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ISMS規格本文/5.リーダーシップについて解説

はじめに

情報セキュリティの重要性がますます高まる現代、企業や組織は情報資産の保護に積極的に取り組む必要があります。ISO27001は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格であり、組織が情報セキュリティを確保するための枠組みを提供します。2022年に改訂されたISO27001:2022は、最新の脅威やリスクに対応するためにアップデートされています。本記事では、ISO27001:2022の主要な要素について詳しく解説します。

5.1 リーダーシップ及びコミットメント

ISO27001:2022において、リーダーシップの役割は極めて重要です。組織のトップマネジメントは、情報セキュリティの確保に対するコミットメントを明確に示し、全ての従業員に情報セキュリティの重要性を理解させる責任があります。具体的には、以下のような取り組みが求められます。

  1. 情報セキュリティ方針の策定と承認: トップマネジメントは、組織の情報セキュリティ方針を策定し、正式に承認します。これにより、情報セキュリティの方向性を示し、全従業員に対する指針を提供します。

  2. リソースの提供: 情報セキュリティの実現には適切なリソースが必要です。トップマネジメントは、必要な人材、技術、財政的リソースを提供し、情報セキュリティマネジメントシステムの維持と改善を支援します。

  3. リーダーシップの実践: トップマネジメントは、情報セキュリティに関するリーダーシップを実践し、自ら模範を示すことで、全従業員の意識向上を図ります。

これにより、組織全体が一体となって情報セキュリティの確保に取り組むことが可能となります。

5.2 方針

ISO27001:2022では、組織の情報セキュリティ方針の策定が求められています。情報セキュリティ方針は、組織の情報セキュリティに関する基本的な考え方や行動指針を示すものであり、以下の要素を含む必要があります。

  1. 目的と範囲の明確化: 情報セキュリティ方針は、組織の情報資産をどのように保護するか、その目的と範囲を明確にする必要があります。これにより、組織全体が一貫した方向性を持って情報セキュリティに取り組むことができます。

  2. リスク管理の基本方針: 情報セキュリティ方針には、リスク管理の基本的な考え方や手法が示されている必要があります。リスク評価を通じて、組織が直面する情報セキュリティリスクを特定し、それに対する適切な対策を講じることが重要です。

  3. 法令遵守の確保: 組織は、情報セキュリティに関する法令や規制を遵守する義務があります。情報セキュリティ方針には、法令遵守のための基本的な指針が含まれている必要があります。

  4. 継続的改善の確保: 情報セキュリティは一度確立すれば終わりというわけではありません。組織は、情報セキュリティマネジメントシステムを継続的に改善していくための仕組みを確立し、方針にもその旨を明記する必要があります。

これらの要素を含む情報セキュリティ方針を策定することで、組織は一貫した情報セキュリティの枠組みを構築し、維持することができます。

5.3 組織の役割、責任及び権限

ISO27001:2022では、組織の役割、責任及び権限の明確化が求められています。情報セキュリティマネジメントシステムを効果的に運用するためには、誰が何をするのかを明確に定めることが重要です。具体的には、以下のような取り組みが必要です。

  1. 役割の明確化: 組織内の各部門や個人の役割を明確に定めます。例えば、情報セキュリティ責任者、リスク管理担当者、監査担当者など、それぞれの役割に応じた責任と権限を定めます。

  2. 責任の明確化: 各役割に対して、具体的な責任を明確にします。情報セキュリティの維持・改善には、多くの部門や個人が関与するため、責任の所在を明確にすることで、円滑な運用が可能となります。

  3. 権限の明確化: 各役割に応じた権限を明確にします。情報セキュリティに関する決定や実行には、適切な権限が必要です。例えば、リスク対策の実施やセキュリティインシデントへの対応など、必要な権限を持つ者が適切に対応できるようにします。

  4. コミュニケーションの確保: 役割、責任、権限が明確にされた後は、これらを組織全体に周知し、適切なコミュニケーションを確保します。これにより、情報セキュリティの取り組みが組織全体で共有され、一貫した対応が可能となります。

これらの取り組みにより、組織は情報セキュリティマネジメントシステムを効果的に運用し、情報セキュリティの確保に努めることができます。

情報セキュリティ方針の例


情報セキュリティ方針

1. 目的

本情報セキュリティ方針は、当社の情報資産を保護し、情報セキュリティリスクを管理するための基本的な指針を定めることを目的としています。当社は、顧客、従業員、パートナー及びその他の関係者の信頼を確保し、法令及び規制を遵守し、情報セキュリティの確保に努めます。

2. 範囲

本方針は、当社の全ての情報資産、情報処理活動及び情報システムを対象とし、全従業員、契約社員、パートナー及びその他の関係者に適用されます。

3. 情報セキュリティの目標

  1. 機密性の確保: 情報が許可された者のみアクセスできるようにします。

  2. 完全性の維持: 情報が正確かつ完全であることを保証します。

  3. 可用性の確保: 情報及び情報システムが必要な時に利用可能であることを保証します。

4. リスク管理

当社は、情報セキュリティリスクを特定し、評価し、適切なリスク対策を講じるためのリスク管理プロセスを確立します。リスク評価は定期的に実施され、リスク対策は継続的に見直されます。

5. 法令遵守

当社は、情報セキュリティに関連する全ての法令及び規制を遵守します。法令遵守のためのプロセスを整備し、全従業員に対して適切な教育と訓練を提供します。

6. 教育と訓練

当社は、全従業員及び関係者に対して情報セキュリティに関する教育と訓練を実施し、情報セキュリティ意識の向上を図ります。教育と訓練は定期的に実施され、新しい脅威やリスクに対応するための最新の情報を提供します。

7. インシデント対応

当社は、情報セキュリティインシデントに迅速かつ効果的に対応するためのインシデント対応プロセスを確立します。インシデントは速やかに報告され、適切な対策が講じられます。インシデント対応の結果は分析され、再発防止策が策定されます。

8. 継続的改善

当社は、情報セキュリティマネジメントシステムを継続的に改善します。定期的な内部監査及びマネジメントレビューを実施し、システムの有効性を評価し、必要な改善を行います。

9. 責任と権限

全従業員及び関係者は、本情報セキュリティ方針を遵守する責任があります。情報セキュリティの管理及び運用に関する責任と権限は明確に定められ、全ての関係者に周知されます。

10. 方針の見直し

本情報セキュリティ方針は、定期的に見直され、必要に応じて改定されます。見直しは、リスク評価の結果、新しい法令や規制の要求、新たな脅威の出現などを考慮して行われます。


まとめ

ISO27001:2022は、組織が情報セキュリティを確保するための包括的な枠組みを提供します。トップマネジメントのリーダーシップとコミットメント、情報セキュリティ方針の策定、役割・責任・権限の明確化は、情報セキュリティマネジメントシステムの効果的な運用には欠かせません。これらの要素を適切に実施することで、組織は情報セキュリティリスクに対する防御力を高め、信頼性のある情報セキュリティ環境を構築することができます。情報セキュリティの確保は、組織の持続的な成長と信頼性の向上に繋がる重要な要素であり、ISO27001:2022の導入はその一助となるでしょう。

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