ナンバーナイン プレスリリースへの違和感
気になったので書いてみます。
こんなプレスリリースを見かけました。
ナンバーナイン、事業開始から半年で電子コミックの配信代行1000作品突破
ナンバーナインとは「「漫画でひとびとの人生を豊かにする。」をMissionに掲げるデジタルコミックエージェンシー」だそうです。
「漫画クラウドファンディング、電子書籍配信代行、漫画アプリ『マンガトリガー』、東京都渋谷区に構えるマンガ好きのためのコミュニティサロン『トリガー』の4つのサービスを通して、「作る→届ける→読む→繋がる」の視点でデジタル時代における最適な漫画体験を追求します。」とのこと。
今回のプレスリリースは、電子書籍配信代行事業に関するものです。
僕の立場を説明すると、ナンバーナインとは言わば同業者です。
「電子書籍配信代行事業=取次」の業務内容は熟知しています。
競合といえば競合かもしれません。
不当にディスるつもりはありませんが、その辺りは差し引いてお読みください。
記事を見ていくつかの違和感を覚えました。
まず、「事業開始から半年で電子コミックの配信代行1000作品突破」という見出しについて、「半年でそんなことができるだろうか?」と感じました。
6ヶ月で1000作品を配信するためには、毎月160冊以上の作品を各ストアにそれぞれ納品しなければなりません。
作品をデータ化し、商品情報を整え、各ストア担当者に連絡、納品するには、専門のチームが必要な規模です。
ナンバーナインの納品先ストアは200カ所程あるそうです。
実際の記事を読んでみて、最初の違和感は解消しました。
(ナンバーナイン、事業開始から半年で電子コミックの配信代行1000作品突破より引用)
記事中のグラフでは、2108年11月に他社(上流取次など?)と事業提携をし、一気に取り扱い作品数が増えていました。
毎月地道に作品数を増やしたわけではなかったのです。
ナンバーナインは作品のデータ化や、商品情報の作成には関わっておらず、業務提携した会社から一度に500~600作品分の作品データ、商品情報を預かり、それをそのまま各ストアに取り次いだだけだとしたらどうでしょう。
その場合、「上流から預かったデータの確認を行わず、ストアに丸投げする」など少々手抜きをすれば、1ヶ月で500以上の作品を納品することはなんとか可能です。
「実は上流の取次から預かったデータを各ストアに流しただけでした」というオチであれば、「事業開始から半年で電子コミックの配信代行1000作品突破」という見出しは、少々ミスリードではありますが、嘘とまでは言えません。
しかし、ここでまた疑問が生じます。
グラフの「契約作家数」も2108年11月に一気に増えています。
前月から一気に400人くらい増えていますが、「契約作家」と書かれているからには、作家と直接契約しているのでしょう。
業務提携した会社と契約している作家が400人いたとして、それを「契約作家」と記述するのは、拡大解釈が過ぎます。
となると、「業務提携した会社から一度に500~600作品分の作品データ、商品情報を預かり、それをそのまま各ストアに取り次いだだけではないか?」という僕の推測は間違っていたことになります。
違和感は振り出しに戻りました。
「作家を斡旋する業者」など、何らかの業務提携会社はいたとして、1ヶ月の間に400人の作家と交渉し、条件を詰め、契約を締結し、その上で、個別の作家からデータを預かり、商品情報を整備し、200のストアに納品したとなれば、それは数十人規模のチームが必要な作業です。
半年がかりでも不可能に近いです。
「そんなことができるだろうか?」
振り出しに戻った違和感はさらに深度を深めました。
加えて、2018年8月の契約作家のグラフを見ると、画像に欠けた部分があり、加工した痕跡のようにも見えます。
また2018年11月のグラフの横には「事業提携で約700作品を獲得」と書かれています。
「業務提携でプラス700作品を獲得した」と読むのが自然ですので、前月までの配信作品が100ちょっと、合計800作品前後となるはずですが、
グラフは800どころか、700にも届いていません。
「業務提携分を含めて合計700作品に到達した」と読ませたいのであれば、この書き方は適切とは言い難いです。
さらに言うと、グラフを見る限り1月現在の直接契約作家数は700名程に見えます。
しかしながら、各ストアを確認すると、ナンバーナインが直接取り次いでいる作家は700名も見当たりません。
例えば、Kindle。
ナンバーナイン経由で配信している作品は349作品。
作家数は当然それよりも少ないです。
700名と直接契約があるようにはとても見えません。
これらの違和感を解消する合理的な説明が欲しいです。
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