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認知症の薬

 私は昔、同時に二人の認知症患者の介護をしていました。母と大叔母です。今から思い出しても大変でした。認知症患者を家庭で介護するのは、不可能と言っていいぐらい難しいことなのです。
 そんな折、新聞広告に目を奪われました。認知症に効果があるという飲み薬です。大きな広告です。当時、保険適用されていたアルツハイマー病の薬はアリセプトだけで、母も大叔母もそれを服用していました。
 保険適用されていないけど、効果があるというその薬、少しでも介護が楽になるなら、と購入を検討しました。費用は月に一万円です。母と大叔母で2万円。痛い出費ですが、効果があるなら代えられません。
 念の為、大叔母の主治医に相談してみたら、効果は保証できないとのことでした。先生、その薬のことをご存じなかったのです。
 あやしい、とも思いましたし、実のところ月二万の出費はしんどかったので、その薬の購入は見送りました。
 数年後、新聞の隅の記事に小さく載っていました。その薬を研究機関で分析実験したところ、認知症に対して一切効果がないことが確認されたとか。
 偽薬だったのです。危ないところでした。月2万なら、年24万、悪徳業者にだまし取られるところでした。認知症家族はみなつらい思いをしています。人の弱みにつけ込んだ、卑怯な商売です。
 新聞も許せない。あんなに大きく広告を出しておいて、薬が偽物だという記事はすごく小さい。新聞の広告で騙された人もいるはずです。こういう記事は大きく扱うべきです。
 最近SNSを使った偽広告が問題になっていますが、新聞やテレビにもまだあるはずです!
 みんな、気をつけて! メディアはスポンサーに弱い。嘘の広告でもお金出してくれる会社には甘いのです。
 もう何も信じられませんね。

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イラスト Ammatar
Medicine for Alzheimer ‘s disease

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