【第三十六場A…イマワノクニの王様】

 詩人さんとキリット大統領がイマワノクニに到着してから、はや十年です。この国の言葉は、五人のお弟子さんたちが教えてくれました。詩人さんは元々言葉が好きでしたし、キリット大統領はまじめですので、二人とも三カ月で話せるようになったのです。いまでは読み書きもイマワノ人に負けないほどになりました。
 修行は、モンゼン・ラミ太郎が仕込んでくれました。術の伝授は師匠にしかできず、弟子には許されなかったのです。そして、二人は三百もの術を身につけました。他の弟子たちがまだ百にも達していなかったので、本当にたいしたものです。二人とも、痩せこけておりましたが、眼光するどくキリッとした面構えになっておりました。
 十年の間に、イマワノクニには、立派な建物が次々と建ち並びました。すべては新しい王様のドウダ・マイタカ王の命令です。プライドは誰よりも高いくせに、自分に自信のないマイタカ王は、自分の力を国民たちに見せつけるために、次々に大きな建物を建てさせるのです。そして、
「どうだ。まいったか?」
 と言っては、大きな声で笑うのでした。国は一見、華やいで見えましたが、国民たちは、厳しい肉体労働と高い税金に嫌気が差して、陰でブーブー言っています。先代の王様のときは、決してこのようなことはありませんでした。これではイマ和ノクニではありません。カコ和ノクニです。

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