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詩集『南緯三十四度二十一分』

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詩集『南緯三十四度二十一分』収録作品の一部を掲載しています(発行:2020年)
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2021年11月の記事一覧

おしがけピンキーグレー

おしがけピンキーグレー

 那須高原で星が見たいと言ったら君は車を出してくれた。二時間走って降りると海だった。

 夜の海に砂浜はなく、代わりに工場の煙突がピンク色の炎をあげていた。そこは東扇島の埠頭だった。君はナビなんて見なかったし、ここならいいものが見れるんだとか言って車を駐めたっけね。冬の大三角形はかろうじて見えたけど、他の星はてんでダメ。対岸の工業地帯が二十四時間輝いているもんだから、夜空なんて霞んでしまってね。で

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