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第1詩集『通知センター』のこと



初めての詩集ができあがり、この文章を書いている9月12日に発売がはじまりました。タイトルは『通知センター』です。詩集の刊行に際して、少しだけ文章を書こうと思いました。


以下のAmazonからご購入いただけます。
(本屋さんにも少しずつ並びはじめているみたいです)


詩集『通知センター』には、2022年の夏から2023年の冬にかけて書かれた17の詩が収録されていて、この1年あまりの期間というのは、自分が東京を離れて新しい町へ単身で移り、生活を送るようになった季節と重なっています。収録された詩の他にも、実際はもっと多くの詩(のような言葉の制作)を習慣的に残していて、書けたもののうちのいくつかを印刷して封筒に入れ、現代詩手帖やユリイカといった雑誌の新人作品投稿欄へ送りはじめたのもこの時期でした。

生きることが移動することだとしたら、移動しているあいだにだけ自分の中を通り抜けていく世界があり、そこで見たり聞いたりするものの全てに理由がなく、よくわからない他人や草木や時間の流れが、たった一つの自分の身体に集約されて、無数のままならない感情が生まれるような気がしています。そのようなよくわからない感情や記憶を、虚構の風景として身体の外へ出したい、世の中のどこかへ突然、ひっそりと立ち上げたいという気持ちがあります。この気持ちがどこからやって来ているのかは、まだよくわかっていません。ただ、一人の人間が獲得する感情や、そこから泉や雨のように突然はじまる言葉には、理由もなく何かに瞬間的に接続してしまうような怖さや速さや美しさがあり、自分が何かを書こうとするとき、それにできるだけ率直な形を与えたいと思い続けているということは、詩を書きはじめて初めてわかったことでした。

そのような意味合いでは、この『通知センター』という詩集には、いま自分が呼び出せる、いちばん前のほうの言葉だけが集まっています。それが紙の本として、112ページの柔らかな重力になっています。本の装画には、アニメーション作家、まちだリなさんの《たゆたうように、たゆたっているようだ》という作品を使わせていただきました。ピンク色の印象的な装幀は戸塚泰雄さん、裏表紙の推薦文は峯澤典子さんです。

自分は、詩集にはできるだけ疲れた見た目をしていてほしい、と思うときがあります。なのでこの詩集を手に入れた人が、この詩集を鞄に入れてどこかへ無造作に出かけて行ってほしいと思いますし、それをそのままどこかの座席やテーブルや海辺に、忘れていってしまっても良いとさえ思います。自分には、詩集が必要なときとそうでないときがあります。この薄いソフトカバーの詩集が偶然誰かにみつかって、暮らしの隙間で開かれるようなことがあったら、それはとてもうれしいことです。


のもとしゅうへい『通知センター lux poetica⓺』
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身を守るほど簡単なことはないよと
下着のなかのインターネットが言う
(「通知センター」)

いま、目と耳をひらき、確かめ、移動することをふたたび覚え直すかのように。直感と論理のあいだを水や光のようにやわらかく行き来する言葉の新鮮な選択と接続。そして自由。ここでは見慣れたはずの日常は、まだ呼び名を持たない真新しい街へと変わる。そのかけがえのない瞬間に届く、詩という未知からの通知とともに。
――峯澤典子

日々の暮らしと、いくつかの街。記憶と身体はしずかに移動をつづけ、あらたな叙景に物語がやどる。待望の第1詩集。装画=まちだリな、装幀=戸塚泰雄

1650円(税込)
四六判並製・112頁
ISBN978-4-7837-4591-4
2024年8月刊




最後に、ここまで読んでくださった方へお知らせがあります。

9/27(金)の夜、三軒茶屋のtwililightさんで詩の朗読会を開くことになりました。本屋とギャラリー、カフェのある素敵なお店です。
僕は、発売されたばかりの第1詩集『通知センター』を持っていきます。ご一緒できましたらうれしいです。(イベントの概要/お申込方法は以下↓をご覧ください。


(イベント概要|twililightさんより)

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小説『いっせいになにかがはじまる予感だけがする』、エッセイ『海のまちに暮らす』など、執筆、編集、装幀を個人で手がけるセルフパブリッシングの活動を続けている、のもとしゅうへいさんの第1詩集『通知センター』が思潮社から刊行されました。

この刊行を記念して、のもとしゅうへいさんの朗読会を、9月27日に開催します。
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透明な移動、曖昧な身体だからこそ出会える新しい風景。のもとさんの小説『いっせいになにかがはじまる予感だけがする』とも共鳴する、予感という未知からの通知。

日々の暮らしと、いくつかの街。記憶と身体はしずかに移動をつづけ、あらたな叙景に物語がやどる第1詩集『通知センター』。

のもとさんご自身の朗読でぜひご体感ください。終演後にはサイン会も開催します。

日程:2024年9月27日(金)
開場:19時30分 開演:20時 終演:21時
会場:twililight(154-0004 東京都世田谷区太子堂 4-28-10 鈴木ビル3F・屋上/三軒茶屋駅から徒歩5分)
料金:1,500円+1ドリンクオーダー
定員:20名さま

申込:ignition.gallery@gmail.com
件名を「のもとしゅうへい『通知センター』朗読会」として、お名前(ふりがな)・お電話番号・ご予約人数を明記の上、メールをお送りください。
*このメールアドレスが受信できるよう、受信設定のご確認をお願い致します。2日経っても返信がこない場合は、迷惑フォルダなどに入っている可能性がありますので、ご確認ください。

《プロフィール》
のもとしゅうへい
1999年高知県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科在籍。2024年「ユリイカの新人」に選出される。執筆、編集、装幀を個人で手がけるセルフパブリッシングの活動を続け、文筆に携わりながらイラストレーション、漫画、グラフィックデザインなどの表現を行う。著書に小説『いっせいになにかがはじまる予感だけがする』(セルフパブリッシング)、エッセイ『海のまちに暮らす』(真鶴出版)ほか。2024年9月に、第1詩集『通知センター』(思潮社)を刊行。



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