなポジションであればあるほど、可能性があります。米国企業であれば、1年間日本支社で勤務をすると、Lビザという企業内転筋ビザの資格ができますので、それを使って渡米する人もいます。私の身近な例で少なくとも3件これで渡米した人を知っています。

いかがでしたでしょうか。言うは易しだと思いますが、かくいう私もまだまだなところがあり、もう努力あるのみです。こればかりは王道がありません。頑張りましょう。



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