日々の雑感 day59【究極の問い「もし何の制約もなかったら?」 世界最高の教室③】
前回までは以下のリンクから。
著者であり、実現者であるダイアン・タヴァナーが特別な人ではない事。
そして、全ての人と同じく理想が現実の前に壊されてしまった経験の中にあった事。
そして、その新たなスタートを描く問いが
「もし何の制約もなかったら?」
☆究極の問い
ダイアン・タヴァナーはこう語ってくれています。
教育者として、保護者として、人として、私たちは「すでにあるもの」の範囲内にとどまっている事が多い。
何年ものあいだ、働いてきた学校ではっきり問題だと思ったことを私は指摘し、正そうとしてきた。だが、そこで立ち止まって「いい状態だったらこの学校はどんな風だろう?」と考えてみたことは一度もなかった。
私達の国、日本では「トヨタ式カイゼン」という言葉に象徴されるように改善し、問題を、課題をモグラ叩きのように打ち壊していく事が唯一の方法であるかのようなカルチャーですらあります。
けれど、どんなに改善しても、どんなに修正しても、新たに生まれる課題や問題の方が多く、そのやり方や考え方自体が既に限界に達している・・そんな昨今でもあるわけです。マーケティングを学ぶと早い段階で、
馬車を改善しても車は生まれない。
車を改善しても飛行機は生まれない。
といったイノベーション理論等はすぐに理解できるようになります。同じように教育や学習、働き方といった社会の諸事に関する考え方や方法も日々アップデートされています。そして、より良い、これまでにない方法を私達は選択出来ます。
けれど、やりません。出来ません。
そして、新しい挑戦を始めようとする誰かがいれば、周囲には諦める事、古い慣習を繰り返すことを挑戦者に受け入れさせようとする人は少なくありません。そして時には、こうした挑戦者を潰すことがあたかも良いことであるかのように自慢したりする人すらいたりします。
なぜでしょうか?
☆たったひとりから始まる
ダイアンのパートナーとなるコミュニティ・ハイスクール・ファウンデーションを立ち上げたクリス達は、真面目に勉強を積み重ねてきたたった一人の高校生が州立大学への進学に必要とされる履修が出来ていない事に疑問を持ちます。
そして「高校問題について話し合う」地域のミーティングは、いつしか地域に最高の高校を作ることを目標としたコミュニティになり、スタンフォード大学を通じてダイアンとの出会いを迎える事になるわけです。
しかし、いざこのチームが高校を立ち上げていくという段階になってキンバリーという女性が脱落します。この女性は自身がMBAの取得者でもあり、
「大学に進学する生徒は中学2年生までに一定レベルの能力を備えていなければならない。でなければ、高校で成功する能力、意欲を期待できない。だから、新しい高校は能力のある生徒だけを受け入れるべきだ」
という信念の持ち主でした。キンバリーはモンテッソーリを経由してきた集団を苦手とする子供や発達障害の子供もフェアに受け入れていくダイアン達に「疑問」を持ち、
「失敗するにきまっている」
と告げて去っていったわけです。
☆理想も小さな一歩の実現から始まる
キンバリーが去った後、理事会でダイアン達は確認をします。
自分達のヴィジョンはこれまでにない美しいもので、誰もが称賛するだろう。けれど、今はスタートアップでボロボロな状態。その現実から、美しいヴィジョンへとより早く進んでいく事をと。
「楽しい高校生活を犠牲にするほどの特進コースなんて、いらない」
ダイアン達のヴィジョンにとても共感した一つがこの部分。
ダイアン達が預かった最初の高校生達。その中の一人であるエリックは高学歴の夫婦の子供だった。けれど、エリックが白血病とわかった時に両親は「勉強漬けになるような高校を避けたい」と考えていました。
毎日詰め込み続ける3年間を送らなくても、子供達は質の高い教育を受けて、大学に進むことが出来る。よりよい形で。
ダイアンの約束はこうして始まっていき、80人の子供達と両親にその結果を示すことになっていきます。
☆未来を想像できない日本にいる私達の対処
欧米に比べると「制限のない未来」を描けない、描くことに抵抗を示す日本人はとても多いと思います。日本人では約8割~9割が未来想像を苦手とする、難しいと認知しているという論もあります。
実際、僕自身もコーチングや1on1を通じてここで「出来ない」「難しい」と答える人に多く出会います。
けれど、私達は日本人だから未来を想像できないわけではありません。
仕事をしながら、学校の授業を受けながら、今日の夜に何を食べようかとか、週末にどこに行こうかといった未来は普通に想像しているわけです。
けれど、いざ、こうして自分自身の願いや未来に向き合おうとすると大きな心の抵抗に出会うわけです。皆さんはどうでしょうか?
☆ワンピースのように進む価値観型
ポンと未来を描けないのは、私達日本人がダメ出しの教育を幼少期から繰り返されている事と無縁ではないでしょう。もともと警戒心も高い民族なのに、こうした攻撃を年長者や権力者から受けることが繰り返されれば、それを回避する為の行動習慣が知らず知らず身についてしまいます。
夢や願いを否定する。
そんな大人げない大人が世の中に多すぎるというわけです。ですので、私達はちょっとずつ進んでいくしかありません。
漫画ワンピースでは船を次の島までだけ導くログ(コンパス)が描かれています。この進み方はまさに日本人向きで、心理的NGではないという方向に少しずつ進みながら、その都度成長し、仲間を増やし、何かを見つけ、より自分の願いの深淵へと近づいていく。
そんなセッションが有効になります。
そして、その一歩一歩を見守っていける誰か。
安心、安全をもたらす仲間もまた、我々は必要としているのです。
その意味でも、私達がもっとも回避しなければいけない一つが「分断」と言えるでしょう。
*参考
ありがとうございます。頂きましたサポートは、この地域の10代、20代への未来投資をしていく一助として使わせて頂きます。良かったら、この街にもいつか遊びに来てください。