
第十七回読書会:夏目漱石『それから』レポート(感想・レビュー)
この回は新しく参加していただいた方が4人もいて、10人満員御礼でした!
今後も多くの方に気軽に足を運んでいただけるような、楽しい会にしたいと思います!
主な感想……
・医療系の描写が多い(看護師さんの間でもおすすめされるらしい)
・身体的描写がユニーク
・『三四郎』より展開が合ってワクワクした
・終わり方が意外
・三千代に告白するシーンが好き
代助は今で言う「HSP」だったんじゃないか?
今回の読書会の意見で、とりわけ私が興味を持った意見として、主人公の代助は「Highly Sensitive Person」略してHSPだったんじゃないかというご意見です!
HSPとは……「ものごとを深く考える」、「刺激を受けやすい」、「感情の面で反応しやすく共感しやすい」、「かすかな刺激に対する感受性が強い」といった、繊細な心の持ち主のことを言います。
考えすぎてしまう性格について、次のように記されています。
彼の頭は、彼の肉体と同じく確であった。ただ始終論理に苦しめられていたのは事実である。それから時々、頭の中心が、大弓の的の様に、二重もしくは三重にかさなる様に感ずる事があった。ことに、今日は朝からそんな心持がした。
代助が黙念として、自己は何の為にこの世に生れて来たかを考えるのはこう云う時であった。(夏目漱石『それから』新潮文庫)
「大弓の的」とな!すごい表現でございます!
なんでぐだぐだ考えるのだろう?と理解できない人もいたようですが、私はこのくだりは共感しました。
こうした感想の共有こそ、読書会の醍醐味ですね♪
理想が高すぎる主人公という意見も
もう一つ興味深かった意見として、「代助は目標が高すぎるんじゃないか」というものがありました。
彼は肉体と精神に於て美の種別を認める男であった。そうして、あらゆる美の種類に接触する機会を得るのが、都会人士の権能であると考えた。あらゆる美の種類に接触して、そのたび毎に、甲から乙に気を移し、乙から丙に心を動かさぬものは、感受性に乏しい無鑑賞家であると断定した。(夏目漱石『それから』新潮文庫)
容姿端麗で教養もあるものでないといけないようで、「都会は人間の展覧会に過ぎないからであった。(夏目漱石『それから』新潮文庫)」としています。都会のある側面を言い得ているなと思いました。
代助の父親世代だったり田舎では、「親の極めた通りの妻を迎えて、安全な結果を得るのが自然の通則(夏目漱石『それから』新潮文庫)」であるのだけれど、都会人にとってはあらゆる結婚が不幸を持ち来すものと断定しているのです。
たしかに代助みたいな価値観の男が、人間の展覧会場で結婚をすることは、難しいことなのかもしれません。常にひと目に晒され比較されていては、本当の幸せは得られないでしょう。
ここから『門』へ
代助の考えを一蹴し、同調圧力に屈しない主人公が、前期三部作のフィナーレを飾る『門』の主人公、宗助です。
宗助は愛する人と一緒になり、その平凡な生活の中でも世間の無言の圧力に屈しない道を選んでいます。
その場合の幸せは、吉と出るのか、凶と出るのか?
なにがどう幸せなのか。幸せとはなんなのか。
三角関係という装置を通してそんな問いかけをしています。
あなたは誰に共感しますか?
2021年5月16日日曜日開催

**********
【参加者募集中!】
「週末の夜の読書会」は毎月一回開催しています。
文学を片手にワイガヤで一緒におしゃべりしませんか?
参加資格は課題本の読了のみ!
文学の素養は一切必要ありません^^
ご参加希望の方は、以下の専用フォームよりお申し込みください。
【申し込みフォームはこちら↓】
【問い合わせ連絡先↓】
shuumatuno46@gmail.com
【読書会スケジュールはこちら↓】
【第17回課題本】