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「まなの本棚」 芦田愛菜


「私一人の人生だけでは経験できないことや、自分では考えもつかないような発想が本の中には詰まっています。

だから本を読むたびに、「こんなふうに考える人もいるんだな」と、発見があるんです!」



「まなの本棚」 芦田愛菜


「愛菜ちゃん」と呼んでいいのか、「愛菜さん」と呼んでいいのか。


芦田愛菜さんの小さい頃からずっとドラマや映画を見てきたので、「愛菜ちゃん」と呼んでいましたが、この本を読んでみると、「いったい愛菜さんは何歳でしょうか?」と訊ねてみたいほどの読書量に驚いてしまいました。


この本の執筆当時、愛菜さんは中学生。


冒頭でいきなり「騎士団長殺し」が出てきて、村上春樹さんの小説のおもしろさについて語っているのです。「すごい本に出会ってしまった」と。


僕が中学生だったら「騎士団長殺し」を楽しめただろうか?と考えているうちにも、次から次へと本の話が、マルマルモリモリと出てくるのです。


愛菜さんは、よくこんな質問をされるそうです。

「愛菜ちゃんは、毎日学校の勉強やお仕事もして忙しいはずなのに、いったいいつ、そんなにたくさんの本を読んでいるの?」よくそんな質問をいただきます。

答えは、「いつでも時間がある時に、気がつけばいつも本を読んでるんです!」

もし、一日のうち一度も本を開くことができなかった日があったら、「わー、どうしよう!今日は一度も本を読んでない!」と落ち着かなくなってしまいます。

「活字中毒なんじゃないの?」なんて周りの人にあきれられてしまうほど。とにかく文字を読むことが好きなんです!


シンパシーをたくさん感じた、芦田愛菜さんの「本」の話。


「紙の本の手触りが好き」とか

「3~4冊を同時並行で読む」とか

「ページに並んだ活字から自分の想像で物語の世界を作り上げていく楽しさ」とか

「片山義太郎(三毛猫ホームズシリーズの主人公)が好き」とか


あと、「ホントに?」と思ったのですが、江戸川乱歩の「怪人二十面相」や少年探偵団シリーズまで読んでいるのですね。


すごいなぁ。僕が小学生の頃に読んでいた本ですから、公衆電話でダイヤル回すっていう描写がわかったのかな?なんて考えてしまいました。


それ以外にも、本の感想がたくさんあり「こんな本まで読んでいるの?」と愛菜さんの読書量とバランスに驚き、本当に「いつ読んでいるのだろう?」という「???」が何度もさっきの質問のように出てくるんですよね。


それだけ「本」が好きなんだというのが伝わってくる本で、読んでいて楽しくて楽しくて仕方ありませんでした。

私一人の人生だけでは経験できないことや、自分では考えもつかないような発想が本の中には詰まっています。

だから本を読むたびに、「こんなふうに考える人もいるんだな」と、発見があるんです!


知らない本の魅力もたくさん教えていただけましたし、本について愛菜ちゃんと会話を楽しんでいる感覚にもなりました。


この本は、芦田愛菜さんの書評、読書感想と本にまつわるエッセイと対談で構成されています。


対談は、京都iPS細胞研究所所長の山中伸弥さんと作家の辻村深月さんです。


とくに


辻村深月さんの本が大好きな愛菜さんは、辻村さんを神様だと感じるほど大好きな作家さんなんだそうです。二人の会話からその感動が伝わってきました。


その話の中での辻村さんの言葉が、本に助けられた僕にも重なる言葉でありました。

私は10代の頃、周りの大人が信用できないと思ってしまった時期がありました。

気持ちを理解してもらえない、と感じたり。そんな時に私を救ってくれたのが、本でした。

『かがみの孤城』は鏡の向こうに世界がある話ですけど、自分にとっての鏡がきっと本だったんだなと今になると思います。

私の部屋の鏡は光らなかったけど、そのかわりに本棚の本がそれぞれ光って、いろんな場所に私を連れ出してくれた。

「世界は、あなたが今いる場所だけじゃないよ」って本が教えてくれたり、大人は信用できないけど、この本の作者は信用できる!と思えたり。自分を救ってくれる大人の存在が、本の向こう側にたくさんいたんですね。


この本の執筆のあとも、たくさんの本を愛菜さんは読んでいることでしょう。「まなの本棚」の本はこれからも増え続けるだろうし、その本棚にある本の感想をまた届けてほしいなって思いました。

          *

今、読書感想文の宿題で悩んでいるみなさんも多いと思います。読書の感想について愛菜さんはこう語っています。

本を通じて、いろんな人の意見を聞いていると、「どの意見や感想も間違っているなんてないんだろうな。どんなことにも、いろんな人の意見があっていいんだな」って、感じることが増えました。

答えは一つじゃなくて、すぐには見つけられなかったり、人それぞれの考え方や見方があったりするってこともわかってきました。

きっと、どの本でも、作者が、「この本の感想として、正解はこれです」と決めて書いていることはないんじゃないでしょうか。むしろ、読んだ人が自由に感じて考えられるように書かれている本が多いように思います。

だから、みんなが同じ感想を持つ必要はないし、いろんな視点があっていいんだなってことを、本を通じて、学んでいる気がします。


作者がこう考えていたなんて書く必要はないし、読書感想文なんて、本を読んだ人が自由に感想を書けばいいと思います。


とにかく本を読むことを楽しむことが一番重要で、読書感想文が苦役にだけはならないでほしいのです。好きな本を楽しんでくださいね。



【出典】

「まなの本棚」 芦田愛菜 小学館


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