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ミレニアル世代に高い認知度と購入意欲 ~国内初「社会的インパクト投資」認知度調査~

ナレッジ・デベロップメント・オフィサー
織田 聡

■ シリーズ: ESGの一歩先へ 社会的インパクト投資の現場から ■

一般に「社会的インパクト投資」はどれくらい知られているでしょうか。SIIFでは国内初となる社会的インパクト投資の実態調査を行いました。その結果、一般の消費者で「社会的インパクト」について「聞いたことがあり、意味を多少なりとも知っている」人は6.8%。この数字をみる限り、社会的インパクト投資の認知度はまだまだ低く、さらなる普及・啓もうが必要なことは間違いありません。

 GSG国内諮問委員会の目標は2025年までに認知度を16%にすること。16%とは1962年にスタンフォード大学の教授エベレット・M・ロジャースによって提唱されたイノベーター理論によるところの「シェアが爆発的に拡大する普及率」。新しい価値観に敏感なアーリーアダプター層までに認知されることを目指した数値です。もちろん、ロジャースが提示した16%という閾値は「普及率」であって「認知度」ではないので、ストレートな適用には注意が必要です。他方、現在の「SDGs」の認知度は27%(朝日新聞社調査、2019年8月調べ)という調査結果があります。調査を開始して、今年初めて20%を超えたそう。現在、ビジネスに関わる人でSDGという言葉を聞いたことがない人はまずいないだろうことを考えると、認知度が20%を超えると、実際にはかなり浸透したという手ごたえを得られるのではないでしょうか。

 今回の実態調査のクロス集計をみていくと、株式やFXなどの投資を経験している層での認知度は11.7%と高い傾向です。同じ投資経験層でも40代の認知度が10.9%なのに対し、20代24.4%、30代25.2%と2割超、いわゆるミレニアル世代は、社会的インパクト投資のような新たな社会貢献に対する関心が高いことが、日本国内でも窺えます。

 さらに、投資経験がある層の中では世帯年収が高い人ほど認知度が上がり、世態年収が1,000万円以上の層は4人に1人が社会的インパクト投資を認知していました。

 認知度としてはまだまだですが、注目したいのは購入に対する意欲。社会的インパクト投資について説明した上で投資商品としてみた場合、購入関心が「多いにある」「ややある」は20.7%。投資経験のある層での購入関心度は3割を超えていました。購入関心度が高い層のうち 6割は、「他の投資商品とリターンが同程度になりそうなら、社会的インパクト投資商品を購入する」と回答。一定の層には社会的インパクト投資商品であることが購入を誘導するインセンティブとなりえるのではないでしょうか。

今回の実態調査を振り返ると、欧米にくらべてまだ社会的インパクト投資の認知度は低いものの、一定数の購入関心度があり、投資商品として今後の可能性を秘めていることがわかります。「投資行動によって社会をよりよい方向に向けることができる」という認識をさらに啓もうしていくことで、社会的インパクト投資の可能性は広がっていくと確信しました。 

 今年10月1日より、これまで個別に活動してきた一般財団法人社会変革推進機構(理事長:坂東眞理子)と、一般財団法人 社会的投資推進財団(代表理事:青柳光昌)は合併し、一般財団法人社会変革推進財団(Japan Social Innovetion and Investment Foundation;SIIF)として新たに事業を展開していきます。新しいSIIFは、インパクト投資の先行モデルを創出し、イノベーターとなる社会起業家を支援するとともに、そのノウハウを体系化してフィードバックしていきたいと考えています。

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