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J3 第24節 レビュー 【鹿児島ユナイテッドFC vs FC今治】見えた現在地

2020.10.31 J3 第24節
鹿児島ユナイテッドFC vs FC今治

連敗。

昇格圏までの勝ち点差は8に広がりました。

諦める程ではないにせよ、厳しい状況です。

敗戦を受け入れたくもないですが、今治も盤面を見た効果的な采配を取ってきたように思います。

今節はポイントを絞り、試合の流れの順に「想定外だった今治の配置」、「早期対応が出来ない鹿児島」、「金監督の決断」、「配置変更の応酬」、の4点を中心に言及したいと思います。

見ていきましょう。

1.想定外だった今治の配置

試合によって、様々な配置で臨んでいる今治。
しかし、今節の配置は過去にはなかなか取り入れておらず、想定しにくい・鹿児島対策を含んだものでした。

そのスタメンは以下の通り。

TACTICALista_今治戦スタメン

鹿児島に大きなサプライズは無かったように思います。
フォーメーションは4-2-3-1で表記しました。

酒本は普段から少し落ちてトップ下のような役回りを担いますので、タスクに大きな変化はありませんでしたが、ネガトラ時やボール保持での位置を見ると、トップ下として専念していたと解釈しています。

組織的守備では、酒本も最前線に上がり、4-4-2の形でスタートしました。

フォーメーションは関係なく、そんな酒本のタスクが生命線ということは織り込み済みの今治。
フォーメーションとしては4-1-4-1で臨んできました。

それにより、アンカーに入った20番岡山はマッチアップとなる酒本を監視します。
さらにチームとしては撤退を優先。ゴール前にコンパクトなブロックを敷き、ゴール前でのプレーやシュートを尽く制限しました。

ここ最近の試合では、4-4-2メイン。4-2-3-1はあれど4-1-4-1の形は取っていなかったので、これは想定外だったのではないのでしょうか。

2.早期対応が出来ない鹿児島

4分には失点を喫しますが、セットプレーのカウンター。左SBの位置に八反田、DHの位置に酒本などスクランブルな盤面だった上、SHの帰陣は間に合っていない状況でした。

課題はあれどカオス成分が大きく、今後大きな問題になりそうな失点では無かったように思います。

しかし、ビハインドに変わりはありません。
鹿児島は、失点・今治の配置と想定外の事態に息詰まります。

TACTICALista_今治戦2

まず、20番岡山が酒本を消しに掛かるのに対して、酒本はDHの高さまで降りる機会が多くなりました。酒本のように技術・判断力が高い選手がボールホルダーに寄って、コンビネーションで守備を突破しようとするのは日本サッカーでよく見るシーンです。

これまでにも、ビルドアップが現状より拙かった時期にFW酒本が最終ラインまで落ち、組み立てに参加する場面も多くあったかと思います。

しかし今回はそのアクションにより、ビルドアップにおける後方の選手の強みも消してしまっていました。

酒本の落ちる動きに準じて、CB(特に岡本)前に落ちる八反田。
酒本との距離感の問題もあったと思いますが、自ら落ちる場面もあったので個人の判断から来ていた部分もあるかもしれません。

その八反田の動きにより、2つの問題が引き起ります。

① FW1枚に対して最終ラインに3枚のビルドアップ隊
1つ目に、落ちることによる弊害です。
今治の1stプレスはFW1枚であり、2枚のCBで十分プレス回避出来ていました。

であるのにも関わらず、落ちてフォローに向かう動きには

1)人数過多(全体の重心が重くなる)
2)仮にロストするとマークの7番山田はより高い位置で攻撃に移行できる

という懸念が生じます。

② 岡本がボールを運ぶスペースを潰す
岡本の何が素晴らしいかと問われれば、「成長スピードの速さ」と答えるのですが、鹿児島に来て大きく成長したと感じるのが運ぶドリブルの質です。

八戸戦でもお手本のような運ぶドリブルがありました。八戸戦レビューで言及したかったのですが、是非単体の文章にしたいと考えているので、運ぶドリブルについて詳しくは別記事で述べようと思います。

しかし、今節はそのような場面はほとんど見られませんでした。
DHが落ちることにより、本来岡本が自ら前進するためのスペースを消している為です。

以上のような2つの問題が引き起っていました。

個々の判断が完全に間違っているということではありません。
これまでの経験に基づき、問題解決出来るプレーを選んだまででしょう。

しかし、
チームとして、そのプレーを通じてどのようにゴールまでの道筋を描くか?
という課題にコミット出来ていないことが問題です。

そのため、特に日々成長している岡本や前節スーペルな活躍をした八反田の輝きは半分失われていたと感じます。

こればかりは、チームの完成度(不測の事態にピッチ上でどう解決出来るか)に依るので、繋いで前進することについて試合中にどうこう出来る範疇ではありませんでした。

そこで、金監督は決断します。

3.金監督の決断

金監督の決断は、試合後コメントでも言及されました。

(交代選手の意図について)
パフォーマンスで考えた部分がひとつです。
もうひとつ、パスで崩しきれなければ、シンプルに相手陣内にボールを入れてこぼれたボールを狙おうという判断を加えて選手交代をしました。

後半見られたロングボールでシンプルに送る戦法です。
薗田や萱沼の投入によく表れていたのでないかと思います。

個人的には、ベンチメンバーで遂行出来そうな変化を考えたときに、この変更は至極真っ当だと思います。

一方で、捉え方によっては「今シーズンで言う秋田のようなカオスが伴う戦術を半分即興でやろう!」という判断でもあるので、後半の戦法が心許ないという意見が上がるのも理解できます。

しかし、前半安全に前進出来ていたのはコンパクトな今治DFブロックの大外に走りこんだSBまでボールを届けるパターンくらいではないでしょうか。

SBにボールが渡ってからも、周りの選手と協働して前進するような場面は少なかったです。特に今シーズン出場時間が少ない田中は、SHやDHとのユニットの中で協働してDFを打開するのは難しかったかもしれません。

勿論、技術の高い選手やユニットが機能する選手間での協働、セットプレーなどで決定機を作る機会はありましたが、あれだけゴール前に人数を固められては、外から見える以上にゴールは遠かったでしょう。

そこで、今回のような判断に至ったこと自体は納得感が強いなと感じます。
今シーズン通してのチーム作りという観点からは残念なのかもしれませんが、それはフロントが判断することですし、僕には分かりません。

僕から言えるのは、
試合中にやれそうなことはやったんじゃないかなという意見までです。

4.配置変更の応酬

鹿児島はロングボールで前線に届けて得点に繋げる、今治はセーフティに残り時間をやりくりするという至上命題の中で迎えた試合終盤。

命題を全うするための配置変更を両チームとも行いました。
60分過ぎから始まる両チーム合わせて3つの交代について述べます。

①61分 【今治】13番澤上→27番橋本投入

TACTICALista_今治戦4-1

27番橋本の投入です。これにより今治は4-2-3-1に変更します。

鹿児島のビルドアップ時、トップ下に入った8番玉城は八反田をマークし、中央を締めます。
これにより中央へのルートが分断でき、SBにパスを出す予測が立ちやすくなることで、コンパクトに中央で位置していた今治SHがSBへプレスに出ることも多くなりました。

また、鹿児島DHが最終ラインに落ちた時は玉城を含めた2ndライン以降は深追いせず、後方でブロックを敷きます。1点リードの局面なので、積極的なプレッシングは少なかった時間帯でした。

②64分 【鹿児島】中原→薗田投入

TACTICALista_今治線4-2

一方で、パワープレイに厚みを増したい鹿児島。
中原から薗田の交代で4-1-3-2に変更します。

これにより、最前線では数的同数でロングボールを待ち構えることが出来ます。
一方で、守備やネガトラでは八反田周囲ががら空きになりますが、ここはSH(主に枝本)や酒本が下がってカバーしていました。

③72分 【今治】8番玉城→29番飯泉投入

TACTICALista_今治戦4-3

前線に人数を掛けた鹿児島に対して、自ゴール前で数的優位を作り、守り抜きたい今治。
29番飯泉を投入しました。4-1-4-1~5-4-1に移行します。

4-2-3-1でもSHが最終ラインに下がり5バック化する場面もありましたが、かなり無理なタスクでした。
そこで4-1-4-1に移行し、飯泉をアンカーに置くことで5バック化がスムーズになりました。

さらには、DHとSHで2ndラインを形成し、5-4-1でゴール前を固めます。

守備だけでなく、ポジトラ~ボール保持では八反田周りを2人で占有し、4-3-3に近い形を取りました。
73分の今治決定機はこの構造が奏功した1例だと考えられます。

5.あとがき

今治戦を振り返ってきました。

内容に理解はすれど、残るのは敗戦という結果。

ポジティブな結果と言えるわけではありません。

残り10試合。
勝ち点8差をひっくり返すにはギリギリです。
これ以上離される、あるいは数試合の内に差を詰められなければ本格的に厳しくなるでしょう。

しかしまだ、射程圏内。
熊本と相模原については直接手を下すチャンスもあります。

信じるしかありません。
まずは富山戦。共に闘いましょう。

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