これから地域医療や連携に関わる若い実践者に最初に知って頂きたいこと 〜地域医療連携の経験から〜


社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院
地域糖尿病センター センター長 
北葛北部医師会 在宅医療連携拠点菜のはな 室長
中野智紀

写真 地域の自治会の役員たちとの意見交換 データも大切だが主観や地域から得られた情報が最も大切だ。

はじめに
 私の専門とする糖尿病は医療法における5疾病5事業の1つに位置付けられおり、都道府県や2次医療圏単位で策定される地域保健医療計画の中で、医療の提供体制の確保に関する計画を策定していくことが求められている。本邦では増え続ける糖尿病患者に加え、これらの政策を背景に糖尿病における地域医療連携は長年の課題とされており、国内の糖尿病関連学会では地域連携をテーマにしたセッションが設けられ、全国各地から成功事例が集まってきている。しかし、これら成功事例は、地域連携の多様な可能性を示してくれる一方で、どうしたらこのような素晴らしい仕組み作りができるのだろうか、という質問に回答できるほど、経験は十分に蓄積されてはいないように思える。また、その取り組みの独創性や目新しさは年を追うごとに衰えているかのようにも感じられる。
 今回著者は、この悩ましい地域連携の実践と苦悩の現実に向き合い、我々の地域連携の経験から大切だと思われる視点を示したい。ただし紙面には限りがあり、本稿は紹介と逆紹介の仕組みづくりのような比較的容易な地域連携ではなく、地域連携パスや疾病管理、医療ICTの構築による地域完結型医療の構築を通じて、地域レベルの難解な課題の解決を目指す実践者を主な対象とした。
 また、彼らが日常的に遭遇する可能性の高い様々な紛争(以下、コンフリクト)に焦点を当て、特に初心者や社会経験の少ない若者が陥りがちなピットホールや、それを回避する為の基礎的な心構えついても述べたい。従って、本稿は経験豊かな地域連携の実践者にとっては新鮮味のない、当たり前の内容に映るかもしれない。本稿を通じて、地域連携に従事して間もない初心者や、社会経験の浅い若者たちの苦悩が少しでも軽減されることを願ってやまない。

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