20201117_11.9「まっする3」にぶっ飛ばされた!

 あの、ブルーハーツの歌で「情熱の薔薇」ってあるでしょ。
「見てきた物や聞いた事 いままで覚えた全部 でたらめだったら面白い そんな気持ち分かるでしょう」の、あの詞ね。
 僕もかれこれ30年以上ブルーハーツのファンやってるけど、あの歌のあのフレーズが、実感もって自分の中に刺さったことって、実のところ今まで一度もなかったんですよ。ましてや「情熱の薔薇」リリースされてた当時なんて俺、受験生だしね。受験控えてる時期に「今まで覚えた全部」がデタラメだったらたまんねぇわけですよ(笑)。
(まぁヒロトのことだからきっと、ロックンロールに初めて出会った瞬間の、価値観が丸っきりひっくり返った興奮……あたりを表現してるんだろうけど、ここでははっきり蛇足なので、詞の解釈の話はここで終了です)

 だけどね。この間とうとう“それ”に出会っちまったようなんですよ。
 もう先週になるんだけど、11.9の「まっする3」(ひらがなまっする・すりー)が、それはもうもう、とんでもなくってね。

「まっする3」後半戦で、「2.9インテット」(にーてん・くいんてっと)なるものが唐突に始まりましてね。
 最初は「ふ〜んクインテットのパロディか。マッスル坂井考えたなぁ(笑)」と斜め見してたのに、趙雲子龍が平田一喜の両脚を全力でぶん捨ててパスガードしたのを目の当たりにした瞬間の「えっこれガチじゃん!」「何かヤバいの始まっちゃった!」という高揚感ったらなかったね。あの忘れ得ぬゾワゾワ感、もう一生抱き締めていたい(笑)。

 ということで以下は、当日のツイートのほぼ焼き直しの(苦笑)、2.9インテット各試合の雑感。

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 どこからどう見ても、いかにも“DDTの若手”らしさのカタマリのような存在、それが上野勇希。
 ところがところが、かわいいルックス、華麗な飛び技、綺麗にカットされた腹筋から「今時のハイフライヤーだね」という印象しか持っていなかった(ゴメンなさい!)上野きゅんの下から殺す気満々の引き込みが、この日の衝撃第二波。煽りVの紹介や村田アナの実況によれば、柔術の出稽古も重ねてるとか。頼もしいな! 未来は明るい!

 そしてこの日一番の名勝負、上野 vs. MAOの変態寝技合戦。足関節極め合うような体勢からのフィニッシュは初見では「ん、膝十字?」と一瞬勘違いしちゃったけど、ルールでは足関節は禁止。なんと胴締め(!)でフィニッシュだという。道場の極めっこみたいでたまらんじゃないか。
 えっMAOってベースが骨法なの⁉︎ ということはエセ骨法のセンタク挟み⁉︎
 しかしMAOのウィキ見たらまだ23歳っていうし、この年齢で骨法とかエセ骨法とか、中年の格ヲタじみたこと言うなんて、MAOどんだけ変態なの……これまた将来が楽しみすぎる男が現れた。

 技術がある者同士が闘えば、体格がデカい方・筋力が強い方が圧倒するという真理を否応なく見せつけたのが、竹下幸之介と樋口和貞。MAOの驚異的な粘りと技術で引き分けになったものの、レスリング力とフィジカルが図抜けていた竹下の化け物じみた強さは、初期パンクラスのウェイン・シャムロックを思い出すほどだった。

 フィニッシュ男子の大将・勝俣瞬馬は……僕がデカい色帯さんとスパーする時もあんな感じなんで、いたたまれなくなった(笑)。でもね、大日本でアタマ蛍光灯でブチ割られて、ミュージカルの稽古して、ガチのグラップリングにも出てなんていう振り幅、この人にしかできないよ! 彼もまた、この舞台を彩った勇者だった。

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 いや〜、それにしても。久しぶりにマッスル坂井に、してやられてしまった。
 試合後に坂井が、コロナ禍で規制だらけのプロレスをやり続ける苦しさを泣きながら吐露してたけど、2.9インテットは、“コロナ禍プロレス”だけが見せられる大きな可能性を提示できてたよね。坂井の真意がそこにあるのかどうかは、わからないけれど。
 飛沫感染のリスク考慮したら大声出せない、拍手しか許されないという状況なら、グラウンドの攻防だけのプロレスを見せたらどうかって、僕ちょっと前にツイートしたことがあったんですよ。「今時のレスラーにそんなことできる奴いない」って、案の定芳しくない反応だったんだけれども。
 それが、どうですか! “今時のレスラー”たちのグラウンドの攻防(しかも全ガチ!)だけで、観客たちは固唾を呑みながら拍手を送り、静かに熱狂してたのだから!
 しかもこれが、強さの測定の場からは縁遠いイメージのDDT系(しかもマッスル!)で実現しちゃったんだから、たまらない。
「DDTって、強くなる練習してないでしょ?」っていう、失礼にも程のある偏見が(ホントにホントにごめんなさい)、たった一夜でひっくり返っちゃったんだから。
 これこそが、「見てきた物や聞いた事 いままで覚えた全部」が丸ごとひっくり返った瞬間であり、常識がぶっ壊されるってこんなに気持ちいいものなんだという新鮮な驚きが、2.9インテットには確かにあった。

 そして、マッスルシリーズをどっぷり観ると、明日をより良く生きるためのパワーをがっつりもらえるのが、やっぱり心地いい。
 そのパワーの内容というのは、観てる時の自分の立ち位置や気のありようで、「明日もがんばろう」になったり「明日はちょっとだけ今日よりいい日にしよう」だったり「明日からも今までの俺でいいじゃん!」になったりするんだけど、いずれにしてもマッスルシリーズを観てると、毎度毎度とても気持ちよく自分を肯定してあげたくなる。

 そういえば……、フジテレビがPRIDEの放送から撤退して崩壊までまっしぐらになっていった頃、当時のマイミクさんの推薦で観てみたマッスルが、PRIDEという一番の楽しみを失って傷心まっただ中だった僕の心を、だいぶ救ってくれたんだっけか。業界的に物議醸しそうなキワキワをやりつつも、どこか地下芸人じみた演者(?)たちの滑稽さと必死さが、どうにもこうにも愛おしく感じちゃってね。「まっする3」観て、そんなマッスル見始めたばっかりの頃のことも、思い出したりした。
 僕の中ではまだまだ「人生プロレス、人生マッスル」は続行かな。本当に、いいもんを見ました。

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