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【Workshop2015】影をつかまえる-被爆樹木のこもれびをTシャツに写して着よう!-WSレポート

去る2015年8/1。

garelly Gで開催した個展『呼吸する影ー被爆樹木のフォトグラムー』関連企画として、ワークショップを行った。

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フォトグラムワークショップ『影をつかまえるー被爆樹木のこもれびをTシャツに写して着よう!』は、2014年に衣裳家の田村さんと設立したSeeSewで実施。

今回のワークショップの主な目的は、参加者の皆さんと実際に被爆樹木を見に行き、幹や葉に触れ、衣服にその影(時間)を写すことで、被爆樹木の存在を日常の中で感じるきっかけをつくりたいと考えた。

被爆樹木は1945年8/6、8:15に大きなダメージを追ったけれど、その瞬間から現在までを生きている。あの出来事は「過去」の時間ではなく、「現在進行形」の時間であることを被爆樹木は静かに伝えてくれている。その被爆樹木の時間を、Tシャツに写し、一緒の時間軸を生きているという感覚を生み出したいとワークショップをデザインした。

参加者は12名。
先ずはギャラリーに集まり、チーム分け。3人組の4つのチームに分かれた。

その後、フォトグラムの基本的な制作プロセスをジアゾ感光紙を用いて体験。カメラを用いない写真制作、ものの距離感と像の写り方などを中心に参加者の方々と共有。

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暑さ対策を万全にし、ギャラリーから被爆樹木まで移動。

今回撮影した被爆樹木は広島城にある、ユーカリとマルバヤナギ。

それぞれの木に挨拶した後、皆で木を観察。

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被爆樹木マルバヤナギ

幹が左右に割れない様に紐でぐるぐる巻きにされているけれど、新芽を見つけて「元気そう」との声。

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被爆樹木ユーカリ

一方、ユーカリの幹の伸び方をみて、「人間の肘の様だ!」、根元の傷に「大きな火傷、とても熱かったと思う」との声。

また、この2本の樹木は枝が背丈にちょうど良く伸びていて、撮影にぴったり。

まず、厚紙のスクリーンに撮影したい影を見つけアタリをつける。

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次に感光液を塗布したTシャツを着てこもれびを写したり、気に入ったこもれびの下にTシャツをセットし、じっと約5分待つ。
チームで協力し、枝を近づけたりモチーフを拾ったり、遮光したりと共同制作。

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じっと待つことでじわじわとTシャツが焼かれ、黄色から青色に色が変わる。感光が目視できることで映像の生まれる様子が身をもって感じれるのもこのワークショップのダイナミックなところ。表の撮影が済んだら裏にしてさらに5分焼き込む。

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「じっとしていると木と一体になった気分。あの日、(木は足がないので)ここから逃げられなかった事を考えるととても苦しい」と参加者の意見。

木になった視点で見ると普段は考えもしない見方が出来る事に驚く。

現像は水でよく洗い完成。

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夏の陽差しで焼き付けた被爆樹木の時間がTシャツに写り込んだ。

爽やかなブルーの色彩に一同歓声が上がる。

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その後、漂白処理、タグを付けて参加者の手に渡った被爆樹木のTシャツ。

そのTシャツを着ることで、被爆樹木と同じ時間を一緒に生きている事を実感出来たら嬉しい。

最後に作品を観ながらワークショップで感じたことや考えたことを共有した。

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また機会をつくり、ワークショップを実施したいと考えている。


以下参加者によるアンケートより

アンケート回収率:91.66%(12人中11人が回答)

Q1:ワークショップで面白かったところはなんですか?【それぞれ3つに○をつけて下さい】

A:影をみつけるところ ー6
B:光に当てるところー5
C:現像するところー7
D:光について考えるところー3
E:撮影時間中待ちながらどんな像ができるか考えるところー7
F:被爆樹木で作品がつくれるところー4
G:その他(木で遊ぶのが楽しかった。友達と遊べて嬉しかった)ー1

Q2:ワークショップを通して、被爆樹木について改めて考える事は出来ましたか?

はいー11
いいえー0

その理由を書いて下さい。

・被爆樹木は、これまでにも何度か会いに行ったことがありますが、こんなに近く時間をかけて触れ合うことはなかったので嬉しかったです。いろんな時間の経過を体験することが出来ました。
そして何より、じーーーっと動かずに立ち続けているユーカリの忍耐力と生命力は素晴らしいですね!
動けずに立ってみてはじめて気づきました。

・身近にあり、いつでも見たり触れたりする事が出来るのに近すぎてあたりまえのように生活の一部になっていました。こうして改めて見たり、触れたり、感じたりする機会が持ててよかったです。

・広島に住んでいても、被爆樹木を意識してみる事は無かったですが、ワークショップを通して、木をじっくり見ることができ、長い歴史に思いを巡らせることができた。じっくり見ていると、木が人のように見えて来て不思議でした。

・あのユーカリの木は、広島城に行くたびに気になって触れていた木でした。今回は皆さんと一緒に、別の関わり方、こもれびと木の存在の陰影感、木と一緒に楽しい時間を共有できたみたいなそんな感覚が新鮮でした。

・一昨年、県外から広島に戻って来てから被爆樹木(に限らずヒロシマについて)の存在をあらためて再認識しているところだったので、このような形で樹木に触れ合えたことが貴重な体験だったと思います。広島に住んでいると、あたりまえのことになっているのが残念だと常々思っています。(県外に出てから気づくことは多かったです。)広島の人が企画するのとはまた違う力がある気がしました。

・曲がりに曲がりながら生き抜いてきたユーカリ。風に揺らぐ葉や光や影を十分に感じながら、Tシャツに焼き付けることができました。


・ぼくのうちにきょうりゅうがいてゆーかりのきがしっぽみたいだったから(小1)

・初めてひばくじゅ木をみました。すごい木だなぁと思いました(小3)

・被爆樹木を改めてじっくり見ることができたから、被爆樹木について考えなおすきっかけになった(中1)

・きょうのワークショップでTシャツをつくれたことがたのしかったです。かげをみつけるところです。(小学生)

・あさみさんの、おおきなさくひんのいちばんひだりから2ばんめのがすきです。(ママといっしょ)(小学生)


Q3:ワークショップを通して考えたことや気付いたこと、感想等を書いてください。

・光の強さ、影の面白さを感じました。苦しい体勢で感光したのですが、汗だくになって影をつかまえている行為が楽しかったです。そして、一人では出来なかったので、チームの中で協力して出来た達成感も気持ちよかったです。夏の良い思い出となりました。ありがとうございました。

・以前に、岡部さんのワークショップに参加し、被爆の実相にほんの少し触れる事が出来たと思っていました。が、また違ったアプローチの仕方で、光と影のワークショップに参加し、ユーカリの傷に触れる事が出来ました。ありがとうございます。

・夏の暑い日差しの中を歩いて、木に触れ、葉の影に安堵し、体で感じながら制作できたことが大きかったと、終った後のほてった体で考えています。

・夏の日差しの強さを、被爆樹木と共有できてよい思い出になりました。Tシャツが色あせて白くなって行く感じも楽しみです。

・作品が浮かび上がる様子に驚き、楽しむことが出来ました。やったことが無い手法で作品をつくり、またそれが時間とともに変化して行くというのがとても良かったです。時間を切り取った様な感覚と、これからもまだまだ変化して行くというのが何とも言えずよい感じでした。

・ギャラリーで最初に作品をつくったので、仕組みや手順がよくわかりました。あらゆる場面でスタッフの皆様の心づかいが感じられてとても楽しく参加させて頂きました。どんどん変化していくTシャツの色にも、いちいち感激してしまいました。

・げんばくにあったことのある木が今をいまもいきているなんてびっくりしました(小学生)

・光と影を工夫してつくることがすごく楽しかった。同じ木でも場所や角度を変えることで、全然違う作品が出来て面白かった。(中1)

・かげでふくがつくれるんだなぁと思いました。いろんなふくを作って見たいなぁと思いました(小3)

・てぃーしゃつにきょうりゅうとゆーかりをおいたらうつってすごかった(小1)


このワークショップの構想は2013年に遡る。
被爆樹木の持つ時間を身につけることが出来たら、今一緒の時間を生きていることをより実感できるのではないかと考えた。

アイデアをあたためながら、2年。衣裳家の田村さんとのユニットSeeSewなら、今回の個展に合わせて実現が可能だと実施の方向でプランを練って行った。

ワークショップを実施して、本当に印象的だったことは、参加者の方々一人一人がそれぞれの感性で被爆樹木と触れ合い、味わい、その感性を光と影で写し込んでいることだった。

自分の持って来た恐竜のおもちゃとユーカリの葉をうつ仕込み、ユーカリの葉を恐竜のしっぽの様だとイメージした小学1年生。

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(写真は参加者提供)

被爆樹木と自分の好きな植物を摘み取って構成したり

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自分の手(自分の時間)とユーカリの葉(被爆樹木の時間)を入れたTシャツも現れた。


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瑞々しい感性で、被爆樹木と触れ合う機会がつくれたことに大きな喜びを感じ、今後一層活動を充実させて行きたいという思いが強くなる時間となった。


最後になりましたが、暑い中ご参加頂きました参加者の方々、ワークショップの運営を手伝って下さったギャラリーGを始め、スタッフの皆様に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。


●SeeSewホームページ
http://seesew2014.wix.com/seesew

●広島経済新聞紹介記事
http://hiroshima.keizai.biz/headline/2147/

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ワークショプ概要

●呼吸する影-被爆樹木のフォトグラム-展覧会関連企画

ワークショップ:『影をつかまえる―被爆樹木のこもれびをTシャツに写して着よう―』
8/1(sat)14:00-18:00

被爆樹木の「時間」を写しとり、影を「着る」ワークショップ。
感光性を持たせたTシャツに被爆樹木のこもれびを写しその影を柄にします。
・費用:ひとり3500円
・対象:全年齢(小学生以下保護者同伴のこと)
・持ち物:古くなったTシャツ(色写りする可能性がある為)
・定員:12名。予約時にTシャツのサイズS・M・Lを明記
・申し込み:gg@gallery-g.jp
・実施:SeeSew(シーソー)
浅見俊哉と田村香織のアーティストユニット。2014年結成。写真作家と衣裳家の視点による新しいプロダクトやワークショップを提案。主な活動に、四季の時間を感光させた布で着物をつくる
「時間のきもの」プロジェクトを実施しています。
・協力:KAPL(コシガヤアートポイント・ラボ)

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2015-08-15 00:14 公開記事

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最近の学び

⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター