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新型コロナ・ウィルスに取り組む「新しいフィランソロピー」3 ーコロナに立ち向かう、超富裕層の個人寄付(前編)ー

このシリーズでは、米国におけるフィランソロピーの担い手たちが、未曽有のパンデミックにどのように対応したのか、見ていきます。

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まとめ
□コロナ禍の寄付額は全世界で202億ドル、個人富裕層の寄付はそのうち約3割にのぼった。
□その中でも、アマゾンCEOの元妻のマッキンジー・スコットさんの寄付はその額と思慮深いアプローチゆえ、ひときわ注目を集めた。

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今回は、新型コロナ・ウィルスに取り組む超富裕層の個人寄付を取り上げます。

2020年の新型コロナウィルス関連寄付総額は全世界で202億ドルでした。中核的な役割を担ったのは企業の寄付・助成ですが、超富裕層の寄付も58億ドルと全体の27%にのぼりました。集計対象の寄付者はわずか48名ですから、1人あたり平均寄附額は約1.2億ドルになります。超富裕層が、新型コロナウィルス感染拡大という未曾有の危機に直面していかに巨額の寄付を行ったかが分かります。なお、このデータは、寄付者の名前が公開された5万ドル以上の寄付のみが対象で匿名寄付は含まれていません。このため、実際にはさらに巨額の寄付がなされたと思われます。


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こうした巨額の個人寄付の中でもひときわ注目を集めたのが、マッケンジー・スコットさんの活動でした。アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏の元妻であるマッケンジー・スコットさんは、現時点で総額44.2億ドルの新型コロナウィルス関連寄付を行ったとされています。この金額は、2020年の新型コロナウィルス関連寄付2位以下を大きく引き離しています。2位のグーグル社が13億ドル、5位のゲイツ財団が4.3億ドルですから、寄附額の大きさを実感頂けると思います。

金額だけではありません。彼女の寄付スタイルは、グローバル・フィランソロピー・セクターに大きな反響を呼びました。

マッケンジー・スコットさんは、新型コロナウィルス関連寄付を行うに当たり、まず専属のフィランソロピー・アドバイザー・チームを組織しました。そして、データを重視する徹底した案件リサーチをこのチームに依頼しました。選定基準は、食糧供給の不安定度、人種格差の深刻度、貧困率、そしてフィランソロピー資金へのアクセス困難度の4つです。寄付先候補は、この4基準を満たすコミュニティで支援活動を行う団体から選び出されました。一見してお分かり頂けるように、この選定基準は、新型コロナウィルス感染拡大によるダメージが最も大きい周縁化された貧困コミュニティをターゲットとしています。特にフィランソロピー資金へのアクセス困難度という選定基準は要注目です。超富裕層向けに専門的なファンドレイジング活動を展開する団体をあえて外し、コミュニティで地道に支援活動を続ける団体にターゲットを絞ろうという彼女の強い想いが感じ取れます。


後編に続く


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