星の王子さま表紙

第七回課題本: サン=テグジュペリ『星の王子さま』レポート


さまざまな出版社から色々な訳者の手による本書が出ていますが、わたしは倉橋由美子訳(文春文庫)のものを選びました。

翻訳されたような違和感はなく、初めから日本語だったかのような自然な翻訳で、たいへん読み易かったです。
これが彼女の遺作となったとのことでした。

『星の王子さま』は『聖書』や『資本論』に次いで世界中で広く読まれてきた、などと言われています。
なぜ国を超えてこんなにも読み継がれるのでしょうか。

倉橋氏はあとがきで、
「これは本屋の児童書のコーナーに置かれて子供たちの圧倒的な人気を博する性質の本ではありません。」と断言しています。

正直、難解であるがゆえに好きになれない本だったのですが、
人気の理由を知りたいと、この度取り上げてみました。


「大切なものは、目に見えないんだよ……」
この一文が有名とのことですが、
まあ、だからこそ文学というものが成り立っているのでは?当たり前では?
と思っていました。
それをわざわざ言っている本なのかしら?
なぜ?

読まず嫌いも良くないと思い読み進めてみますと、精神世界を大変美しくわかりやすく描かれていて、 あっという間に読み終えてしまいました。

読書会で感想として挙がったのが、
電車に乗って無意識に会社に行く場面にハッとさせられ、自分がまさにそうなっていた、というご意見や、
「花」という奥さんとの関係が気になる。

「花」との関わりの中で王子さまは成長している、
などがありました。

※※※※※※

主人公の「私」が墜落事故で極限状態に陥り、命の危機が迫る中で現れたのが「星の王子さま」でした。

これは主人公である「私」の内側を象徴しているインナーチャイルドの出現であると考えました。

最初は。

星の王子さまは「私」にいろいろなことを教えてくれます。

その中で今回着目したいのは「バオバブの木」のエピソードについてです。

バオバブの木は小さいうちに抜いておかないと、とんでもないことになる。
星は小さいから根が突き破り、バオバブが繁茂すると星が破裂してしまうというのです。

その大変さを訴えるために「私」はバオバブの木を一生懸命に絵にしてくれています。挿絵にまでなっています。

どの星にも「いい植物」と「悪い植物」があるそうです。
もちろんバオバブは悪い植物です。

でも、なまけものはそれを抜かずに放置してしまいます。
気がついたときにはもう手遅れになるのです。

このエピソードの後に、いい植物の話へと展開されていきます。
王子さまの「花」についてです。

高飛車で虚栄心の強い「花」とのやり取りに疲弊してしまい、王子さまは逃げ出してしまったのでした。

でも、後になって気付きます。「彼女の言葉ではなくて行動で判断するべきだった。彼女はぼくの星をいい匂いで満たしてくれた。」

花が大切なものの象徴であるのなら、バオバブの木の象徴するものは一体何なのか。

星に飛来してきた種の時点では、いいか悪いかの判断はつきにくいのです。

ただ、バオバブと分かったら即刻、抜いたほうがいいでしょう。バオバブの種はひっきりなしに飛来してきます。その芽を早めに抜いておけば、星は守られるのです。

星は王子さまの住む場所です。
王子さまの住み処。
王子さまは「私」の内側をあらわす象徴と読むのなら、星は私にとっても大切な拠点です。
心の拠り所。
いつかは星を滅ぼす種。
外から飛来してくるそれは、いわゆる世間の基準だったり、他人の判断、一般常識といったものの象徴だと考えました。

自分の好きな物、興味のあるものがよく分からないと悩む人が多いです。
わたしもその一人です。

もしかしたらそれは、バオバブの木があなたの星に繁殖してしまっているからなのかもしれません。

つまり心の中が、世間体やら他人の意見で、埋め尽くされているのではないでしょうか?

こうなると、星の王子さまはインナーチャイルドというより、「私」のメンターであると考えた方がすっきりします。

なびかないブレない態度は一見、子どものわがままのようにみえて、実は「私」の心に宿っている純粋な感情を示してくれる真の大きな存在であると。

そして、メンターも完璧ではなく、「花」とうまくいかないこともあるのだと。

バオバブの木については、作者の出身、フランスになぞらえて、当時ドイツに占領されていたフランスの状況を表現している、との解釈もあるようです。史実に則った解釈もまた面白そうです。

まだまだ解釈は尽きないようです。

2020年2月1日土曜日開催

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本屋さんの閉店後のスペースをお借りして、読書会を主催しています。気軽でおしゃれで、ちょっと知的な社交の場を作りたいとはじめました。お酒を呑みながら、ラフに文学について語れる会を目指しています。こちらの「note」では、その読書会のレポートを主に掲載していきます。
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