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居候学生、湯浅遼太との200日間

2018年10月31日14時28分、僕のもとにこんなメッセージが届きました。

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ジーンズが好きな学生は世の中にたくさんいることでしょう。
その中でも珍しく産地に飛び込んで来た大学生。
彼の名は、お湯の湯に浅いと書いて、湯浅遼太。
温泉地である大分出身だからいつもこういう自己紹介をしている。
そんな湯浅くんと出会いました。

1. 大学を休学して、産地へ

初めて岡山に来た湯浅くんを児島の工場に案内したのが11月下旬。
そこから数ヶ月、なんと4月から大学を休学して岡山に来ると言うのです。
僕たちもちょうど、のちに「DENIM HOSTEL float」として直営店併設の宿泊施設となる建物を借り始めた頃。
ここにだったら滞在させてあげられるかもしれない、そう思って来てもらうように伝えました。

すると、、、

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見事に、違う建物にたどり着いていました。笑
そこは僕らの拠点の裏にそびえ立つ、王子ヶ岳という山を登ったところにあるレストハウス。

彼の交通手段は50ccほどの原付。
この日も京都からノンストップで向かうと聞いていました。
慌てて僕は電話をかけ、詳細に場所を伝え、ようやく彼と久々の再会を果たすことになります。

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2.1ヶ月間、工場で働くということ

再会したものの、部屋に入るなり、すぐに彼は「工場で修行したい!」と言い出しました。
まさに今、着いたばっかりなのに、、、笑
と思いつつ、僕も実は大学時代の休学期間に工場で現場を体感しておきたかったなぁと心残りに思っていたこともあり、どこか紹介することに。
若くてやる気だけの人材を受け入れてくれるのはあそこしかない!
と広島県福山市にある織物工場「篠原テキスタイル」さんを紹介しました。

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児島に来たかと思いきや、次の週からは福山で1ヶ月を過ごすことに。
そのほかにもデニム洗い加工場でも働いていたそうです。

こういう若者を受け入れてくれる工場があることはすごくありがたいことだなぁと思うし、飛び込んでいく勇気も立派。
彼はこういうところがすごい。

3. DENIM HOSTEL floatの大改装

1ヶ月の工場での働きを終え、産地のこと、工場の現場での動きを少しばかり知った湯浅くんが帰ってきました。
ようやく児島での生活。
ちょうど本格的にDENIM HOSTEL floatの改装が始まる頃で、たくさん力を貸してくれました。

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夏の時期、とっても暑くて、住んでいるから終わりどころのない改装の日々。ご飯を食べる時間以外のほぼ全てを捧げて、どこをいつまでに終わらせればオープンに間に合うのかわかりもしない中でひたすら毎日。

時には疲れのせいか、踊りながら上裸で廊下を塗ったりなど。

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何でも楽しめるのは湯浅くんの才能。
間違いなく彼がいたことで、焦燥感の漂う場の空気が明るく保たれていました。

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4.朝の清掃スタッフと深夜のコンビニ

無事、改装が終わったのはオープニングイベントの10分前。
クラウドファンディングも達成して、DENIM HOSTEL floatの営業がいよいよ始まりました。
湯浅くんの仕事は午前中の清掃。
ただ、彼は圧倒的、夜型人間。
起きてこない日もしばしば、それでも目をこすりながら清掃する日々。

やっと生活に慣れてきたのか、近所に新しくオープンしたばかりのコンビニで深夜に働きたいと。
そこは、さすがの行動力ですぐに出勤。

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深夜2時くらいでも良い笑顔。接客業が天職であろう顔をしている。
お客さんとのトークを毎回持ち帰ってくるのだが、コンビニのどこにそんなシーンがあるのか。まるで機械化されていく世の中に抗うかのように。

5.やりたいことはやる、欲しいものは買う

瀬戸内海を目の前に住んでいて、湯浅くんのやりたいことはもちろん海でジーンズを色落ちさせること。
ベストな夕日が沈むタイミングで、履いたまま海に入って、そのあと海岸の砂でひたすら削る。
ジーンズにハマった大人たちも、若かりし頃みんなそうやってきた。

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とある日、「島田さん!今日は備前に行ってきて良いですか!?」
どうやら縫製工場の社長さんに紹介してもらった備前焼作家さんに会いに行くらしい。
たしかに、せっかく岡山に来たのだから、ジーンズの生産現場だけ見るのじゃ勿体無い。
快く送り出してあげることに。

夜遅く、帰って来た湯浅くんが手に持っていたのは、個性的な備前焼。
作家さんと6時間くらい話し込んで、感動して買ってしまったらしい。
驚いたのはその値段。いや、6時間も話してもらえたことがまず驚きなのだが、それは置いておいて、なんと1つ2万円のコップらしい。

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かなり手が込んでいることも、値段もまぁわかる。
ただ、これを買ってくることがすごい。
日々そんなに使えるお金も多くなくて、食費すらも抑えてるのを見ていたので、そんな彼が1つの備前焼に2万円を出すことには驚きました。

でもそんなお金の使い方ができるのも、また彼の持ち味。
「ジーンズと同じで経年変化していくのが楽しみなんです!」
湯浅くんはそう言っていたけれど、僕なら怖くて使えずに飾ってしまうだろう。笑

ちゃっかりジーンズソムリエも取得している。
全然、勉強ができていないと毎日嘆いていた。
けれど彼ほどのジーンズ好きを落とす試験なんてないだろう。
代表としてステージで表彰されていること、そして何よりも山陽新聞に唯一湯浅くんの受賞コメントが掲載されていることに驚いた。

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どこに行ってもみんなに愛される。少しばかりの運も持っている。

6.藍染と下駄に魅了されて

お湯の湯に浅いと書いて、湯浅くん。
そうそう、彼は大分県の出身だった。
沖縄の琉球大学に通っているからついつい沖縄のイメージを持ってしまうが、彼には大分への愛が存分にある。

大分県日田市は杉、そして下駄の産地。
奇跡的にこの記事の全写真に湯浅くんの足元がギリギリ1枚も写っていないのですが、そういえば彼は毎日下駄を履いていた。
彼から将来やりたいことで、沖縄でジーンズのセレクトショップを開きたい!という話は聞いていたのですが、それは置いておいて下駄を最初のプロダクトにしたいらしい。
あれだけ下駄を履いている湯浅くん、地元愛の強い湯浅くんだからこそつくれる下駄もあるのだろう。

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もう一つ彼がハマったのは「藍染」。
DENIM HOSTEL floatの改装中に見学に来てくださった、広島県福山市で藍の栽培を新しく始めた方と意気投合していた。いつのまに。
現場主義を貫く湯浅くんは、もちろん畑へ。

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帰ってきた彼が見せてくれたのはこの写真。
初めて訪れた場所でお家にお邪魔したらしく、ビールを飲んでいる藍染職人さん。こんな笑顔を引き出している。

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でも、もう何も驚くことはない。彼ならこれくらいのことにはなるだろう。

7.クラウドファンディング、始まる

愛のある地元の日田杉を使った下駄を、魅力に取り憑かれた藍染で彩り、大好きなデニム素材を鼻緒に使った彼のファーストプロダクト。
それをつくるためのクラウドファンディングがとうとう始まった。
今年度中には沖縄に戻ってしまう湯浅くんにとって、この1年で学んだことや出会った人たちの想いを結集させた作品。

・プロジェクトページはこちら
https://www.makuake.com/project/legit/

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(2019年12月17日25時時点)

目標金額は100万円に設定していますが、湯浅くんが目指したいのはおそらく210万円。
僕たちEVERY DENIMが立ち上げの時に集めた金額が209万6000円。
それを越えたいとずっと言っていたから。

彼ならきっとできるはず。
この1年、ものすごいスピードで成長してきたのを目の当たりにしました。
わからないことがあればなんでもすぐに聞いてきて、スポンジのように吸収できる素直なところ。
誰からも愛されて、その場にいるみんなを楽しませることができる明るいところ。
周りのみんながついつい手を差し伸べてしまう、うっかり者なところ。

彼自身、たくさんの人と出会って見える景色も変わったでしょう。
僕にはそんな彼の顔つきが、少し逞しく変わったように見える。

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ではでは、また次回。


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