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瀬戸内国際芸術祭を巡る

【序】母と二人で、瀬戸内の島々を訪れた

目的は、3年に一度行われる芸術祭、いわゆるトリエンナーレだ。前回の開催くらいから母が行きたいと言っていて、半年ほど前から計画を立てていた。

術祭は春、夏、秋と3つのシーズンで行われており、春の開会はゴールデンウィークの始まりと同時だ。
10連休という長い休みに入ってすぐに出発し、4日間で4つの島(香川、小豆島、豊島、直島)を巡る計画を立てた。

何を思ったか、出発前夜にSTUDIOで日程表を組み始める。

(母親が持ち歩いているiPad miniのサイズで見るのに丁度良いサイズで作成。予定をクリックすると周辺情報のリンクとか出て来るとこまでやりたかったが、間に合わず。)


【1日目】高松から良好なスタート

初日から、かなり良好なスタートが切れた。
岡山から高松へ向かう、マリンライナーからの景色は絶景であった。

街もニュースもSNSも、平成と令和の節目でなんだか正月のような清々しい空気が漂っていた。また、2年間勤めた会社を退職し、空になった自分の中に、車窓に流れる景色が何の抵抗もなくさらさらと入り込みとても気持ちが良かった。

高松へ到着すると、素敵な夫婦が出迎えてくれた。長いこと旅行会社に勤めている母の、職場の知り合いだ。

高松駅すぐの案内所へ導かれ、芸術祭のパスポートを受け取ったなら、旅の本編が始まる。

高松在住の素敵なご夫婦は、ガイドブックなどには載っていないタイプのローカルなうどん屋さんへ連れて行っていただいた。

🍴さか枝
値段も手頃で、うまい。加えて奥さまがとてもチャーミングで一緒にご飯食べてるだけで心が温まった。
ちなみに天ぷらを食べるなら、サイズは小盛りで十分。

空腹が満たされたら、一行は「屋島」へと向かう。屋島は高松の東北に位置する、残丘である。(南北に長い台形の土地から「屋根の島」と名付けられたそうだ。)

丘の上からの眺めは、またも絶景である。母を連れて来られて本当に良かったと思う。

母は少しだけ足が悪い。
左右のバランスを取りながら、歩く。

丘の上にも芸術作品があったりするから、気を抜けない。 

🎨
自然と人工物が混ざり合った、不思議な作品だ。

「自然」と「人工物」。
私は音楽やグラフィックの鑑賞が好きだが、この二つのバランスが取れた作品に興味があるんだということに最近気づいた。
この作品に関しては、その他の事象のバランスに関しての着想もあるみたいだと後から知る。

屋島の麓には、「四国村」というい野外博物館がある。ここでももちろん、気が抜けない。

🎨Suitcase in a Bottle
移民と絶滅の問題が題材らしい。

館内にある、安藤忠雄建設の美術館では、四国村創設者の加藤達雄が収集したという美術品を眺めた。 美術館は、作品を眺める行為・時間・場所が確約されているから、落ち着いて過ごせる。

異人館のティールームでコーヒーフロートを飲んで一息ついたら、高松を後に。

今回はフェリーの3日間通しパスを買わずに、毎回チケットを購入した。

いざ、小豆島へ。

小豆島は草壁港を降りるとすぐに、不思議な形のトイレ「石の島の石」を発見。(写真は残念ながら撮りそびれた。)

宿で一息ついたが、この日はうどんの腹持ちが異常に良かったのと、歩き疲れが相まって、近くのスーパーで済ませるという雑な〆。 


【2日目】小豆島は瀬戸内の東京

宿の近くに小豆島町立小豆島中学校があり、建物の立派さに少し驚く。体育館は30m×30mのフロアはあったと思う(これはマーチングバンド経験者からすると外せない視点である)。

2日目の午前中は、丸金醤油の醤油蔵。町中醤油の香りがする。錆びた鉄骨を含む町並みが好みだった。

夕方には豊島に向かわなければならなかった為、早足で観光地やアートを巡っていく。

写真の順に。
🎨ジョルジュ・ギャラリーは取り壊す前の建物を利用し、正面からみると綺麗な絵になる。
🎨Umaki campという作品は、突然町の空き地に現れた。馬木とはこの地域の街の名前である。不思議なテントのような作品。
🎨オリーブのリーゼントも、また静かな街並みに突如出現するリーゼント。案内人のおじさま(多分作品の主)が楽しそうだったのが印象的。
🎨つぎつぎきんつぎ。金継ぎ技術は、皿などの割れ目をつなぎ合わせるものだと思っていたが、この作品は皿同士を繋げ造形を作った作品だ。


少し移動し、ランチはオリーブ公園で、オリーブラーメンとやらをいただく。さすが、旅行客が多くレストランに入るのに30分ほどかかった。

オリーブが練りこまれ、つるっとした麺と、トマトにチーズ、塩にレモン。
それぞれがバッチリあっていて、商品開発した人を尊む。

後半は、オリーブバスで家浦港へ向かう。

私はこの手のゆるキャラが好きだ。地元の方には歓迎されつつも、いつもの何倍も混んでいるであろう車内では少し迷惑をかけながら、島の反対側へ進む。

潮の満ち引きで、道ができたりできなかったりするエンジェルロード。少し曇りが残念だったがそれ以上に観光客の多さ。
芸術祭はだいぶ、訪問のトリガーになっているんだろうと思う。

土庄港周辺の作品も、巡る巡る。
ゆらゆらと、バランスをとりながら。

迷路のような入り組んだ道が広がる町には、🎨迷路のまち~変幻自在の路地空間~という作品。見た目はただの民家だが、中へ入ると雪のような真っ白い素材で包まれた。横に移動しているのか二階へ上がっているのか境界も曖昧になっていた。ここでは私もバランスを取りかねる。

そんな町から少し歩くと土庄港に着く。玄関口である港には 🎨太陽の贈り物が。近づいてみると、オリーブの葉の形をした彫刻に子供達の言葉が刻まれていた。


唐櫃港に着くと今晩の宿の主が迎えてくれた。
一本早めのフェリーで到着できたため、宿に荷物を置いたら夕暮れの港を眺めた。港は人もいなく、とても静か。

夕飯は宿に併設になっているバーに行くことに。母は少し体調を崩してしまい残念だったが、バーから赤ちゃんの泣き声がしたのと、せっかく地元の方と触れ合える機会だったので、わたしはひとりでバーに顔を出す。

米麹が入った卵焼きと、豊島の野菜がふんだんに使われた餃子、レモネードをいただく。

赤ちゃんを抱きかかえたご夫婦は、うさぎ人間という映像と音楽のパフォーマンスユニットをされているらしい。以前はドイツ・ベルリンで活動していて、2016年に豊島に活動拠点を写し、倉庫を改装した劇場で活動されているんだそう。たまたま明日もパフォーマンスがあり、これは見に行かねばとスケジュールに組み込む。

【3日目】豊島は、雨もまた良し

朝は曇り空の中、🎨心臓音のアーカイブを聴きに行く。

海辺の建物がなんとも言えず切ない。少し雑音が混じる心臓音を大きな部屋で聴く。ここでは自分の心臓音もアーカイブすることができる。

🎨「勝者はいない─マルチ・バスケットボール」小豆島の形をしたパネルにゴールが5つついている。ルールはなく、思い思いにルールを作るしかない。私は5つ全てに入るまでフリースローを決めまくることにした。

豊島美術館のすぐ隣には棚田があり、予約時間まで棚田を歩く。

🎨豊島美術館では、40分くらいはぼーっと、生き物と化した水を眺ることになった。気になる方は足を運んでほしい。

美術館のカフェでは、昨日バーでお会いした方がちょうどレジに立っていたので挨拶し、オリーブライスを注文した。

そのあと20分ほど島の中央部の町に向かうと作品がいくつかあり、うさぎ人間の劇場もその町の中にあった。

背中にお子さんを抱えた状態でのパフォーマンス。全てが手作りで幻想的な世界へ連れて行ってもらえた。

🎨島キッチンは、本当はランチを取ろうと思ってたけど予約なしだと入れず断念。また豊島を尋ねるならここは来たい。

島キッチンを中心とし、この町にもいくつか作品がある。🎨ストーム・ハウスでは家の中から野外の嵐を体感することができた。

そこから出ると、島は雨になった。昨日までとは打って変わって肌寒い。歩いて船乗り場まで戻るが、なんと旅客船には人数制限があり2時間港で待つことになる。これもまた今回得た学びの一つである。

宇野港に着いたがひどい雨だった。冷えた身体を温泉で温めたら、3日目は終了。

【4日目】宇野港にて

昨日の嵐のような雨は過ぎたが、雨が降っており直島は時期を改める。

宇野港は唯一の本島の芸術祭エリアである。
港の玄関口には🎨終点の先へという鉄を熱して自転車を作った作品で、なんとレンタル可能である。

すぐそばに、🎨宇野のチヌ/宇野コチヌこの作品は近くで見るとヤカンだったり、人形だったり家庭ごみから作られていてかなり迫力があった。このあと倉敷へ向かうことにするが、瀬戸内芸術祭としてはこの作品で最後とした。


【締】旅を終えて

四国の訪問は初めてだった。四国に住む友人は皆「四国には見るものがないから」などと言うが、まず素晴らしい自然がある時点で私にとっては十分に"ある"ということがわかった。
瀬戸内の芸術祭は今回が4回目の開催となるが、島で国内国外問わずたくさんの人で賑わっていた。観光(訪問)のきっかけとして成功事例なのではと思う。(横浜でもトリエンナーレが開催されているが、噂によると赤字を出したこともあるそうだ。元から訪問が多い故、トリエンナーレの効用を測定しづらいんじゃないかな、など考える。)

後から数えてみると、芸術作品は合計約20箇所ほど回っていた。1日約2万歩(だいたい10km)も歩いていたようで次の日は久々の筋肉痛となる。

ちなみに、これでも全体の10分の1ほどの作品しか見れていない。芸術祭を巡るのは結構ストイックなものである。

足の疲れを忘れたら、また夏・秋も訪れたい。


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