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床の色が違う


 認知症介護には24時間365日介護が必要な時期があります。自力で外出できるけど、自力で帰宅できなくなる時期です。徘徊といわれるこの時期、同居家族はすごくつらいです。誰かが、ずっとついていなくてはならないのです。
 しかし、それから解放される時期が訪れます。本人に、自力で外出する気力と体力がなくなる時期です。しかし、この時期は別の意味で、つらい状態も始まります。トイレの世話が始まるのです。
 トイレがどこかわからないので、トイレではないところで、トイレをしてしまいます。その後片付けのつらさは言葉にもなりません。
 トイレの失敗をさせないためには、定期的にトイレに誘導して用を足すようにしなくてはいけません。トイレの介助は症状が進むごとに、介護側の負担が大きくなっていきます。
 この時期、意外な障害があって、驚いたことがあります。両手をひいてトイレ誘導するのですが、居間から廊下へ、廊下からトイレへ移動するとき、母の足が止まるのです。しばらく立ち止まり、段差を乗り越えるように敷居をまたぐようになりました。
 居間と廊下とトイレでは床の色が違います。認知症患者は床の色が違うと、それが床の色の違いなのか、段差なのかわからなくなるのです。これを奥行き知覚の障がいというそうです。
 私達は自分の住んでいるところの床の色を覚えていて、どこが段差なのか覚えていますが、認知症患者には覚えられません。床の色が違うと、怖くて足を踏み出せないのです。
 今更、床の色を変えるわけにはいかないので「ここは床の色が違いますよ。歩いても大丈夫ですよ」と毎回声をかけていましたが、こうなることがわかっていれば、床の色を統一したのになぁ。
 これから終の家を手に入れるみなさん。床の色は同じ色にしておくと、後々便利かも知れませんよ。
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イラスト by Vladfree

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