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わきまえない著者_ 書籍『ダイエットの終焉。』について

 ここ数日、胸のムカムカがおさまらない。ふるさと納税返礼品のミックスナッツの食べ過ぎが原因? いや違う。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会森喜郎会長の女性蔑視発言のあれやこれやが犯人だ。
 端緒となった発言そのものは、まああの森さんだしね、という受け止め方だった。でもその後の、謝罪になっていない謝罪会見とか、孫から電話で「命を削ってまで仕事をしなくていい」と言われた話を持ちだした件とか(森氏の発言通りの意味合いで孫がそう言ったとしたら、孫も森氏と同じ思想の持ち主と、全国民にアナウンスしたも同然。孫もいい迷惑だ)、川渕チェアマン(ついこの呼び名になってしまう)への禅譲だとか、、、、、ちなみに現時点で、私が知っているのはネットニュースの見出し「川渕氏 会長職受託しない考え」だけで、今日、2月12日の午後に行われたらしい森氏の辞任会見もチェックしていない。だからちゃんと怒るのは、明日の東京新聞の紙面を読んでから(きっときっちり報道してくれると思うしね!)にしようと思いつつ、とにかく昭和世代のおじいさん(83歳と84歳だよ、、、、)が「余人をもって代えがたい」と言われる役職/事態ってどういうことなんだと呆れています。どんだけ、権限を独り占めしてきたんだ! どんだけ長い間、仕事や手柄を自分や自分の子分たちだけで回してきたんだ!
 で、今日は(ここで深呼吸)、2020年12月に発売された書籍『ダイエットの終焉。』について、お話しします。

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 著者のSunnyさんは、顔合わせしたときはまだ24歳。Twitterで10万人のフォロワーを持つ、いわゆるSNSインフルエンサーのひとりでした。つねにiPhoneとiPadを携え、トレーナーにスパッツというスタイル。メイクはおそらく、していない。
 SNSで発信する炎上すれすれの強い言葉に惹かれた私たち(彼女のフォロワーである斉藤さん+編プロのケーハクさん+ライターの相澤さん、そして私)は、彼女のダイエット体験をもとにした自己啓発本をつくりたい、と目論みました。単純な〝◯日間で◯キロやせた、私のダイエット成功談〟ではなく、たったひとつの成功にいたるまでの100の失敗、その過程で得た気づきと学び、体以外の変化などをセキララに語る、いわば〝負の記録〟を。
 どちらかといえば陰キャに属する若い女性がボディメイクに成功したことで、森氏や森氏に象徴される昭和的価値観、蔓延するルッキズムに対して、SNSを武器に異議申し立てをする。カラダが変わればメンタルも変わる、その可能性をページを捲るごとにじわじわ感じさせる本に仕上げたい、と思ったんです。

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 書籍づくりは、著者や編集者の人生観や価値観、思想などを見せ合いっこする、マジになればなるだけしんどいコミュニケーションを要します。とくにコロナ禍で大きくパラダイムシフトを起こした彼女は、途中で原稿のほぼ3分の2を書き直すなど、じつに「わきまえず」に自分の主張、スタイルを、貫こうとしました。そのわきまえなさに、彼女の倍以上生きている私などはくじけそうになり、また炎上を恐れてできるだけ内容を平均値に落とし込もうとしましたが、今ふり返ると、その努力は意味も甲斐もなかったように思うのです。
 だって、そもそも私たちは、SNSの世界で自由に、正直に、あけすけに、自己の体験とそこから得た気づきをつづる彼女の言葉に魅了されて企画をスタートしたのですから。彼女は自分のフォロワーに対する誠実さを、書籍化においても(読者に対しても)貫いたまで。その試行錯誤っぷりや七転八倒ぶりが、本書からは隠しようもなく立ちのぼってきているようにも思います。

 ダイエット。単純に、食事制限や食べる量の加減の調整だけではなく、生き方や自己肯定感にまで及んでくるこの行為を25歳にして終焉させたSunnyさんは、35歳になったとき、どんな哲学を語ってくれるのでしょうか。「わきまえない」女性たちの声、そして軽やかに彼女たちの思想をあらわす本がどんどん増えれば、昭和のおじいちゃんたちもおとなしくなってくれると思うのですが。(文/マルチーズ竹下)。


<取り上げた本>
『ダイエットの終焉。』Sunny 著 小学館
◆カバーデザイン=渡邊民人(TYPEFACE)
◆企画=斉藤彰子・千葉慶博(KWC)
◆編集=千葉慶博(KWC)
◆取材・構成=相澤優太


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