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“いつも弱者の本ばかりおいている” 田尻久子『橙書店にて』

『橙書店にて』。熊本市内にある「橙書店」のオーナーである田尻久子さんが書いたエッセイ。
橙書店が出来るきっかけから、書店に集まる常連との交流、不思議な出来事など、33篇の物語が紡がれている。
出勤のお供にちまちまと大事に読んでいたけれど、ついに最後のページにたどり着いてしまった。

この本を読んでいると、ああ、田尻さんは、魂を曇らせない勇気と知性(そしてユーモア!)をもつ人なのだなと思う。
魂、という言葉をつかうのはナイーブだし抵抗がないわけじゃないのだけど、読んでいると本当にそう感じるし、どうしたらそうなれるのだろうと、考えてしまう。


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久しぶりに行った橙書店は、前と変わらず、あたりまえのように田尻さんがいらっしゃった。それほど大きくない店内には、川内倫子さんの言葉のとおり「いつも弱者の本ばかりおいて」いる。

それに対して、田尻さんはこう記述する。
”彼らの言葉はひそやかにみえて、その実、力強く、ある時は美しく、そして誇り高い。だから、彼らの声に惹きつけられる。この声を裏切りたくないので、並べて売る” 。

九州に来て6年、色んなところへ巡るうちに、次第に熊本と長崎に惹かれるようになった。それがどうしてか、少しづつわかってきたような気がしてる。

火の国・熊本には、明るい光の中に濃い陰影がある。そして、それによってはぐくまれた文化や精神がある。
石牟礼道子さんから橙書店へ、それは今も受け継がれているように思う。


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