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vs大分トリニータ

【試合前の雑感〜気持ちが沈んでいても試合は待ってくれない】

様々な雑音が駆け巡る中、悪い流れが続く中、ミッドウィークに迎えるのは智将・片野坂率いる大分トリニータ。J3時代から人は変われどカタノサッカーを続けてきた大分は前節で首位川崎を破る力のある強いチームだ。
そんな大分と前回戦ったのはコロナの影響を受ける前の開幕戦。この時はローランド招聘で盛り上がってたっけ。優勝を目指すチームの出だしに相応しい、メンデスのゴールで先制したものの、終始アイソレーションする香川を使われて辛くも勝ち切れたという試合内容だった。というのも、大分の3-4-2-1はCB、WB、シャドーの3枚がサイドにいるのに対してセレッソの4-4-2はSB、SHの2枚で対応しなければいけない。幅を取る相手にスライドをし続けなければならないので、この展開は必然だった。

さて、直近5試合のセレッソは常に失点しているだけに、いつも通り4-4の堅牢な守備陣形で常にスライドして戦って90分間持つのか非常に心配である。
そんな試合のスタメンはこちら。

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FWは清武なのか坂元なのか、と試合前から惑わせてきたメンバーだった。

【(前半)セレッソの非保持/大分の保持〜立ち位置をズラしたい大分vs立ち位置を合わせたいセレッソ】

試合後の清武のコメントは以下の通り。

Q:ビルドアップに特長のある大分に対し、守備時は前3枚で制限をかけながら、という形だったが?
A:前節の広島戦で、前半はあまりハマらず、後半の形のほうがハマったので、「今日はミラーゲームでいこう」という話になり、ポジションもそういう位置取りになりました。

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清武のコメントにある通り、セレッソはキックオフから3-4-2-1にマークを定めて迎撃する形を採っていた。昨年の松本戦以降、4-4-2で戦ってきたロティーナが3-4-2-1のミラーとして5-2-3を採るのは初めて(だったはず)。恐らく大分はロティーナの4-4-2対策で中3日を過ごしてきたはずなので、面食らったのだろう。前から圧力を受けて、大分はビルドアップする空間、時間を奪われるので、DFライン+GKではボールを持てても、サイドに逃げては戻す、縦に蹴ったら回収されるという展開が続いた。

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このように大分が試合の進め方でやや迷子になっている中、FKの流れから清武がゴールを奪い、セレッソが先制に成功した。

しかしここですぐに修正できるのが大分/片野坂。すぐにボランチや三竿を最終ラインに下げて前線に来る3枚のプレスに対して数的優位を作ろうとする。だが、セレッソは中3日で前線3枚でのアプローチに取り組んでおり、大分の修正方法まで対策済み。可動域が常人の域を超えている奥埜が捕捉可能なら奥埜が最終ラインまで迎撃し、それが難しければ片山を侵攻させる。

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ただし、前からかけるプレスの大前提として、大分のボランチ経由でボールを前進させないことがある。ボランチ経由で運ばれる(=FWラインを突破される)と、パスやドリブルで易々とボールを運ばれてしまうので守備陣が数十メートルの撤退を余儀なくされる。なので大分の最終ラインからボランチへのパスコースを消せない場合は前からのプレスは敢行せず、いつも通りFWが背中でボランチを消してサイドへ誘導し、守備陣はスライドで対応する形を採っていた。

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それでも自陣に押し込まれる時間がないわけではない。その時は開幕戦でサイドに何度も揺さぶられたことを反映したのか、松田が右CB、片山がRSBに入る5バック化を採用していた。これによって逆サイドへの展開を封殺しつつ、局面の数的優位を作れているので、大分はCB経由でやり直さざるを得なかった。

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【(前半)セレッソの保持/大分の非保持〜SB、SH、FWを担う片山】

ビルドアップでは知念が1トップなので、ヨニッチ&木本で数的優位を維持してビルドアップを進めるセレッソ。大分としても非保持でセレッソの4-4-2対策を採っていたので、ここは(おそらく)練習通りに進んでいたのだろう。

木本とヨニッチの距離間であれば、やや撤退すれば知念1人でコースの限定は可能。そして大分は最前線を数的不利にして戦う分、ボランチに2シャドー、SBにWBをぶつけて2列目を同数にすることで、仮にCBからパスを受け手もセレッソの選手の体は後ろ向きになり、前を向かれるリスクはかなり小さい。こうして3ラインを圧縮しつつ撤退しながら守ろうとしていた。

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そして大分はハーフェイラインくらいまで誘き寄せて3ラインを圧縮できたら、町田を上げて疑似2トップ化し、野村がSHになって松田を見る4-4-2に変形する。

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これに対してセレッソは大分の2段階守備を見て、MFラインで前を向くために藤田が知念の背後を取ろうとする。そのために片山がWB化すべく大外に落ち、松田が藤田の位置に入ることで野村をピン留めする。そして奥埜が前に出ることで町田が付いて下がり、大分の一列に揃ったMFラインに窪みができるので、パスを捌ける藤田が前を向けるようになる。

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とは言えこの形で前を向いても大分の1トップの周辺にセレッソは3枚使ってしまっており、前線は数的不利のまま。そのため前を向いても中々押し込めない展開が続いていた。

そこでもう一つ準備した形が坂元と片山の縦の補完関係。坂元が受けに下がることがトリガーとなり、大分のマーカーが付いてこなければ坂元がボールを受ける。

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逆にマーカーが付いてきたら、その背後を片山(orメンデス)が突く。

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これまでシーズンを通してRSHに入っていた坂元とは違って空中戦を制することができる片山の強みを活かす形だった。

【後半〜田中が高く居続けることで片山が下がる展開に】

形らしい形をあまり作れなかった大分は後半頭から田中を投入する。セレッソは撤退したら5バックを敷くことがわかったため、田中の役割はなるべく最前線に居続けて片山を押し込むこと。これによって大分がボールを持ってセレッソが5バック化する時間が増加し、メンデスは大分ボランチをケアし続けることになる。そのためセレッソは重心が後ろになってしまい押し込まれる展開が増える。これが後半の悪循環の始まりであり、大分の保持&攻撃→中に入れる→弾く→回収される、という展開が続く。その結果、なんと後半給水タイムでのボール保持率は大分65%、セレッソ35%と一方的に持たれる展開となった。

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しかし大分は外から攻める展開で中央のターゲットが知念のみ。そこでハーフスペースのCBとボランチの間に立つことでセレッソのマーカーに2択を迫っていた町田を下げ、高澤を投入して中央のターゲットを厚くする。

また、セレッソの右サイドで田中が高い位置を取るために片山は下がらざるを得ない。そこで田中を押し下げるため、セレッソがボールを持つと片山は素早く前線へ走り込んでいた。ここで上下動の勝負が行われることになったので、縦への推進力に定評のある田中を下がらせたくない大分は松本に替えて高畑を投入し、田中を右サイドへ回して打開を図る。

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その後も大分は手を替え品を替えたが、サイドから放り込まれるボールに滅法強いセレッソの真骨頂を発揮し、"セレッソらしい"勝利を手にした

【試合後の感想~実りある旅に終わりを告げるヒーローインタビュー】

ここ数日はロティーナ監督の解任報道が相次いでいたが、清武のヒーローインタビューでそれがただの憶測に過ぎないと思いたい一縷の望みに終止符が打たれた。

2017年から尹さんが守備の土台を作ってタイトルを獲り、ロティーナ/イヴァン体制がその土台をさらに昇華させてくれたこの4年間は、セレッソにとって本当に実りある期間だった。特にこの数年間はJリーグが戦術的に大きく進歩した期間だが、この2年間で区切ってみるとその中心には間違いなくロティーナセレッソのポジショナルフットボールがあった。多くのプロフェッショナルな方々がこぞってロティーナセレッソを称賛し、他チームのサポーター(一部の穿った見方をする人を除く)がこぞって羨む監督と一緒に歩んだ道のりはかけがえのない財産だ。その財産を活かすも殺すもこれからのセレッソ次第である。

さて、リーグ戦も残り5試合。川崎の優勝は決まったが、2位のガンバとは実質的に勝点3差で得失点差ではセレッソが上回っている。3位の名古屋とも実質的に勝点差は0である。ロティーナとの歩みが間違っていないことを証明するためにも、過去最高順位の2位でフィニッシュして天皇杯で川崎にリベンジを果たさなければいけない

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