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データは有能だけど万能じゃない!正しいデータとの向き合い方

2007年から3社に渡り、所謂「データ」や「情報」といったプロダクトを企業に提供するビジネスに従事しています。10年以上この手のビジネスをやっていて、少しばかり気付いた事がありますので2点ほどまとめてみました。

1) 市場データの位置づけ

アプリの世界で言うと、例えば自社アプリのダウンロードやユーザーの利用に関するログをとって分析し、どこでユーザーが離脱しやすいのか、どんなUIにするとコンバージョンが上がるのか、どんなプッシュ通知を送るとユーザーの利用が変化するのか、これらの俗に言うABテストを高速で回していく事が求められてきます。

これは船に例えると「操縦技術を磨いて上手くなる」ことです。

一方で、市場データ/外部データを使うことは、例えば交通広告にユーザーが反応してダウンロードが伸びるのはどんなアプリなのか、テレビCMでユーザーの利用率が伸びるのはどんなアプリなのか、そもそも日本国内でどれくらいの規模のダウンロードやアクティブユーザーを獲得することか正解と言えるのか、同じ土俵でアプリを出してる競合と比較して自社はどこに位置しているのかなどなど、「周りを見渡す」事も必要なアクションになります。

例えると、こちらは「海図と羅針盤を使って正しい方向に進む」ことです。

どんなに操縦技術が優れていても、明後日の方向に進んでいってはいけませんし、その逆もまた然り。特に大きいチームを率いているのであればなおさらです。操縦技術が優れているだけに自信もあるでしょうし、そうなると方針転換がし辛く、手戻りの時間やコストを考えるとなかなか「ごめん、やっぱこっちだわ」と言い出しづらいのが現実なんだろうな、と思います。

とは言え、市場データに全て(つまり操縦技術の高度化まで)求めるのは違いますし、過度な期待(つまり「こっちいったら絶対ゴールだよ」という正解)を持つことも危険です。あくまでも地図、されど地図という位置づけが正しいです。


2) クライアントあるある

この10年以上、本当に多くの企業と会話してきました。大手企業であれば部署が違うと違う会社か?と思うくらい良くも悪くもきれいに縦に割れており、それも含めると少なく見積もっても2,000以上の組織の人たちと接点を持たせてもらいました。

その中で得た、僕なりに思う「あるある」を2つだけ紹介します。このあるあるは決して良い悪いではなく、それぞれに即してデータプロバイダーとして適切に応対しないといけないと自戒の意も込めて書いています。

[あるあるその1]情報はタダと思っている
誤解を恐れずに雑に括ると、大手上場企業のシニア層の人たちにこの傾向が強いと思います。過去からの慣習によるものなのか、お付き合いのあるベンダーさんや広告代理店さんの営業に言えばタダで情報が得られると思っていて、加えて売り手としても商売のためにせっせと手弁当で頑張るわけです。

なので、いざお金を出して情報やデータを買おうとする際に、そういう人たちからすると、タダだった(ハズの)ものになんでお金を払わないといけないのか?という疑問が出てきます。なので、払うぶんのリターンを「お金」で測ろうとし、交渉のテーブルで「で、ROIは?」とか「そのデータで幾ら儲かるんじゃ」という話になります。

[あるあるその2]過大評価する or 過小評価する
これは結構二分されるかな、と思います。
過大評価する人たちに多く共通するのは「危機感が強い」場合や「上からの圧が凄い」場合などの背景がありますが、一様にしてデータや情報に対してあれもこれも、と理想を伝えてきます。上でも書きましたが、一言でいうと正解を欲しがるのです。何をすればいいのか、今この瞬間にTo Doリストをくれと言わんばかりの温度です。

反対に、過小評価する人に多く共通するのは「今うまくいってる」場合や「自身の経験に基づく意思決定に自信をもっている」場合など。つまり、何かに頼らなくてもいける、と思っているケースです。この場合は非常にスペシフィックな情報やデータをピンポイントに求めてきます。「あとはこれさえあれば自分のパズルのピースが埋まる」という印象を強く受けますが、そのパズル自体がとても小さく、パズルの枠は外に広がっているのに枠そのものを自分で決めてしまっているようにも見受けられます。

データや情報は羅針盤です。「どう進むか」はその羅針盤を見ながら操縦桿を握る人や管制塔から指示を出す人次第です。

ですが、羅針盤や海図がない中で、経験とどこかで見聞きした不確かな地図情報だけを頼りにし、加えて目的地自体も「え、それゴールなの?」と思ってしまうような設計をされているような航海に、チーム一眼となって多くの費用をかけて出ることを想像すると、それがいかにリスキーか想像できると思います。

すべての意思決定をデータや情報を元に行うべきではない(この話は別途)一方で、時々確認して自身の進む方向が大きくし間違っていないかどうか、目的地に最短で到達するための道具として向き合っていくものだと考えています。

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