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想像と分析 - 政策へのアプローチについて

年末年始でだいぶ政策関連の学術書を読んだ。政策というと何か?というのが政策づくりプラットフォームをやりつつも、まあまあ曖昧だったが、少しはクリアになった。

王道は分析

基本は、政策課程論や政策分析論といわれる分野の本を読んでいった。政策を取り巻く全体像のプロセスについて理解を深めたかったから。たとえば、政策分析ではこのようなプロセスを経る。

1. 政策課題を構造化(モデル化)する
2. 将来を予測する
3. 政策課題をコントロールする政策案をデザインする
4. 政策の効果を評価し、政策を選択する
5. 成果を評価して、さらなる改善につなげる

『政策リサーチ入門』

問題の変数を構造化し、コントロールできるところを探し設計する。政策というと難しくて未知すぎる分野だなと思うが、ビジネス的な言葉でいうと因数分解やKPIツリー的なものと同じだし、デザインでいうとシステミックデザインなど普段デザインリサーチで実践しているものと変わらない。

思ったより自分や周囲の人の経験がいきる分野だなと思う。

分析的なアプローチの役割と限界

基本的には政策リサーチやプロセスの本を読んで、愚直にやっていけば顕在化している問題は改善されていくように感じた。最近、issuesで国会議員と話していても、特に軸となる中長期的な政策は基本はエビデンスベースで設計をしているように思う(もちろんそこまでエビデンスだけによらず、パッと有権者の声を聞いて動く人もいるが)。

ただ、エビデンスや分析も問いに基づくものである。問題意識から取るデータを決めていく。たとえば当事者として、原体験をもとに同じ苦しみを抱いている人の数をデータで割り出したりは可能だ。

だが、その問いを立てるところを深く掘っている論にはまだ当たれていない。設計的アプローチではそもそも解決したい課題がある場合、それをどう分析し、政策に落とし込んでいくのか?というところは見えてきたが、そもそも何を問題として扱うか?というところがわからない。

そこがなくてももちろん問いは立てられるが、パッと考えてといわれたら「どうしたら貧困問題がなくなるか」「どうしたら出生数が増えるか」などといった凡庸な問い(社会的に構築されたものの範囲でとどまってしまう問い)にとどまってしまう。

代議制民主主義では政治家自身が当事者性を持つことで、マジョリティには想像が働かない立場の政策も出てくるので、それが役割じゃんといえばそれまでだが、自分の興味としては、自分の立場によらずに「そもそも現状の価値基準はどうなのか?」といった、脱構築的にものごとをみて問いを立てることに関心がある。

公共とデザインで行なった『産まみむめも』もそういった問いからはじまっている。自分と異なる立場と出会い、対話することで異なる生き方を知り、そもそもの産むことについて捉え直し、選択しなおす。

現状の主に分析からはじまる政策形成では、そもそもどういう問いを立てるのかの部分はまだ浅い知識ながら、①国や世界の顕在化した社会問題から因数分解的に見出す ②当事者として見出しアジェンダ化する ③有権者(支持者)の声を聞いて見出す ④有識者会議などから見出す などがあるだろうか。

②と④は脱構築的なアジェンダを見出せる可能性があるが、属人化している感が否めない。

想像的な政策へのアプローチはどのようにありうるか

属人化せずに、誰もが政策に対する脱構築的な問いを立てられるプロセスについて。仮にこれを「想像的な政策へのアプローチ」とする。自分が今知っているものではイギリスのPolicy Labのアプローチがある。

Policy Lab’s experimental methods cards

Policy Labのアプローチでは、たとえばゲームや演劇など体験的なアプローチで政策を作る人の価値観や固定化された物語を揺らがせる。あるいは、未来想像を通し、既存の延長にない極端な世界のシナリオを見せることで、問いを立てるイマジネーションを膨らませる。

こういったアプローチを探究していきたい。ではどうするといいのか。

日本では、フューチャーデザインなどは想像的な政策へのアプローチとして、近い存在だと思う。未来世代になりきることで、いますべき行動や設計を見直していく。どちらかというとノリとしては「このままいくとどうなるか」的なものが多く、ランダムな飛ばしを効かせる感じではない印象だが、自治体でも事例が出てきていて、一定兆しが見えているように感じる。

たとえば、吹田市がフューチャーデザインの意見交換会を何年もわたりやっている。

矢巾町は基本計画へのフィードバックも視野に入れてやっている。

政策プロセスへのメインストリームにはなっていないが、このあたりの実践の現状と限界をヒアリングをしていくなどで、想像的な政策へのアプローチの理解を深めることができそうだ。

・・・

何も考えず書き始めたが、①構造に基づきロジカルに分析し解を見出すアプローチ ②想像の拡張によって問いを立てるところから始めるアプローチ と別れるということを書きたかった。

だが、書きながら思ったのは両者は対立するものではなく、 ②は問題提起で、①へ接続する流れではないか、というところ。

SDGsとかはそもそも、先見的な目線で作られているはずだし、自分が構築的と思っているものも遡るとどこかで脱構築的な視点が入ったはずである。問題の大元を辿るとどういう問いから始まったのか、どの段階で想像や価値観が変わる要素を入れられるかなどなどは気になるので、引き続きこの部分を掘るなり実践するなりしていきたい。

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