半年ぶりの生演奏会
今日、3月ぶりに生の演奏会に足を運んだ。その演奏会は、藝大の同期、及川悠介くんのヴァイオリンリサイタルである。
感想としては、とても良かった。今までの私達音楽家が貯めていたフラストレーションを解放するかのような演奏だった。
プログラムはこのようである。純ドイツロマン派のプログラムである。プログラムノートも奏者自身が書いていて、ありきたりな楽曲解説のようなことはあまり書いておらず、個人的かつ客観的な文章は読んでいて読者も楽しい。
とても考えられたいいプログラムだったと思う。
ここからほんの少しだけ敵を作りそうなことを書いてみる。
最近は若手の活躍が華々しく、我々と同年代、いや、もっと下の世代で、世界のコンクールで賞をとったり優勝したりしている。そのこと自体はとても素晴らしいことだと思うし、誇りに思うことである。この発端は近年の教育、いわゆる英才教育を超えた、『天才教育』が関係していると思う。小さいうちにいろいろなことをさせて、あとは自分で考えさせるような教育ではなく、親によってやるべきことをある程度決められ、それを若いうちから極めようとすることである。
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天才教育自体はたしかに合理的だし、そうした方が高いレベルにすることができるのでありだとも思う。
しかしこれには欠点がある。
それは
本人が好きでなくても続けなくてはならないということである。(やめる道が残されていない)
音楽をやっている人で
本当に音楽を愛し、曲を愛し、作曲家を愛し尊敬し、音楽という芸術の沼にハマっている人がどれほどいるだろうか?
弾くのが好き、という理由があると思う。これは芸術を好きになる上での最初の一歩であると思う。(つまりこれが一番の理由になるということは芸術をまだ好きになれていない)
さて、ここまで偉そうなことを書いてきたが、これを批判しているわけでは全くもってない。
単純に私の好みでないということである。
私は心の底から音楽という芸術を愛している人間の演奏が好きなのである。
ここで話が戻ってくる。
及川くんは私の理想の音楽家である。
技術力が高いのはもちろんなのだが、それに甘えていない。弾いていてとても幸せそうで、本当に曲や作曲家、ヴァイオリン自体を愛していて、その愛情や幸福感が音から伝わってくる。
プログラムの作り方も理想的である。
音楽の背景や調性などを考えた上でテーマをしっかりと作っている。(最近はお子様セットのような演奏会が多すぎる)
センスの良さと品を感じる。
及川くんのヴァイオリンを聴いているとこちらも幸せになる。
演奏についてだが、
お得意のポルタメントやビヴラートはとてもおしゃれについていて、1900年台の演奏家を彷彿とさせる。G線の鳴りがとても美しく心揺さぶれた。
また、ピアノの佐伯さんも素晴らしかった。とても美しい音で、映えるところは映え、ヴァイオリンに付けるところはしっかりとつけていた。雰囲気から出るオーラも及川くんにぴったりだった。
気になったところで言うと、後半くらいから及川くんが弾きながら何かを気にするかのような表情をしていた。(楽器のトラブル?虫?弓?)少し心配した。笑
まとめると、及川くんの考え方や思慮深さ、愛がよく伝わった演奏会だったと思う。
藝大が開いていた時はこのような人間と、たくさん交流でき、刺激をもらっていたのに対し今はそれが無くなっていた。久しぶりにたくさんの刺激をもらえた。
自分ももっと頑張ろうと思う。
宮川清一郎
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