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人と鶏の共生する路地

有名建築のレビューは然るべき書き手に任せて、日常の中で、あるいは旅先でふと目にした、名のない空間について、そして、その背後にある人々の営みについて書いてみたい。

誰にも記述されずに、いつまでも放っておかれるであろう空間。
そんな空間に興味がある。

今回は、その第一話。

気を張らずに、思うがままに、過去に訪れた場所について思いを馳せながら書きたいと思う。

観光地も一歩奥へ入ると、そこに暮らす人たちの土着的な営みと、それによって形づくられた独特な空間に行き当たる。

ホイアンは世界文化遺産に登録された、美しい歴史的建造物とそれを彩るランタンで知られるベトナム屈指の観光地である。

通りには観光客が賑わい、それを目当てにした屋台が連なる、東南アジアの観光地らしい風景がみられる。

だけど、通りから一歩入ると、生々しいほどリアルな営みが垣間見える。

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観光の中心地を離れた飲食店は、その土地で暮らす人の憩いの場となっている。

数人で何やら話していたり、カードゲームに興じていたりするのだけど、面白いのは、その足元で放し飼いにされた鶏が我がもの顔で歩きまわっていて、人々はそれを気にする素振りもないのだ。

このときは頭が回っていなかったのだけれど、後でふと考えてみると、この放し飼いにされた鶏たちは、どこかのタイミングで捌かれ、ここに暮らす人たちの食卓にあがるのだろうか。


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さらに路地の奥へ進むと、民家の軒先で、洗濯物をする姿や食事をする姿など、東南アジアらしい屋外空間の過ごしかたを垣間見ることができる。

観光の中心地では、さすがに見かけることも少ないが、この辺りのローカルなエリアでは、半裸姿で心地良さそうに過ごす様子もしばしばみられ、人々の営みが伺える。

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また面白いのは、街を歩いていると建築中の様子を見かけることがあるのだが、それが日本で考える建築よりもDIYに近く、ほぼ人力で建てている。

民家のすぐ近くに、使用された後のレンガが無造作に置かれていた。


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"飾る"であったり"隠す"という意識が希薄で、あるべきものがそのままあるという空間の中で、子どもたちが遊んでいるのを少し羨ましく眺めた。

この記事に関して、こちらのPOD CASTで話しています。こちらも是非お願いします。


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