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2020/04/最近読んだ本について

本を読んだり映画を観ると、再現という域に到底及ばない、一要素を引っ張ってきた設定の夢をみることがよくある。
最近、少しだけ哲学関連の本を読んだ夜に、自己啓発セミナーの設営のバイトに行ったら、バイト代から参加費を引いた分を支給されて「公演を見て行くように」と言われ腑に落ちない気持ちのままセミナーを観覧するという夢をみた。
人どころか自分に言っても仕方のない事なのだけれど、中途半端に引用するのをやめて欲しいし、夢でストレスを受けると疲れが取り切れない気がするのでどうにかしたい。
でも本を読むのは好きだし、最近はおうち時間とやらで読む暇は滅茶苦茶あるのでつい読んでしまう。


・貫井徳郎/微笑む人(実業之日本社文庫)
松坂桃李さん主演のドラマを見逃してしまって、じゃあせめて原作を読もうと購入した。
読後感が非常にザワザワしてしまって不穏な気持ちになった。
あらすじにも書いてある部分に触れると、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻と娘を殺害したエリート銀行員の容疑者を取材していくと、彼の周囲で過去にも不審な死を遂げた人物がいたという事が解り、主人公である小説家が容疑者の過去を追っていくという内容である。
内容であるんだけども、じゃあ解き明かしてエリート銀行員ヤベー奴じゃん!みたいなオチになりそうでならないという非常にモゾモゾする展開。
ただ、現実においても明らかになっている事柄から各々が受け取る事実というのは「事実の様でいて事実ではない」訳で、明らかになっている事柄に対しての理由や分析なんてものは受け手の主観で描かれた理想(最高の、最悪の、普通ならこうではないかなど)でしか無いということを思い知らされる作品となっている。
ニュースなんかで「あんなに大人しい子があんな犯罪を犯すなんて」というインタビューを見かけた事があると思うんだけど、インタビューに応じた人の「あんなに大人しい子が信じられない」というものも、それを観る視聴者の「大きな闇を抱えていたのかな」みたいな感想も全て各々の主観で描かれた理想である、という。
そんなことを何重にも思い知らされる構造になっていて、ドッと疲れる。
人間って確証が持てなかったり、掴みかけた気がしていた事が霧散してしまう状態が続くと非常に疲れてしまうのだなと思った。そりゃ「こうだろう」と結論付けたくなる訳だ。
ジャンルとして確立されたミステリーには入れられない作品だと思うけれど、ある種これこそがミステリーだなとも思わされる作品だった。
展開やオチがドラマは全然違うらしいので、じゃあ結局そっちも観ないとアカンなぁという。

・柚木裕子/凶犬の眼(角川文庫)
松坂桃李さん助演で滅茶苦茶面白くてハマってしまった「孤狼の血」シリーズの第二弾が文庫になっていたので即購入。
価格帯というよりは持ち歩きにハードカバーが辛いとの怠惰さから待ちわびていたんだけど、こんなに待つのが大変ならばもう次に控える最終章はハードカバーを買おうと心に決めながら本作を買った。
前作でマル暴デビューを果たし、ヤクザにも警察にも恐れられる大上刑事の薫陶を受けた日岡の後継者としての活躍が描かれた今作も滅茶苦茶面白くて一気に読んでしまった。
そして改めて次の文庫化なんて絶対に待てない、ハードカバーを買う!と決めた。
暴力団に深く入り込み、上手く舵を取りながらジワジワと締め上げる大上刑事の様な立ち回りは日岡刑事にはまだ出来ないけれど、とにかく真っ直ぐ執念を貫く日岡刑事が格好良く、惚れ惚れしてしまう。
こんなに小説の登場人物に惚れそうになったことがかつて自分にあったろうか。ないかも知れない。
刑事モノや任侠モノは堅苦しいとか古臭いとか思ってしまいがちだったけれど、その両ジャンルのハードルを一気に下げてくれた(前作より今作の方がその役割を果たしてくれた)ので、これを機にハードボイルドな作風もあれこれ読んでみたいと思った。

・恩田陸/蜜蜂と遠雷(幻冬舎文庫)
刊行時、直木賞、メディア化と、錚々たる、あらゆるタイミングで見事に読みそびれてきたのに何となく書店で目があったので購入して一気に読んだ。
幻冬舎文庫の本ってどの作家も読みやすい気がするんだけど何故なんだろう。難易度を下げてあるんだろうか。
クラシックを扱った題材は数あれど、ここまで音楽用語を使わず、想像力を引き立てる言葉だけで楽曲と演奏を表現し尽くした上下巻の大作(しかも一気に読めてしまうライトさもある)だったので2日で読み切った。
クラシックには明るくなく、どちらかというと真っ暗であるのだけれど、この文章でイメージを膨らませて実際に楽曲を聴く、というのを少しずつやっている所である。
普段もやっている風景や人、出来事に音楽を脳内で当てるという行為と、文章から音楽を思い描くという行為はとても近いと思うので、同じような癖というか楽しみ方をしている人には是非オススメの小説だと思う。
コンテストに辿り着くコンテスタント、そのコンテスタントを評価する審査員、舞台となるホールで彼らを支え盛り上げるスタッフ、見守る家族など、サラっと描かれている人たちにもきちんとキャラクターがあって、どのキャラにも親しみを覚える作品だった。僕が好きなのはコンテスタントを優しく見守るステージマネージャーの田久保さん。こんな大人になりてえ、と思いながら読んだ。

ゴールデンウィークに読むつもりの本にまで手をつけてしまっているので補充しないといけない。

写真はnoteから「写真をつけた方が読まれやすいよ」みたいなアドバイスをされたものの、特にこれと言って添える写真もないしなと思って「じゃあ背表紙でいいや」となった逆効果必至の一枚。

おやすみ。

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