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〈未知なもの〉や〈科学的な正しさ〉への免疫 下宿『ふせぎ』

家から自転車で少し行ったところにある、清瀬市下宿の三叉路に、注連縄のようなものが横に吊るされていた。『ふせぎ』だ。
藁でつくった大蛇を集落の入り口に掛け渡し、疫病や悪魔が村内に侵入しないよう祈願するもの。

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江戸中期ここらで流行病が発生し、この行事が生まれたそうで、以来、毎年5月1日に地区の人たちによって『ふせぎ』は続けられている。

これをみて、秋田にもある、村境に飾られる藁の道祖神『ショウキサマ』を思い出した。たしかにちょっと道教由来の雰囲気もある。とまれ、このような習俗の背景には、何かしらの困難を克服しようとする願いが込められている。

江戸中期といえば、あの解体新書が邦訳された頃。だけど、まだまだ感染症やウイルスについての知見は生まれていない。

そんな中、この行事は当時、極めて実用的なものとして捉えられていたことは想像に難くないし、村の知恵者やお坊さん、職業祈祷師(山伏など)が、困り果ててる人たちに、こうしたお呪いを伝え、個人や社会に安寧を図っていかもしれない。

もちろん、藁の大蛇にウイルスをふせぐ作用がないことは、現代人の僕らは知っている。むしろ、大蛇づくりは濃厚接触だとして自粛に追い込まれてしまうだろう。

その指摘は確かに全く正しいのだけど、でも、そのかわりに、僕らは〈未知なもの〉や〈科学的な正しさ〉に対しての免疫を暫く失ってしまったように思えて、そのことについてぼんやりと考えてる。


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