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【AIと戦略】人事制度は人間中心になる。『予測マシンの世紀 第四部』#10

こんにちは。シンラボ共同代表の草場です。

AIとの共同に関して、『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』をまとめていきます。推理小説のようで、ドキドキワクワクです。

目次
はじめに―機械知能
安さはすべてを変化させる
第1部 予測
第2部 意思決定
第3部 ツール
第4部 戦略
 第十五章 経営層にとってのAI
 第十六章 AIがあなたのビジネスを変容させるとき
第5部 社会(AIと人類の未来) 

いよいよ第四部、戦略です。どう戦略に組み込むか、一番大事な部分です。昨日の記事は以下です。

■AIがあなたのビジネスを変容させるとき
昨日は、自動車業界で起こっているジレンマ、部品をどこまで外注すべきか、を見てきました。このジレンマの原因が顧客ニーズがどうなるかなどの不確実性になりました。この不確実性が解決できる予測マシンが作成できれば、業界が大きく変わります。

引き続き、不確実性が特定され、不確実性を減らすAIが登場した場合、何が起こるか、3つの観点で見ていきます。

1.AIのインパクト:資本
2.AIのインパクト:労働力
3.AIのインパクト:データ

1は昨日見ました。不確実性が解消される予測マシンが出来れば、様々な条項を契約書に事前に盛り込めるため、パートナー契約が容易になり、自社で大きな施設を持つ必要が無くなります。では、続きを見ていきます。

2.AIのインパクト:労働力
今や当たり前ですが、ATM、便利ですよね。アメリカでは1980年代に導入されたそうです。窓口業務をの自動化です。ここで起こった変化は?テラー、は窓口係・出納係という意味です。

労働統計局によると、テラーの仕事は、自動化されても無くなっていない(図1参照)。しかし、銀行の窓口業務からは自動化された。窓口担当者は結局、現金の回収・払い出し以外の銀行商品のマーケティングや顧客サービスを担当することになった。それをマシンが人間よりも確実に処理するようになった。銀行が支店を増やそうとしなかった理由の1つは、まさにセキュリティの問題と、銀行の窓口業務のような取引に時間を費やすことによる人的コストの問題だった。このような制約から解放されたことで、銀行の支店は増え(都市部では43%増)、形態や規模も拡大し、それに伴って時代錯誤的に「テラー」と呼ばれるスタッフも増えていった。

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図1. 銀行のテラー数とATM数(“How Computer Automation Affects Occupations: Technology, Jobs, and Skills,”より引用)

ATMで自動化が進んだため、仕事が無くなる、と思いそうですが違いました。銀行の規模拡大のネックだった部分が解消されて銀行の数が増えて、それに伴い窓口対応するテラーの数も増えました。考えれば当たり前ですが、心理的に仕事が無くなるかも、と思ってしまいそう。

ATMの導入は、組織変革をもたらした。新しいテラーは、より多くの主観的な判断を必要とした。本来のテラー業務は、定型的で機械化しやすいものだった。しかし、お客さまとの会話やローンの相談、クレジットカードの選択などの新しい仕事は、より複雑なものだ。その結果、新しいテラーが良い仕事をしているかどうかを評価することが難しくなったのだ。

これもジレンマですね。自動化により人間は主観的な判断が必要な、ある意味でクリエイティブな仕事を出来るようになりましたが、その仕事ぶりの評価は難しいです。

業績指標が客観的なもの(銀行の行列が短くなっているか)から主観的なもの(正しい商品を販売しているか)に変わると、人事管理はより複雑になる。経済学者によれば、職務上の責任は明示的なものではなく、より関係的なものにならなければならないそうだ。

数字的にわかりやすいもので従業員の評価をすると簡単です。しかしATM導入で、その仕事は置き換わり、人間は主観的な判断が必要な仕事をします。そうすると、人事評価が関係的なものになります。関係的なものとは、どういうことでしょうか?

従業員の評価や報酬は、タスクの複雑さや従業員の長所・短所を考慮した業績評価など、主観的なプロセスに基づいて行われる。このようなプロセスを導入するのは困難だ。なぜなら、パフォーマンスを向上させるためのインセンティブを生み出すプロセスには、多大な信頼が必要だからだ。

仕事の管理を数字でするのが難しい以上、従業員の長所などを取り入れた人事制度を作る必要がありますが、これが難しい。関係的なもの、だからです。これは評価指標が明確でないので、なぜこの給料なのかが明確にできません。本では、以下のようにまとめられています。

この経済論理の直接的な意味は、AIによって人事管理が関係的なものにシフトし、取引的なものから離れていくということである。その理由は2つある。

資本がAIにより外注化されたように、人事管理も関係的なものにシフトします。

第一に、人間の判断に価値がある場合は、その判断をマシンにプログラムすることが難しいため、人間の判断が活用される。報酬が不安定であったり、未知であったり、実行するには人間の経験が必要だからだ。
第二に、マシンによる予測が増えてくると人間の判断が重要になるが、その判断には必ず主観的な性能評価が必要になる。客観的な評価が可能であれば、人事管理をしなくてもマシンが判断してくれる。このように、目標が主観的である場合の意思決定には、人間が欠かせない。そのため、そのような人たちのマネジメントは、より関係性の高いものになる

AIによる自動化により、人間の判断の価値が高まります。それが人事制度にも入ってきます。人間が欠かせません。

このように、AIは資本への影響とは異なる労働への影響を与えることになる。判断の重要性から、従業員の契約はより主観的なものにする必要がある。

うーむ、自分の会社での評価制度を考えていますが、再考する必要がありそうです。

もう一点、労働へのAIの影響が挙げられています。労働者のアプトプットをある程度AIで予測できれば、契約書に様々な可能性を盛り込めるので、資本設備同様、労働力も社内で抱えずに外注が可能です。

さて、まとめます。

労働力に対するより重要な影響は、人間の判断力の重要性が増すことだ。予測と判断は補完関係にあるから、予測が良ければ判断の需要が高まる。つまり、従業員の主な役割は、意思決定において判断を下すことになる。これは、定義上、契約書にうまく明記できない。

その通り。予測が安くなり、判断が重要になる。しかし、正しく判断しましたら、この分給料払います、みたいな契約書は作成難しいです。

ここで、予測マシンは戦略的ジレンマにおける不確実性を増大させる。なぜなら、判断の質を評価することは困難であり、契約を結ぶことはリスクを伴うからだ。逆に言えば、予測能力が高ければ高いほど、人間が行う仕事の質に対する不確実性が高まることになります。つまり、報酬機能のエンジニアやその他の判断力を重視する労働者を社内に置いておく必要がある

判断の質を評価できる報酬機能工学がここでも必要で、それを出来るエンジニアが求められますね。

本日ここまで。

草場壽一
https://sinlab.future-tech-association.org/

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