哀しい

コロナによって、日中関係にヒビが入っていく様を見ているのが悲しい。

思えば、自分が中国と仕事で関わり始めた時期は、日中関係が最悪な時期だった。約8年前に尖閣諸島問題を引き金に、反日デモは激化し、多くの在中日系企業が撤退を余儀なくされた。

自分はこの時期は、深センに住んでいたのだが、自分が住んでいる建物の目の前をデモ隊が通り過ぎていくのを見て、怖さを感じたのを覚えている。仲のいい中国人友人にアドバイスされて、外に出る時は、韓国人のフリを装い外出をしていた。

そんな時期に自分は、中国人観光客を獲得する為の、中国ネットマーケティング事業を行っていた。当時はクライアントに理解されず、理解させられる能力や経験も乏しく、売上を伸ばしきれなかった。


ただ、その後、アベノミクスにより円安。それに伴った日本観光立国戦略。中国の急速な経済発展や海外旅行ブームが重なり、観光インバウンド市場は多いに盛り上がった。言うまでもなく、牽引したのは中国人観光客である。そして、自分もこの領域に、遠からずの距離にいながら、キャリアを重ねてきた人間だ。


訪日インバウンド市場の発展により、この5〜6年は日中関係が極めて良好な時期だったと思う。中国人が日本に観光に来て喜ぶ姿を見るのは嬉しかったし、それによって、日本の観光業界が喜ぶ姿を見るのも同様に嬉しかった。


2020年は東京オリンピック。
過去にないほどに、このインバウンド市場が盛り上がる年となると信じていただけに、コロナという自然災害によって、この市場が壊滅的なダメージを受けている。

東京オリンピックが中止になる可能性は決して低くない。このままなら難しいだろう。よくて、来年への延期だ。

日本国民が待ち望んでいたオリンピック。それが中止になれば、その憎しみの感情は中国に向けられるだろう。すでに、日々の業務や生活に影響を受けている人からは、ヘイトの感情が中国人に向けられているのを感じられる。

こういう状況がとても哀しい。
いつ収束するのだろうか、収束してもこの雰囲気や感情は尾を引きだろう。

時間をかけて、多くの人の努力があって、積み重ねられた、ここ最近の良好な日中関係が崩れていくかもしれない、この状況がつらい。



一方で、こんな視点も持っている。
中国ECの巨竜であるアリババは、SARSの時期に、急速に普及したと言われている。外に出られなくなり、当時は懐疑的な見られ方をしていた、新興ネットサービスである、ネットショップの利用者が一気に増えたのだ。

このコロナで完全外出禁止の中国では、自宅で完結出来るTechサービスが急速に普及しはじめた。それは、オンライン医療サービスであったり、IOTデバイスであったり、VRコンテンツであったり。

物理的に拘束された環境下において、発展せざるを得ない新興Techサービス。それこそが、次のGAFA,BATなのかもしれないし、それを注視したいという好奇心もまた、自分の中で膨れ上がってきた。




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