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■遺されたものとあったものと。

父が施設に入所し、療養病院に入院してもう三年、ずっと手付かずだった実家。

いずれ、なんとかしなくてはいけないと母も私も思ってはいた、
心の中の、大きな大きな未完了。


やるにはあまりにも大きいし、向き合うことも多すぎて大きな岩のように居座っていたのです。


それが、ちょうど1ヶ月前、少し先の未来を描くワークショップを受け、理想の状態を思い描いた翌日、母が「もうあの家のもの、いらないわよね。」と、何年も動かなかったこの案件に、とうとう手をつける決意を私に連絡してきて(両親は離婚しているので)

業者さんに頼んで実家のものを一掃。今日はその後を見に実家を訪れました。

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いろんな、過去の遺産なのか負債なのかゴミなのかわからないものも、もう7年前に亡くなったものの、父が片付けに踏み切れずそのままだった祖母の部屋も、これを機にと整理をすると決めたはいいけれど

やっぱり、これはいるかしら、と迷っては連絡をよこす母に

「これまで、取りに帰ったものが一度もないものを
 もったいなからと取っておく必要は全くない」

もうこの際だからと、背中を押して、全て処分してもらいました。

がらんどうになった実家の全ての窓を開けて風と光を入れていたら、母がやってきて。


整理をしていなかったおばあちゃんのお部屋ね、今回の処分で全て見直して
手入れをしてなかった分、シミがついたり、虫が食ってしまって捨てたものも山ほどあるけれどね・・・


そう言いながら

祖母が呉服屋に勤めながら父を育てたときの話、母方の祖母も着物を仕立てていて、実は、譲り受けたものがたくさんあったこと、嫁入りの時に、自分が着ていたものを母方の祖母が仕立て直して母に持たせてくれたという肌襦袢のこと、母の成人式のために兄夫婦まで付き添ってくれて選んで仕立てたという振袖のこと、いろんなことを話してくれ、たくさん、捨ててしまったけれど、と、最後に厳選して残した帯や着物を、見せてくれました。

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全て、着物は両家の祖母が仕立てたものだと
そこには大島紬の着物や、家紋入りの喪服もあって

何十年としまわれていたのが嘘のように、着てくれる日を待っていたような気さえする、きちんと畳まれた着物や帯がいくつもありました。

美しい金糸の刺繍が入っている母の振袖は来年成人式を迎える
私の娘が着れるわね、とも。

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両親の離婚が成立するまでに本当にいろんなことがあったので、私にとって実家は、実家のようで、戻りたいと思う場所ではない、そんな場所でもあったし、私に帰れる場所はないんだよなぁ、なんて何度も思ったことがあるけれど、

そして、母の心の整理がつく日が来ることを、私はずっと内心待ち侘びていて、少しずつ、時間がお薬になって、癒えていくもの、受け入れられること
許せるようになったことが増え、今回、母がこうして整理に踏み切れたことは

母にとっての「私の結婚生活」の整理が大きな意味でやっとついた証でもあり、それは言い換えれば母が、これまでの過去を整理して受け入れたことで、私という存在のこともまたひとつ大きく許された気がしたのでした。

あぁ、この部屋でおばあちゃんと寝てたっけ、とか、ここの部屋で高校生時代を過ごしたなとか、忘れていた思い出が、懐かしく、今日のそよ風みたいに思い出され「時間がかかっちゃったけどやっと、整理がついたわね。「時間が経ってやっと、いろんなことを見つめられるようになった」「いやなことだけではなかったのよね」そう、母が言って  祖母の位牌に目をやったら。


あらやだ。今日って、おばあちゃんの命日じゃない。



不思議なことも、あるものですね。


呉服屋さんで、お客様に売る着物を仕立てていたという祖母。

「大正生まれの人にしては
 とてもモダンな着物を仕立てる人だった。
 おばあちゃん、センスがとてもよかったのよ。」と。^^

そして

「自分の部屋が欲しい、って思ったら
 家族になんの相談もなしに
 工務店さんと契約して
 突然家を増築するような人だった。
 やりたいと思ったらすぐやる
 協調性のなさと行動力はすごいものだったわ」

そんな、びっくりな思い出話も。

部屋が欲しいって、家、勝手に増築しちゃったんだ。
やるなぁ、おばあちゃん。笑
そういう血を、私も、引き継いでいるわけね。笑   

流石にこれは捨てれなかったと遺されていた一つが
祖母が父を産んだときの臍帯(へその緒)と出生届の写し。
私が知らなかったおじいちゃんの名前、そのまたお父さん、、、ひいおじいちゃんの名前、ひいおばあちゃんの名前、祖母の、両親の名前。いつどんな時を経て命と戸籍が紡がれていったのかを、この歳になって、知ることができました。

いろんなことが人生には起きるけれど、でも、私たちは紡がれてきた命の先で、今日を生きている。

改めてそれを感じて、ずっとよそよそしくて、実家にいると感じられることが少なかったこの場所で、そよ風にあたりながら「いいおうちね」と母と過ごした今日

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穏やかなる、安らぎです。

2人娘の通う学校からも徒歩圏内の実家。みんなの立ち寄りどころ、
もしかしたら私の別宅、にするべく、DIYリノベーションもありよりのあり、かもしれないな。(今は、ありよりの、なし。)   

昨日までは咲いてなかったというニッコウキスゲの鮮やかなオレンジの花が
私の目の先で咲いています。


おばちゃん、喜んでるのかな。

よき日。



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