見出し画像

富良野ラベンダーを学ぶ【品種編】

ラベンダーの本場、北海道は富良野!行ってきました!
この回では本場富良野でみられる品種についてスポットを絞って紹介していきますよ〜!

富良野以外の花畑では3号濃紫というコンパクトな品種がほぼを占めるモノカルチャー的な景観が広がっていると思うのですが、中富良野町はラベンダー観光に力を入れていることもあり、実に様々なラベンダー品種を観察することができます!
富良野はまさにラベンダーの博物館ですね!

①美郷雪華

スクリーンショット 2021-07-25 16.57.10

秋田県は美郷町が誇る白花ラベンダー「美郷雪華」。

このラベンダーが北海道で見られるのは、中富良野町の町営北星山ラベンダー園!
友好都市を結んでいるだけあって、かなりの量が植えられています。

スクリーンショット 2021-07-25 17.03.19

美郷雪華(L.angustifolia 'Misatosekka')は純白花というワケではなく、ほんのりとピンク味がかっています。完全に紫色の色素が抜けるわけではないんですね。
この品種の親となった株が早咲き系「さきがけ」というのは有名で、3号濃紫と似た丸くまとまった紫色の花穂をつける品種です。
さきがけ(L.angustifolia 'Sakigake')はその名の通り開花期の到来が早い品種で、同じ早咲き系の3号濃紫と同時期に始まるようです。
その白花品種が美郷雪華なので、基本的な性質は色以外になんら変わりないようで、花期も元となったさきがけと同じタイミングのようです。

見に行った7月22日ではもう花期が終わりつつあり、中咲はなもいわや遅咲き4号おかむらさきに移りつつある時期でした!

スクリーンショット 2021-07-25 17.12.51

純白なラベンダーの絨毯から香るラベンダー香は何か特別なものを感じられますね!
ラベンダーは紫色だけじゃない!という新たな魅力をまざまざと教え込まれている気がします。

スクリーンショット 2021-07-25 17.19.05

美郷雪華の若枝。いわゆるラベンダーとして一般的な蕾の状態。
この状態だとグリーンみがかった白って感じですね。
大きく育った株から伸びる大きな花穂は先端が尖っており、そこが3号濃紫とは違う部分なのかなーと思います。
よくネット画像でみるさきがけは左のような先が尖るような形状をしている気がします。

スクリーンショット 2021-07-25 17.25.01

4号おかむらさきと美郷雪華の花色のちがい。

こう異種同士を間近で見比べるの、エフゲニーマエダは好き。
きっと博物学とか標本学が好きなんだろうね!
世界的には4号おかむらさきは"青色花"と分類されることが多いけど、赤色味のベクトルが強くないから美郷雪華との涼しげなコントラストが美しいと思う。園芸的には並べて植えるとサイコーだろうね!


②ナナ・ナリサワ

このかたずーーーっと探し求めていたナナ・ナリサワ(L.angustifolia 'Nana Narisawa')をついに町営ラベンダー園の一角で発見!
ホントに一角にしか植えられていないぐらいのレアさ!

それっぽいものは江別市湯川公園とかで見つけていたのだけど、品種カードとか全くないから確証が得られずにいた。だって若いうちの姿が4号おかむらさきとソックリなんだもの!

スクリーンショット 2021-07-25 17.45.07

(早咲きの遺伝を持つため、もうすでに咲き終わりとなっていた⤴︎⤴︎)

ナナ・ナリサワも美郷雪華と同じ中富良野町営の北星山ラベンダー園の花壇に植えられていた。というかここにしかないと思う。
なんたってナリサワはごく近年(1990年)に北海道の旭川エリア成沢農園で作り出された品種で、富良野のオイル生産史にはまったく登場しないことからファーム富田には植えられていないレアさ。

スクリーンショット 2021-07-25 18.03.34

それも3号濃紫という左の穂先が丸まる品種から作り出されているというのだから驚き。このギャップがエフゲニーマエダの心を掴んでいる。
花の色の濃さそのままに見栄えある長穂って、、、いやぁーエモいよね。

画像2枚上の咲き終えてシマシマになっている状況をみてもらえばわかるだろうけど、早咲き3号濃紫の遺伝をそのまま受け継いでいるので花期が同じく早い。
なのに富良野の景観を代表する4号おかむらさきの花穂サイズに匹敵するほどの花穂サイズとなる。


③はなもいわ

スクリーンショット 2021-07-25 18.08.03

2号はなもいわはオイル生産史で由緒ある品種。ファーム富田のトライディショナル畑で大々的に栽培されている。訪れた7月22日ではちょうど開花シーズンだった!
このはなもいわを目に焼き付けるためファーム富田へ遊びにきたのもある!

名前に藻岩がついていて、これは札幌南区の藻岩山からきている。
札幌の南沢にかつて曽田香料がラベンダー畑をもっていて、それが由来かと思う。
確か1号ようていと4号おかむらさきが1964年にオイル抽出の優良品種に認定され、続いて1967年に2号はなもいわが優良品種認定された。

スクリーンショット 2021-07-25 18.17.38

しかしファーム富田の開祖の父富田忠雄さんはおかむらさきがお気に入りだったらしく、ファームでの栽培数はおかむらさきの方が上。
2番手にこのはなもいわか、後述するラバンジン(L. x intermedia)がくる。

スクリーンショット 2021-07-25 18.22.42

スクリーンショット 2021-07-25 18.37.34

蕾のときは白っぽく薄い色をしているけど、いざ花を咲かせるやとても鮮やかな紫色になるので株列が並ぶおかむらさきとぱっと見ぜんぜん区別がつかない。
写真下・左手色の小高いエリアが4号おかむらさき株列。

はなもいわは若いうちは白く、開花すると一気に紫に染まるのでそのギャップが素敵だと思う。

スクリーンショット 2021-07-25 18.52.52

はなもいわの植栽エリアで聞こえる音はそよ風ともうひとつ、ミツバチの羽音ぐらい!
それくらいあちこちでプーンプーンとニホンミツバチ・セイヨウミツバチ両方がせっせこっせこ仕事していた。

スクリーンショット 2021-07-28 17.32.03

所用あって再び富良野近郊を訪れていたので、せっかくだと思い7/28再訪。
オイル蒸留施設前に広がる大きなラベンダー畑。7月末なのに2号はなもいわが今だに花色を誇っていた。visual的におかむらさきより優秀じゃない?


④ファーム富田ラバンジン

スクリーンショット 2021-07-25 18.57.37

まさかいるとは思わなかったラバンジン(L. x intermedia)!!
町営北星山ラベンダー園とファーム富田の双方でたくさん植えられているが、どこを歩き回ってもその品種がラバンジンのなんなのかは書かれていなかった。(なのでL.x intermedia表記)

スクリーンショット 2021-07-25 19.08.12

だから蒸留所スタッフさんに聞いてみると「グロッソかスコティッシュフィールド(コテージと勘違い??)だ」と言っていた。
両種ともにハイブリッド種で種子繁殖ができないはずなので、混ぜ合わせることはまずムリ。
で、我が園の各ラバンジンの特徴を見比べるとグロッソ(L. x intermedia 'Grosso')に圧倒的軍配!

花穂の蕾形状がモゴモゴッとした感じがグロッソっぽさある。

オイル生産史にはまったくいない品種だけど、世界基準のラベンダーオイルではこのラバンジン グロッソのオイルが圧倒的シェアを誇るので、富田さんが栽培指示/導入していたのかも。
スタッフさんが言うにも割と昔からいたらしいし。。。

しかしラベンダーに全く興味なかった頃何度かファーム富田を訪れたときはぜんぜんこのラバンジンラベンダーの存在に気づかなかった。
そもそも穂先の丸っこい濃紫長めのおかむらさきの2種しか存在しないと思っていた。
ドライラベンダーが2種しか販売されていなかったからね!

スクリーンショット 2021-07-25 19.18.08

ラバンジン、まともに育てるとやはり株のボリュームに圧倒される。
この株腰以上の高さがあって1m平方のブロックぐらいの大きさがある。
ここまで育つのに何年ぐらいかかっているのだろう。。。

スクリーンショット 2021-07-25 19.21.35

香りが澄んで甘く美しいコモンラベンダーの美郷雪華との大きさの違いがよくわかると思う。どデカイ。
ここまで大きさ違ったらそもそもオイルの採れる量もラバンジンの方が多いよねって見てわかる。
けどラバンジンオイルは掛け合わされているヒロハラベンダー(Lavandula latifolia)のせいで医薬品臭さがついてしまっている。
コモンラベンダー(L.angustifolia)にはほぼ含まれない、樟脳/カンファーという香気物質だ。


⑤ようてい

スクリーンショット 2021-07-28 18.01.47

実は北海道で最も早く栽培開始された品種がこの1号ようてい(L.angustifolia 'No1Yotei')。なので1号の試料ナンバーが与えられている。

曽田香料(株)が日本各地でラベンダーの適地を探っている頃、羊蹄山周辺地域・ニセコエリアで「わりと育つやん!」ということで植えていたこの品種とともに大々的に栽培開始となった。
寒風に煽られず雪の下で穏やかに寝かせることで安定的に毎年花を咲かせられるという寸法!

スクリーンショット 2021-07-28 18.11.29

スクリーンショット 2021-07-28 18.57.43

花穂の見分けはわりと簡単につくかもしれない。
他の北海道品種にも似つかない独特な形状をしている(と思う)。

3号濃紫に似て花穂もさほど高く伸びず、株サイズはコンパクト型に分類されるものかと思う。

スクリーンショット 2021-07-28 18.16.02

やや時期終わりなのだけれど花穂は3号濃紫とはまた違った形状で、麦穂のように細長く先端にまとまっている感じ。

おもしろいのが、花穂を真上から見ると正方形に、4隅それぞれエッジが立つように規則正しく並んでついている。ストエカスラベンダーみたい!

このラベンダーようていはオイル生産されていて、花人の舎2Fの体験館でこの品種から採った精油の香りが楽しめますよっ!
個人的に、倶知安(ニセコ)でもこのようていの花畑が見られればなぁ〜と願っていたりする。だって品種についているゆかりの地でゆかりの品種見たいよね。


⑥おかむらさき

スクリーンショット 2021-07-25 19.29.33

特筆することないくらい富良野ではポピュラーな北海道を代表する品種。
海外のラベンダー図鑑にもNo4.Okamurasakiの名で載るくらい世界進出を果たしている代表的な品種。

スクリーンショット 2021-07-25 19.33.14

このおかむらさきオイルが1990年に本場フランスのオイル品評会で表彰された実績があるくらい。

スクリーンショット 2021-07-25 19.34.45

大きく育った株から出る4号おかむらさき(L.angustifolia 'No4 Okamurasaki)の花穂。
前述したナリサワと長穂という特徴が同じなので、見分けられるようになるまで時間を要した。
おかむらさきは長穂と言われる割に先端にまとまって花節が等しく6段付く。
同じ形状の蕾が等しく並んでいるので、そこで確実な見分けがつくと思う。

スクリーンショット 2021-07-25 19.42.36

あとはひたすら数を見ていくとそのうち気づかないポイントまで認識できるようになっているものなので、見分ける力つけるには数こなすのがイチバン。判別AIのディープラーニングも同じ方式だしね!

スクリーンショット 2021-07-25 19.47.53

おかむらさきも株が大きく育つとラバンジンに匹敵するような大株となる。
そこでおかむらさきのもう一つの特徴が、写真のように花穂の茎がくねくねと曲がりくねりやすいということ。

このクネクネは花芽を伸ばしている最中の水分量によるとされているのだけど、今年は干ばつと認められるほどの少雨。
けど曲がりくねっているものがいるので、大きい花穂は曲がりやすいというのがおかむらさきの特徴なのかもしれない。

ウチにいるミスキャサリンはまっすぐ上に伸びるんですけどね。


⑦3号濃紫

スクリーンショット 2021-07-25 19.57.31

どの品種とくらべると株がコンパクトにまとまり、花の色も濃いので現在園芸品種として根強い人気がある品種。
エフゲニーマエダ個人的に幼き頃からラベンダーというとこの品種をイメージする。それくらい個人的に馴染み深い品種。

スクリーンショット 2021-07-25 20.04.15

町営北星山の方がファーム富田より花がまだ残っていた!
体感的にはさほどそうは思わないのだけれど、おかむらさきよりは花の色が濃いそうだ。より青っぽい…?

スクリーンショット 2021-07-25 20.07.53

穂先にボンボンのように花がまとまってつくのが特徴!
先端にまとまる系で似ているのがHidcoteという品種。こちらの実物は見たことないが3号濃紫よりコンパンクトに育つそうで、3号濃紫ほど花穂が高く伸びないらしい。茎の太さも細いままだそうで。

オイル生産史的には確か、オイル成分の含有量が少なかったかで優良品種認定されずー…という歴史だったそう。
けどまぁよく現代まで広く残っていたもんだ!と感心。

かれこれ導入としては1937年に南フランスから運ばれてきた種子のうちの品種なので、フランス品種を探しているとその親が見つかるかも!



いかがだったでしょうか!

以上が今回ラベンダーの本場富良野へラベンダー見学をした際の品種編となります!
ラベンダー図鑑として活用いただけるようなテイストで書いてみました!

このご時世なかなか富良野へ遊びに来れるものじゃないと思いますが、私の写真と解説で北海道のラベンダーシーズンを味わってもらえると嬉しいです!

本州のラベンダー園も歴史と生育環境が違うので、ラバンジン系統や英国より入ってきた園芸品種が中心となっているそうで機会みて見学行きたいな〜と思ってます。

ではでは!

__________________________________

■Twitter : https://twitter.com/DIYpolca
■Instagram : http://www.instagram.com/sika_ring/
■Creema : https://www.creema.jp/creator/3252280

若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。