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「幸せを運ぶタクシー」 今井泉

「お嬢さん、もしよかったら、この四つ葉のクローバー持っていかない?

持っていると、幸運になれるんだって。いいことがあるかもしれないよ」



「幸せを運ぶタクシー」 今井泉


今井泉さんは、秋田県でタクシードライバーをしています。


タクシードライバーになったのは、56歳の時でした。


長年勤めてきた会社の工場縮小に伴い、リストラされてしまったのです。


年齢制限にひっかからない職業を考え、タクシードライバーに挑戦しました。


タクシーの運転手になって、10ヶ月くらいたった頃のことです。


その日、たまたまお客さんの待ち時間に、運転手仲間が「四つ葉のクローバー」をさがし始めたそうです。


いっしょになってさがしていたら、何気なく目をやったところに1本の四つ葉のクローバーが見つかりました。


そして


そのまま、手帳に挟みました。


午後7時を過ぎた頃、ひとりの若い女性が今井さんのタクシーに乗ってきました。


行き先を告げる女性の声には、元気がありません。


バックミラーを見てみると、 表情も沈んでいます。 今にも泣き出しそうです。


今井さんは「どうしたの?」と声をかけます。


普段は、絶対にお客様のプライバシーには立ち入らないようにしていたのですが、その日は思わず声をかけてしまったそうです。


「彼氏とうまくいってなくて」


そのとき


手帳に挟んだ、四つ葉のクローバーのことを思い出しました。


信号待ちになったときに


「お嬢さん、もしよかったら、この四つ葉のクローバー持っていかない?
持っていると、幸運になれるんだって。いいことがあるかもしれないよ」


そう言って、四つ葉のクローバーを渡しました。


すると


女性の表情が一転して、笑顔に変わりました。


今井さんはその姿を見て、とても気持ちが軽くなったそうです。


それからというもの、今井さんは四つ葉のクローバーの「押し葉」 をお客様に渡していこうと思ったんですね。


今井さんはその押し葉を渡していくうちに、お客様から感謝の手紙を頂くことがあったり、相談されたりするようになったそうです。


そして


いつのまにか、お客様に渡した四つ葉のクローバーが1万本を超えました。


私のタクシーに乗ったお客さんには、短い時間でも心地よい気持ちになって降りていただきたいとずっと思っていました。


「もしよかったらもらってください」


タクシーの運転手さんにこのような「幸せの気持ち」をもらったら、どうですか?


そんなタクシーに乗ってみたくないでしょうか?


いつしか


今井さんは新聞の取材やテレビ番組に取り上げられたり、この本を出版したり、「人生は予測できないことの連続です。」とあとがきに記しています。


クローバーを渡すようになって、気がついたことがあります。

私は財産や学歴があるわけでもなく、地方で暮らす普通の人間です。私のやっていることは、やろうと思えば誰にでもできる小さなことです。

しかし、人のために何かをするということが、自分とその人をどれだけ幸せにするのかは、計り知れません。

(中略)

もしこの本を読んで、どんなことでもいいから、何か周りの人のために行動を起こすきっかけになったとしたら、これほどうれしいことはありません。

私がそうだったように、あなたにも知らず知らずのうちに、何倍にもなって幸せや気づきが返ってくるでしょう。


誰かを 「思いやる」 ことで、その人は幸せを感じるでしょうし、自らはさらに、幸せや気づきを得ることができるのですね。


やはり


人生というのは、やなせたかしさんが語っている「人生はよろこばせごっこ」なんだと感得しました。



【出典】

「幸せを運ぶタクシー」 今井泉  ダイヤモンド社


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