なぜ町田ゼルビアは叩かれるのか?ここ2年の出来事を振り返る③

最初は1〜2記事のつもりで書き始めたのに、書き始めたら合計1万字超えになってしまった。
ということで主に2023年の出来事を①、2024年の出来事を②で紹介したが、③ではこれらの出来事を踏まえ、町田叩きはなぜ起きているのかのまとめを行いたい。


なぜ町田ゼルビアは叩かれるのか?

1.「新参者の快進撃に嫉妬してる」から

強すぎる存在が嫌いというのはよくあることである。
アンチ巨人は典型例だし、相撲での朝青龍や白鵬への批判でも強すぎて面白くないという要素も大きかった。

まして町田はプロ未経験の高校サッカーの監督がJ2で優勝し、初のJ1でも優勝争いと、とにかく目立つ結果を残してきた。
新参者が目立つから気に入らない、強いから気に入らない、嫉妬されるという要素はあるのだろう。出る杭は打たれるという諺の通りである。

この指摘は町田に触れたコラムでもよく指摘されることである。

※下記のシリーズは多岐にわたる町田の議論がされている読み応えのある記事で、有料だが一読する価値の高い内容である。

この指摘がされると、他のチームの時はこんな事なかった、強いから嫉妬してると思うな!という批判が沸き起こるのも恒例となっている。
ただ仮に町田の順位が10位くらいであれば対戦チーム同士の諍いなどのレベルに留まり、ここまで激烈に叩かれることは無かったはずなので、この理由は間違いでは無いと推察している。

なお上記(有料記事)で日本人は目立つ者の足を引っ張るという批判があったが、出る杭を打つ姿勢は日本に限った話ではない。

レッドブル社の資金力を背景にのし上がってきたドイツブンデスリーガのRBライプツィヒは、昇格1年目に相手サポーターからの大バッシングに遭っている。
どこの世界でも目立つ新参者は嫉妬ややっかみの対象となりがちなのだ。(ライプツィヒは特に町田と被る印象のチームだ)

ただし、強いから嫌いというのは間違ってはいないが、それ単体で町田を嫌う人は多くないと思われる。以下との相乗効果で嫌いになっている人が多い印象だ。

2.「アンチフットボール」だから

サッカーは接触プレーも多いが、昨今は目立つラフプレーがSNSで拡散され広まりやすい時代で、プレーの当事者への誹謗中傷は様々なチームで問題となっている。

町田はこれまで触れたようにファウル総数がリーグトップでファウルも多く、キックオフ直後のタックルなどのプレーへの批判も多い。
他チーム同士でもラフプレーを巡ってのネットバトルはあるのだが、サッカースタイルからガツガツ行きがちな町田はファウル回数が増えるのと、ネガティブな印象もあるために拡散されやすい。
またファウルが多いとプレーがぶつ切りになりやすいので、それに伴うイライラ感もあるのだろう。
(ちなみに町田がよく短いと指摘されるアクチュアルプレーイングタイムは49分。J1ではブービーであるが極端に短いわけではない。なお最下位は京都でダントツの46分台)

加えて時間稼ぎと思われる行為や時間をかけるロングスロー、PKでの水掛け、タオルを利用したフェイントスローインのように、ルール違反じゃないからってやっていいのか!というモラル批判が起きるプレーも行ってきたのは事実である。

新参者で目立つ上に「試合中のプレーも不快」となると、嫌悪感はさらに高まってしまう。

3.「監督の言動が気に入らない」から

ここまでの記事でも触れてきたが、黒田監督の発言へのバッシングは非常に多く、失礼である、リスペクトが無いという批判は多い。
紹介したように黒田監督は遠慮せずストレートな物言いも多いので、マスコミがネタにしやすい部分もあるのだろう。特にJ1昇格と快進撃で注目度が上がったために拡散力は高くなる一方である。
(筑波大戦以降はサッカーファンに止まらない拡散力となってしまった感が強い)
個人的には筑波大との試合後の批判コメントと、「我々は正義」のコンボが強すぎたと感じる。

また個々の印象論にはなってしまうが、監督挨拶の時の態度が気に入らないという批判は昨年から散見される。下記はさすがに悪意のある写真と感じてしまうが。

また上記の「プレーが荒い」のは監督がそういう指導をしているからと当然ながらなるので、その面での批判も多い。
「荒いスタイルのサッカーを作ってる」のと「監督から他者へのリスペクトが感じられない」という悪印象を持たれているのもあり、町田バッシングの中でも黒田監督嫌いは最大派閥であるという印象だ。

4.「金満補強をする」から

この2年間で町田は多額の補強費を投じた大量補強を行っており、Jリーグ内でも派手な方である。
そしてここ最近の相馬や中山に至っては、推定年俸が3億円台とまで言われている。
ここで面白くないのは選手を引き抜かれた側のチームのサポーターである。

Jリーグでもカテゴリが上のチームや資金力のあるチームが有力な選手を引き抜くことは当たり前のように行われているが、選手の移籍が原因でその選手や移籍先のチームが嫌いになるというのはよくある話である。言うまでもなく応援していた選手が敵になるのだから。
バルセロナからレアル・マドリードに移籍したフィーゴが、試合で豚の頭を投げ込まれたのは有名なケースであるし、アンチ巨人の理由に「節操ないFA補強」への嫌悪感も多くあるように、メジャーな団体スポーツのファンコミュニティでは普遍的なことである。

引き抜いた選手の数だけ町田のことが嫌いになる、面白くないと思う人も比例して増えていくというシンプルな話である。
さらに町田はバスケスバイロン移籍のような順位の近いライバルからの獲得や、相馬勇紀移籍のようにいくらでも金を積むといったムーブをしてきたので尚更であろう。

また獲得した選手の短い期間での移籍もそこそこあり、23年に栃木から移籍したカルロスグティエレスは半年で長崎に移籍、下記でも1年半で移籍した選手が複数おり、獲るだけ獲ってすぐ放出するドライなチームという評も一定数ある。
(もちろんJ1昇格で試合で活躍出来るハードルが上がったことによる出場機会の問題は当然ある)

2024年途中の移籍一覧

補強で目立つことや愛する選手が移籍する事態に遭うサポーターが少なくないために、「選手を強奪していくムカつくチーム」という感情が生まれ、そこにプレーや監督への悪感情が重なることにより、町田バッシングがさらに進むという構造もあるのではないか。

5.「モラルがない」から

これは上記を包括する「理由」にもなるが、要はチームそのものがルールには反していないが何でもやってくる存在という印象を持たれてしまっているのだ。
昨年の秋田戦の試合日程決定の顛末など、フロントに批判が集まった事例も散見されるので、運営そのものへの批判も起きてしまう。

また親会社がサイバーエージェントという派手な印象のIT企業であるために、そういう印象を持たれがちな部分もあるのだろうと思われる。

なおここで一つ、エピソード紹介からは漏れたが、個人的に町田に対して批判的な感情を持った出来事を一つ紹介する。
※ネット上で大きな話題になっていない雰囲気だったため紹介しなかったのだが、①と②記事をツイートした際のコメントで、この問題に触れる人が一定以上おり、問題視している人は想像より多いことが分かったので書くことにした。

Jリーグにはホームグロウン制度があり、12〜21歳で3年以上在籍した選手を一定以上抱える義務がある。

リーグによるHG規定

J1では4人必要であり、4月のJリーグ発表によれば町田は4人在籍でクリアしていた。
ただ4月後半にHG選手であった奈良坂巧の讃岐への育成型レンタル移籍、樋口堅の沖縄SVへの育成型レンタル移籍が発表される。

出場機会のためのレンタル移籍と捉えられるが、この2人は昨年も同じチームにレンタル移籍していたのである。つまり一度町田に復帰して開幕後すぐに再移籍したのだ。
何故レンタル移籍延長ではなくそのような形になったのか。
その答えと思われるものは下記画像にある

HGのカウントは移籍可能期間の終了した3/27となっているのだ。つまり人数カウントのために一旦在籍させておいて、カウントが済んだタイミングで再び戻すという意図であった可能性が高いのである。

(改めて検索すると、ヤフコメでも批判的な投稿が普通にあった。)
戻ったが出場機会が厳しいために慣れ親しんだ所に再移籍することになったという理由は立つし、ルール違反をしているわけではない。
だがルール違反にならないギリギリのことをしているかつ露骨であるため、その点に引っかかる人が(自分を含め)いるのだ。
(なお来年はユースからの昇格選手やバーンズアントン、清水にレンタル移籍中の宇野禅斗がHG選手となるため、この問題は起きないと思われる。)

プレー面でもルールに反していないからってなんでもやるのかという批判がある上に、移籍市場でも派手であること、運営でもこのような出来事があることから、「モラルのない」チームという悪印象が広まっていく。

なおネット上では、町田はLUUPと被るというdisも散見される。
電動キックボードのLUUPはマナーの悪さなど様々な理由でインターネット上の嫌われ者の一つであるので、おそらく屈辱的なバッシングであろう。

まとめ

ここまで書いたように、町田を嫌う理由は一つではなくこのように複数の要因があると推察している。
例えば浦和ならサポーターが嫌い、ガンバとセレッソであれば同じ街にいて存在が気に食わないなど、人がアンチになる理由は色々あるが、町田の場合複数の要因があり、それがヒートアップする原因だろう。

強いて言えば監督への嫌悪感が最も大きそうだが、強くなかったり、補強が地味であればここまで盛り上がっていないと思われるので、全てが重なっての今回の出来事であると感じる。

同じ相手とはリーグでは年間2試合しか対戦しないJリーグでは、そこでトラブルが無ければ所詮はよその出来事なので嫌悪感もそこまで高まらないはずだが、この2年でJ2からJ1に上がったことで38チームと対戦していること、移籍で選手を抜かれたチームが複数あることから、関わるチームも多い。
接触が多い分だけ反感を持つ人も増えてしまうのだ。

そして筑波大戦でヤフコメ民に見つかってしまったのは誹謗中傷の多さに大きく影響していると思う。
ヤフコメといえば、政治家や不祥事を起こした芸能人に厳しかったり、ゆたぼん、小室圭氏など特定ワードで噴き上がったりする場であるが、町田ゼルビアも何かある度に噴き上がる対象になってしまったのだ。
(下記の画像のように、記事が出るたびにトップ記事にならなくても数百コメントが付いている状況だ)
そうなると、今回訴えに至ったような常軌を逸した誹謗中傷を行う人がいても不思議ではないだろう。

最後に

今回の記事は、ネットで批判のあった出来事を軸に書いたものだ。
書いてる自分自身が、これはただのイチャモンだろうと思う出来事も含めている。(書いてある内容でどの出来事にそう思ってるかはなんとなく察していただけるとは思うが)
そして読んだ方の中には、移籍は選手の自由じゃないの?とか、こんなことで批判するのは間違ってるのでは?など批判に違和感を持つ人は絶対にいると思う。

だがスポーツの応援は極めて感情的な世界である。よく考えれば自分の人生に関わりがあるわけでもない他者を熱心に応援しているわけで、理屈じゃない世界なのだ。
他者の応援といえば最近持て囃されているいわゆる推し活であるが、スポーツがエンタメの推し活と決定的に異なるのは、勝敗がはっきりと分かれること、さらに結果が全てのためにニッチなブルーオーシャンに逃げ込む余地が少ないことだ。
加えてサッカーは昇降格制度があってJ2やJ3に落ちると露出度や資金力の減少、地獄のような気分になる構造となっていること、移籍が活発であること、ルールが少ないために審判の裁量や運用によるところが大きく曖昧さのあるスポーツであること、点が入りにくいために1点の重みが大きいスポーツであることから、正の感情も負の感情も激しく揺れ動くようになる。
ということで勝敗やプレー、移籍を巡って荒れやすい構造があると改めて感じる。

少し余談が過ぎたが、些細なことでも人は怒りを抱くという事例を紹介したいこともあり、この①〜③の記事では色々な出来事を混ぜこぜにした。


①でも書いたが、私はヴェルディサポであり、昨年の移籍で町田に対して激しい怒りを覚えた身である。
また同時に、ホームタウンが隣の町田に先に昇格されると注目度で埋められない差をつけられるという危機感や嫉妬感を抱いていたのは事実である。その自分の気持ちも思い返しながら書いていたので、ある意味で自分のことを書いている部分もある。

日本ハム新庄監督への中傷コメント

刑事告訴後、誹謗中傷は良くないが町田は〜という構文はSNSで非常に目につく。
当たり前だが「理由」があってもそれが正当化されるわけが無い。
おそらく、この画像と同じような誹謗中傷DMや電話が一般人の想像よりも遥かに来ているのだろう。
町田に対して複雑な感情を持っている自分でも、さすがに今回の事態は異常であると最近は特に感じている。

だがメディアは金太郎飴のようにロングスローや水かけのようななんでもやる姿勢や、強さへの嫉妬などが批判の要因としか言わない。
それは分かりやすいからやあやふやなことは言えないから、個人攻撃に繋がりかねないことは言えないから、そもそもサッカー知らないからなど様々な理由からだろう。
ただ背景が不明瞭なままの議論は的外れにしかならないし、サッカーファンの気持ちは晴れないままだ。
このモヤモヤはどこから来ているのか、それはこの2年間相手サポとして(ある意味当事者として)町田を見てきて、色々な出来事をある程度覚えている自分がちゃんと振り返らないといけないのではないか、それがこの記事を書いた理由である。

ということで、なんとここでも5,800字を超えてしまい、合計17,000字を超えてしまったこのシリーズもこれで終わりです。

最後の〆はJリーグでのフェアプレー集の動画で。

そしてここのコメント欄でも町田disが見られるので、合わせて町田対ヴェルディでのフェアプレーのシーンを。

誹謗中傷なんて愚かなことはせず、正当な発言とフェアプレーでいきましょう。