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J3 第29節 レビュー 【鹿児島ユナイテッドFC vs SC相模原】噛み合わない思惑

2020.11.22 J3 第29節
鹿児島ユナイテッドFC vs SC相模原。

衰残。

上位対決。6ポイントゲーム。
勝ちたい思いは裏目に出ました。

ある種、納得はしていますがショックではあります。

今回は、改善した点と課題双方に触れていければと思います。テーマとしては、「改善された守備基準」、「水本の貢献」、「ゴールまでの道筋」の3点について言及します。

それでは、ご笑覧ください。

0.スターティングメンバー

まずはスタメンからどうぞ。

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鹿児島は、遂に田辺がスタメン復帰。
ニウドとフォゲッチもベンチに帰ってきて、ぼちぼち選手層も厚さが戻ってきました。

一方の相模原。
3-4-2-1も持ってきますが、今日は3-3-2-2。
最前線はホムロとユーリ。ゴリゴリスカッドですね。
一方で藤本はベンチ外でしたが、なんかありましたっけ?シンプルなお休みでしょうか。

噛み合わせとしては、中盤で数的不利が生じる構造となります。そして、WBは誰が、どう対応するかについても重要になりそうな構造にもなりました。

1.改善された守備基準

沼津戦でフツフツ沸いた課題。
構造は違いますが、前述したように大外対応どうするの?です。
今回は、規則・基準が明確だったように思います。

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抽出したのは、8:55~のシーン。相模原のFKで逆サイドの17番星にボールが送られたところからです。

サイドチェンジのボールに鹿児島ブロックはスライドが間に合っていませんでしたが、17番星にはSBが対応します。

このとき、ハーフスペースが空くことになりますが、米澤がスペースを埋めます。そのためSHは、相手ビルドアップ時から普段より中央寄りの位置を取り、ハーフスペース対応に備えていました。

いち早くスペースを埋めた米澤。9番ユーリがハーフスペースに走りこんでいましたが、時すでに遅し。難なく危機を逃れました。

最終ラインにまで吸収されることもあるSH、特に米澤の過労が心配されますが、途中交代で対応して連戦を走れているので、今のところ問題ないという判断なのかなと思っています。

一方で後半は少し様相が変わりました。
前半より少し4-4ブロックをコンパクトに取ります。そして、SHは最終ラインまで吸収されることはほとんどありませんでした。恐らく、無得点で迎えた後半、ポジトラに備える意味合いでSHを高い位置に立たせたかったのではないかと思います。

もっとも二ウドが入ってからは、彼の機動力を活かし対応することもありました。特にオープンな展開でもあったので、ですね。

いずれにせよ、誰が・どのようにスペースや人を守るか?については整理されていたように思います。

2.水本の貢献

水本、流石です。
沼津戦あたりは体重そうだなぁと感想抱きましたが、コンディションがどんどん上がって来ていることと、今節有難かったのは前進に大きく関与しています。

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いくつか抜粋したいシーンがあるのですが、今回は13:52~を抜粋。
水本発でチームとして相模原の選手を動かし、崩せた場面です。

大西からパスを受けた水本は9番ユーリを背走させながらドリブルで前進します。

そこで、八反田が28番鹿沼を引き連れながら落ちてきてパス交換。それと同じタイミングで酒本が裏抜けのラン。33番梅鉢は出るに出れなくなり、ピン留め出来ました。

と、ここで中盤の三角形の一辺、鹿沼-梅鉢間が広がったことで、水本→馬場へのパスコースが空きました。

すかさず、馬場に通した水本。
擬似カウンターの発生です。

そのパスカットを梅鉢にトライさせたことが功を奏し、酒本が落ちてくるスペースを確保。馬場は酒本に繋ぎ、裏を狙った米澤まで繋いで擬似カウンターは完結します。

このように、2ndライン後方で待ち構える選手に楔のパスを届けられるCBが帰って来たことで、八反田や田辺が必要以上に落ちてサポートに回らずに済みました。

今回は、CBと相模原FWが数的同数なので、DHが最終ラインにまで落ちても問題ないと思うのですが、数的同数の中、大西も関わりながらCBで前進できるのは有難いです。

さらに、中盤ではただでさえ構造的に数的不利になるので、DHが高い位置を維持出来るか否かは死活問題でもありました。

その意味では、水本だけでなく、岡本もキックの質が高い選手ですので、CBがこのコンビで組むことは中盤の数的不利問題を起こさないために必要でした。

と、このように、敵陣まで侵入し、ゴール前まで迫るチャンスが多かった要因には、最後尾からの貢献も大いにあったと思います。

3.ゴールまでの道筋

とはいえ、フィニッシュは不発。
技術的・心理的な部分もあるでしょうが、そこは憶測しか立たないので。

前半 ~SB滑走の悩み~
外から見た盤面の変化を書き連ねます。まずは前半から。
前半はSBの大外レーン滑走がメインとなりました。
この構造は、今回のような対5バック戦や、相手SHが最終ライン付近までSBに付いてきた時に難しくなっているように思います。

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SB滑走は沼津戦などと同様ですが、今日は5バック戦。ゾーン3まで押し込めてもWBに足止めされることが多かったです。

その1on1自体は、両SBの質からして勝てるのですが、十分に時間を掛けられました。

ゴール前を半ば人海戦術で固められれば押し込めないのは、相手チームの対策ともこのスカッドの課題とも言えると思いますが、行き詰まりに繋がったのは事実としてありました。

後半① 〜萱沼の投入〜

押し込んだ後でも得点の可能性が上がるように、というのが萱沼投入の意図であるような気がします。中央で陣取って、何か起こしてくれそうですしね。

実際にそのような意図があったんじゃないかという場面もあったのですが、シンプルなロングボールも増えるのが、萱沼投入後の鹿児島の通常運行。
SBが滑走する時間を作れず、SBが高い位置を取る場面が減った一因だと思います。

ただ、主因は相模原の対応でした。

後半② ~相模原の思惑~

相模原としては、何度もピンチをもたらしていたSBを野放しにするわけにもいきません。
そこで後半に相模原が講じたのは、ビルドアップの段階でのSB潰しでした。

最後尾のCBやGKからSBへパス供給されると、WBやIHの選手がアグレッシブにチェックに向かい、自由を与えません。

これによりSBは前方のスペースを失い、徐々に後退させられます。よって、ポジトラに難が出てきたというのが、SBが苦戦した所以かなと思います。

特に相模原からすれば、構造上数的有利な中盤からIHが出ていっても、均衡で保てるので意図して実施していたかもしれません。

少なくとも、それにより前半の形が出しにくくなったのは間違いないんじゃないかと思います。

後半③ ~フォゲッチの希望~

後半72分にはフォゲッチが帰ってきました。
彼の復帰で幅が広がったと思うのは、SHとの内・外の関係性がスムーズに入れ替わりしている点でした。

右サイドは酒本や米澤が、大外やハーフスペース付近を比較的自由に動きます。その時、SBは後方支援(崩しはSHの質で担保)かSH・FWを追い越していくか、といった判断がありますが、どの幅で滑走するかが重要です。

72:24~を見ていただければと思いますが、米澤との関係性でオーバーラップorインナーラップを選択し、斜めのパスコースを創出します。

そのことで、相手の目線を変えながら前進。クロスを放った時、ペナ内では相模原DFが後ろ向き対応、半分疑似カウンターの様相だったので、人数も帰り切れていませんでした。

結局このシーンは不発ですが、このようにして相手が構える前に攻め切っちゃえ!を再現できていればもう少し可能性のあるシーンが作れていたかもしれないです。そこはあくまで妄想ですが。

4.あとがき

そして、ショッキングな後半アディショナルタイムの失点。

カウンター被弾でしたが、ロストフの悲劇かな?と思うくらい綺麗なカウンターでした。こんな形で被った自チームの失点でもなければ、手放しで褒めちぎっていたでしょう。

そういった綺麗にしてやられた失点だから、というわけではありませんが、冒頭にも書いた通りある種納得は行くゲームだったと感じています。

これで昇格圏と勝ち点7差の9位。
厳しいです。

ただ気持ちとしては、今節勝っていようが昇格圏までに何チームもいる現状。昇格圏との勝ち点差では表せないほど難しい現実に対してむしろやってやろうと。

一戦一戦の結果で一喜一憂するのでなく、J2に返り咲く立場ならどっしり行きましょう。

残り4戦。可能性が無くなるまで。

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