私が地域に出よう的なセミナーが苦手な訳
楽しいから君も手術してみなよ、楽しいから君もちょっとだけ診察してみなよ、とは絶対に言わないだろう。
僕はやたら医療従事者に地域に出ようと呼びかける人が苦手だ。少しでも経験のある人なら、少なくともいくつかの注意事項や、心構えについて、おせっかいしたくなるものだろう。
それは、自分自身がさまざまなコンフリクトに巻き込まれた経験があるからと以前に述べた。
おままごとのような地域活動なら、毒にも薬にもならないので放っておけるが、医療従事者が本当に必要な状況にある場に行くとしたら、コンフリクトを含むネガティブな体験をする可能性がとても高い。
地域社会のパワーバランスに触れてしまうこともあるし、逆に支援したい当事者の立場を危うくすることもある。
そういうものは、以降数十年取り返せないものさえある。
もしも、そういう地域に出ろ的な啓発や研修会があったのなら、必ず、以下の質問を講師にしてほしい。
「あなたは、どのくらい地域活動での経験があるのか?」
「あなたに教わると、具体的に何が身につくのか?」
「コンフリクトに巻き込まれた時、あなたはどうやって対処しているか?誰に相談すればいいのか?」
「地域の状況や情報はどうやって入手しているのか?」
「あなたはこの地域、あるいは集団の歴史をどのくらい知っているか?」
などが役に立つと思う。
ぜひ講師に聞いてみてほしい。
答えられないなら、今一度、冷静に考え直した方がいい。
写真)Atsushi Oshio
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