ある知人の死

昨年末、僕の知人であり恩人である方が亡くなりました。

突然の死でした。
ある友人から「亡くなったという噂を聞いたんだけど本当?」とメールがあり、半信半疑のまま戸惑っていた所、別の知人から連絡が届きました。
詳しく話を聞いている内に「亡くなった」という言葉が重みを増し、少し泣きました。

女好きで自慢話の多い人でした。

あの日、あの場であなたの長い話の切れ目を探っていたのは、僕だけじゃない気がします。
「あなたのモテ話は聞き飽きたよ!」って。
もしかしたら、あなたもそれを感じていたのかもしれない。
だから余計熱心に話を続けたのかもしれない。
本当は寂しかったのかもしれない。

そんなことを考えて、また少し泣きました。

葬儀はすでに近しい人たちだけで済ませたと聞きました。
僕は自分がその「近しい人」に入らなかったことを寂しく感じました。
最後に顔を見たかったなぁ。

もしかしたら全部嘘かもしれない。
SNSを何度かチェックしました。
あなたは何もつぶやきません。
あんなによくしゃべる人だったのに、何でこんな時に黙っているんだろう?

最近になって、ようやく亡くなったという事実が世間に公表されました。

それを知った人たちが、ネット上で一斉に思い出を語り始めました。
どれほどあなたが良い人だったのか、温かい人だったのか、素晴らしい人だったのか、自分と仲良しだったのか。
僕はその一つひとつに心の中で悪態をつきました。
そんなに仲良しだったんなら何で今まで死んだことを知らなかったんだよ?
あなたは聖人君子ではなかった。
長所もあれば短所もあって、だけど、人間らしくてチャーミングな人だった。
どうか人の死を消費しないでください。

そして、僕はその人たちに感謝しました。

僕はこの理不尽な出来事に対して、誰かに怒りをぶつけたかった。
彼らはその相手になってくれたのだと。

大好きでした。

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