2025年の年頭に当たり
社会変革推進財団理事長 大野修一
皆様、新年明けましておめでとうございます。
2025年が始まりました。今年は21世紀の四分の一が経過する節目の年であり、私たちにとって未来を改めて見つめ直す時期でもあります。
私のように、前世紀の中頃に生まれ、青春期を1970年代に迎えた人間にとって、当時は21世紀とはまだ先のことで、全く実感のない遠い未来に過ぎませんでした。しかし、早いスピードで社会、経済がダイナミックに変化する高度成長期の真っ只中に身を置いていたためか、漠然としたイメージではありましたが、21世紀が人類の努力によって到達することになる理想の時代であることには疑いの余地はないように思えました。ところが、現実に21世紀を迎えると、長期不況やITバブルの崩壊、同時多発テロなどの影響を受け、理想とはかけ離れた混乱した時代の幕開けとなりました。
それから四半世紀が経過し、現在の社会を振り返ると、状況は依然として複雑です。国内では低成長が常態化し、少子高齢化や地方の過疎化が深刻化しています。海外に目を向ければ、国際紛争や社会的格差、地球温暖化といった地球規模の課題がますます顕著になっています。さらに、異常気象や自然災害、コロナ禍など、次々と新たな問題が発生しており、これらに対応するための新しい視点やアプローチが求められています。
こうした状況の中で、歴史は単純な直線的進歩ではなく、行きつ戻りつを繰り返す複雑なプロセスであることを実感します。しかし、困難な状況にあっても立ち止まることは許されません。未来を担う若い世代には、この複雑な時代においても柔軟な発想を持ち、積極的に課題解決に挑戦してほしいと願っています。新しい時代には新しい常識が必要であり、現状を疑い、新しい価値観を創造する姿勢こそが、未来を切り拓く原動力になるでしょう。
幸いにも、現在では若者を中心に多くの社会課題に対する新しい取り組みが始まっています。国内外でSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資が広がり、社会的課題解決に向けたエコシステムが着実に形成されつつあります。これにより、起業家や若いリーダーたちが従来の枠組みを超えた革新的なビジネスやソリューションを展開し始めています。
私たち社会変革推進財団(SIIF)も、昨年設立5周年を迎えました。この間、「社会課題解決と多様な価値創造が自律的・持続的に起こる社会」を目指し、さまざまな活動を展開してきました。休眠預金活用事業を通じたソーシャルビジネス支援をはじめ、アクセラレータープログラム「ハルキゲニアラボ」の運営、日本財団ソーシャルチェンジメーカーズの卒業生支援などを通じて、社会課題解決に向けた多角的な支援を行っています。また、自らが主体となって複数のインパクト投資ファンドを立ち上げ、企業への資金提供やインパクト拡大のための支援を行っています。
さらに、当財団は国内外の先進事例を調査し、報告書の発表や勉強会の開催を通じて啓発活動にも注力しています。これまでに蓄積した知見を活用し、政府の政策形成にも積極的に貢献してきました。2024年には政府が発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024改訂版」や「骨太方針2024」において、インパクト投資の推進や社会起業家支援が明確に打ち出され、当財団の活動が追い風を受けることとなりました。
特筆すべきは、当財団の取り組みが国際的にも高く評価されていることです。このたび、Oxford大学ビジネススクールのインパクト投資プログラムの教材に、当財団の活動を中心に協働先なども含めた日本の活動が採用されることが決まりました。この教材は、世界中のトップ大学院でも活用される予定であり、今から楽しみです。
これらの実績を土台に、私たちは次の5年に向けて、さらに活動の質と規模を拡大していく所存です。本年も、引き続き皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。