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これまでの本にまつわる記事をまとめてみました。
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記事一覧

時間と数、数字と文字、記号と絵について 下村奈那『10㎝を1秒とする(178-42-14)』

下村奈那『10㎝を1秒とする(178-42-14)』。 群馬青年ビエンナーレでみた作品。 グリッド上に…

shuzo_kumagai
2年前
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折り重なり多声化する「語り」の問題 久松知子『Storyteller』

常陸国出雲大社のギャラリーで観た、久松知子さんの展覧会『Storyteller』。 稗田阿礼と言う…

shuzo_kumagai
2年前
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フィクションだけど、嘘じゃない 所沢のトトロ

『となりのトトロ』の冒頭。引越しの荷解きをしているシーンに狭山茶の箱が描かれている。 八…

shuzo_kumagai
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書き残すことから始まる『SCARTS2018-2019Annual Report』

札幌文化芸術交流センター2年分のアニュアルレポート。驚くべき情報量。アーカイブというもの…

shuzo_kumagai
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武蔵野樹林vol.6のご案内

『武蔵野樹林』vol.6が発売された。 3万年前から人が住み続け、今も1000万人が暮らす〈武蔵野…

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3年前
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その土地で生まれる思想と運動 『五日市憲法』

武蔵野台地の最南西の山あいにある「あきる野市」の一部は、かつては「五日市」と呼ばれていた…

shuzo_kumagai
3年前
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村の陰陽師さんのあれこれ 東村山教育委員会『指田日記』

江戸時代末期の天保5年から明治4年までの38年間にわたり、村の陰陽師「指田摂津正藤詮(さしだせっつのかみふじあきら)」によって記された日々の記録。 当時の風習や祭礼、幕末の状況を反映するものなどが淡々と書かれている。 陰陽師といえば、僕の世代では『孔雀王』とかなんとか、平安時代の超能力者みたいなイメージだけれど、そもそも「陰陽道」とは何か。この本には以下のような説明がある。 "古代中国の陰陽説・五行説などが易の思想と結びついて成立した信仰であり、日月星辰の運行や方位か

文章内容よりも文体に宿るもの 奥村忍『中国手仕事紀行』

奥村忍『中国手仕事紀行』。 「みんげいおくむら」店主が、まだ見ぬものづくりを求めて中国各…

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3年前
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武蔵野の地を歩いた円熟の民俗学者の姿 『東やまとの生活と文化』

東大和市『東やまとの生活と文化』。 東大和の民具を中心に調べられた資料集。 民具だけでなく…

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3年前
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もし、禁止されていなかったら、シヌイェは残っていたのか 『シヌイェから見るアイヌ…

シヌイェ研究会『シヌイェから見るアイヌの生活2』。 『マレウレウ』のマユンキキさんが行う、…

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3年前
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ありふれた、でも途方もなく数奇で哀しく、豊かな人生 トム・ギル『毎日あほうだんす…

トム・ギル著『毎日あほうだんす』は、社会人類学者が、横浜のドヤ街に生きる日雇いの哲学者と…

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創作は"思い出すこと"に似ている 『新対話篇』

『新対話篇』に納められていた、柳美里さん、飴屋法水さん、東浩紀さんとの対談。 いきること…

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3年前
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加害と被害のあわい 船尾修『フィリピン残留日本人』

船尾修『フィリピン残留日本人』。 戦前にフィリピンへ移民した日本人の子どもたちのポートレ…

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3年前
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空間が思想を形づくる 東久留米市『滝山団地』

家からそう遠くない場所にあるマンモス団地。 僕の家の周りは、畑や川や雑木林だけではない。それよりも圧倒的に多いのが電車と新興住宅、そしてこの大規模団地群だ。 政治学者の原武史さんの著作『滝山コミューン1974』の舞台になった場所でもある。 戦後の慢性的な住宅不足や高度成長期の人口流入の波を受け"極めて先進的な"集合住宅建築、いわゆる「団地」が郊外に大量に建てられるようになる。 まだ土の道が多く下水施設も整っていない農村に、水平垂直の建物、アスファルトの歩道、ステンレスのキッ