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いつもより土地や風景を近くに感じる 『多摩川』

先日休みを使って、青梅の多摩川まで自転車で走る。
緩やかな坂を登った先にある、大岳山を望む多摩川。想像以上に深い崖の下にあった。
崖の下まで降りてみると、川の底には灰色の砂や石があり、河岸には赤い土がみえる。手を入れるとまだとても冷たい。奥多摩は4月でも雪が降ったりするそうな。

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武蔵野台地は、青梅の背後にある山々を古多摩川が削り取り堆積した扇状地の上に、富士山などからの火山灰が降り注ぐことで平坦な土地がつくられた。そこに、さらに川の流れにより周辺の土地が削り取られ、こうした深い崖の線ができる。
この崖線を地元では「ハケ」と呼び、断面の層から湧水が出る豊かな土地として重宝された。縄文人の集落跡も沢山見つかっている。そういえば、うちの近くには『アカバッケ』という崖線があり、今もチロチロと水が染みだしている。


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平地と川と崖線の組み合わせから成るこの土地は、それぞれの環境に沿った人の営みがあった。


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川下に沿って再び自転車を走らせる。木の根っこが所々に投げ出され、ショベルカーが騒がしく砂をかき上げている。昨年発生した水害の修復が今も続いているのだ。
川が荒れ水量が変わる度にカタチを変えてきた多摩川。大昔には北の入間方面へ流れていたこともある。


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さらに下ると、途中から分岐する川がみえてくる。この川は『玉川上水』といい、江戸時代に深刻な飲料水不足を解決する為につくられた人工の水路だ。

この水路は全長43キロにもかかわらず落差が100メートルしかない。この微々たる落差(この比率を絵に描いてみるとほぼ水平にみえる)を可能にした当時の土木技術はただただすごい。
この水路のおかげで、近隣の新田開発も大いに発展した。

玉川上水の両岸には美しい雑木林が立ち並んでいる。これは人の手によるものではなく、川に集まった鳥のフンによって種が運ばれ、今の景観に育ったという。たしかに、新田の屋敷林や平地林とは趣きが少しちがう。

玉川上水の脇の小径を走る。
東京にこんな景色があったなんて、昔に住んでいた時は知らなかったな。
このご時世、人にはなかなか会えないしお店にもいけないけれど、その代わり(?)、いつもよりも土地や風景を近くに感じられてる気がする。


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ひたすらに綺麗で、でも、土地によって表情が大きく変わる。

青梅でみたのも、羽村でみたのも、田園調布でみたのも、みんな違ってみえた。当たり前だけど。
ここはどこからの多摩川だったかしら。府中かな。

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