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ワールドトリガーに見る戦闘の「詰み盤面」の動かし方とそのパターンについて

◯はじめに

私はバトル漫画における「詰み盤面」を

あるキャラクターがその時点で持っている戦力・戦術ではどうすることもできない状況

と定義します。

いわゆる「絶体絶命のピンチ」という奴です。

バトル漫画ではこの「詰み盤面」が動くことで、戦闘に臨場感が生まれると考えています。

動かし方のパターンとしては

①新規能力の発現
②既存能力の応用
③第三者の介入
④地形の利用

の4つについて考察していきたいと思います。

①新規能力の発現

1つ目は「新規能力の発現」です。

そのキャラクターが今まで持っていなかった能力が何らかの理由で発現し、その能力で「詰み盤面」を動かすことを指します。

ワールドトリガーの場合、基本的に装備しているトリガーしか使えないので戦闘中に新しいトリガーを使うなら黒トリガーを作るしかありません。

しかし、今の時点で戦闘中に黒トリガーを作って「詰み盤面」を動かしている描写はありません。

旧ボーダーのアリステラでの戦闘では、そのような状況を推測できる記述はあります。

『「こっちの世界」まで攻め込まれる前に「敵の国」はなんとか追い返したけど、犠牲も大きかった。19人のうち10人は死んで、そのうち何人かは黒トリガーになったわ』

第162話

あるいは遊真の黒トリガーは相手の攻撃をコピーすることができるので、コピーした能力を「新規能力」とすれば「新規能力の発現」ということになるかもしれません。

(こちらの攻撃をコピーして何倍もの威力で打ち返してきた……! 「他者の攻撃を学習するトリガー」……!! そんな反則みたいなトリガーがありなのか……!?)

第16話

しかし、遊真が戦闘中に相手の攻撃をコピーする描写はここしかないので、意図的に「新規能力の発現」の使用を控えている印象を受けます。

いずれにしても、ワールドトリガーの場合は「新規能力の発現」はあまり見られないパターンかもしれませんね。

②既存能力の応用

2つ目は「既存能力の応用」です。

そのキャラクターがすでに持っている、あるいは作中ですでに登場している能力を応用することで「詰み盤面」を動かすことを指します。

大規模侵攻編の遊真vsヴィザ戦はこの「既存能力の応用」が使われていると考えられます。

(馬鹿な、生身では決してトリオン体を破壊できないはず。つまりこれは換装前からトリオン体だったということか……!?)

第79話

遊真の肉体が換装前からトリオン体であることは、読者にとっては既存の情報です。

「じゃあ……あいつが歳のわりに小柄なのは……」
「そう、トリオンの肉体に成長する機能はない。ユーマの体は11歳の時から変化していない」

第20話

また、遊真vsヴィザ戦の直後にある修のトリガー解除や三輪の風刃起動も、同様に「既存能力の応用」であると言えます。

「わかってきたぜ、てめーのトリガーは……トリオンにしか効かねーと見た」

第72話

『「風刃」があればお姉さんの仇を討ちやすくなるぞ。パワーアップはできる時にしておいたほうがいいだろ』

第43話

「既存能力の応用」はあらかじめ読者に情報が提示されているので、読者がその「詰み盤面」の動かし方を理解しやすい、納得感があるという利点があります。

ワールドトリガーでは他にも「既存能力の応用」が使われている場面が多々あり、それが戦闘の面白さ、奥深さに繋がっていると言えます。

③第三者の介入

3つ目は「第三者の介入」です。

第三者が「詰み盤面」に介入しそのキャラクターの代わりに「詰み盤面」を動かす、動かすための助力をすることを指します。

大規模侵攻編は戦闘能力が低い修にとってはほぼ全て「詰み盤面」なので、この「第三者の介入」が頻繁に発生します。

「修、遊真はどうしたの?」
「(この声……)小南先輩……!?」
「エスクード」
(地面から盾が……!!)
「遅くなったな修」
「……烏丸先輩!」

第53話

「悪いがここからはおれが相手をさせてもらう」
『「弾」印、六重』
『おっと間違えた、「おれが」じゃなくて「おれたちが」だった』

第63話

「三雲先輩おまたせっす! 遊真先輩は?」
「空閑はむこうで黒トリガーと……」
「マジか! いいな―!」
「よ―京介、先輩が助太刀してやるぜ、泣いて感謝しろよ」
「泣かないすけど感謝しますよ」

第67話

「持たせたなオサム、ユーマの指示でチカとオサムを護衛しに来た」

第69話

(…………! あの人は……!)
「……標的を確認した。処理を開始する」

第75話

かなりの数のキャラクターが「第三者の介入」を行いますが、全員ボーダー入隊編までに登場しているので読者はそれほど混乱することなく読み進めることが可能です。

ワールドトリガーはキャラクターがかなり多い作品なので、「第三者の介入」はもはや必然と言えるでしょう。

④地形の利用

4つ目は「地形の利用」です。

周辺の地形に何らかの変化を与える、地形にある物や地形そのものを利用することで「詰み盤面」を動かすことを指します。

大規模侵攻編では緑川や出水が「地形の利用」を使っている描写があります。

(煙幕……!?)

第59話

(これは……狙撃……! 爆撃で建物を破壊したのは……狙撃の射線を通すためか!)

第73話

「地形の利用」に関してはB級ランク戦編でも序盤から使われており、ワールドトリガーの戦闘に欠かせない「詰み盤面」の動かし方ですね。

「普通のMAPで五分の条件だったら、玉狛が荒船隊を崩すのは難しかったと思うよ。さっき東さんも言ってた通り遠距離戦じゃ経験の差が歴然だからね。玉狛もそれをわかってたから、極端な地形を選んで勝ち筋を限定した」

第91話

「一番でかいポイントはやっぱ橋が落ちたとこだろ。身を切って那須隊の作戦を阻止した玉狛の思い切りはなかなか。あれがなかったらたぶん那須隊が勝ってた。最初の転送位置がかなりよかったからな」

第103話

「宇佐美先輩が言うとおり建物の中が戦場になった場合は、千佳は別行動で建物の外に置く。建物の中は射線を通しづらいし千佳が距離をつめて戦うのはリスクが大きい。戦場を外から狙える位置に陣取って、中の戦闘が押され気味になった時は砲撃で状況を変えてもらう」

第166話

玉狛第二の戦術には千佳の「大砲」や修の「ワイヤー陣」、ヒュースの「エスクード無双」など、「地形の利用」に繋がる要素が組み込まれていると言えます。

◯終わりに

ワールドトリガーの戦闘から「詰み盤面」の動かし方のパターンを考察しましたが、ワールドトリガーの戦闘が面白いのは「新規能力の発現」を最低限にして、「既存能力の応用」「第三者の介入」「地形の利用」にバリエーションを持たせているからかもしれないですね。











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