共感できるネットワーク


仕事をするために、どんなネットワークがあるといいのか。そのことについてつらつらと考えてみたいと思います。

ある時から、まずは信頼関係を築いてから仕事をしたいと考えるようになりました。それは、20代の時に体験した仕事のプロセスでの指摘が大きく影響しています。20代の頃は、とにかく良いアウトプットを生み出すために、どうしたらいいかを考える毎日でした。

ぼくの立ち位置は、ディレクター。営業がクライアントからもってきた仕事を、どうやって納期までに、クライアントが納得するカタチにして納めるのか。もちろん、その先にあるユーザーや社会が良くなることと、会社の利益がきちんと確保されることのバランスも考えないといけません。

大学でデザインを学んだので、どうしてもビジュアル優先で、質的に良いものを完成させたい、他の人がやっていないことをやりたいという気持ちが強くありました。

仕事のやり方は、先輩のやり方や、上司の指摘をベースにして、少しづつ自分なりのやり方を身につけていったと思います。ディレクターと言っても、実際には、予算管理と、スケジュール管理が大事な業務でした。その上で、デザインの質をどうあげていけるのか。試行錯誤の毎日でした。

与えられた予算と納期。その中で、最大限のパフォーマンスを発揮すること。時間と粗利ノルマに追いまくれながら、少しでも良いデザインを実現するには、どうしたらいいのか。そんな中で、だんだんわかってきたのは、誰にどうやって仕事を依頼するかでした。

その仕事にふさわしいデザイナーやカメラマン、イラストレーター、あるいはコピーライターやプランナーは、誰なのか。どうやって仕事を依頼するのか、そして、その組み合わせをどうしたらいいのか。頼む人と頼み方によって、結果が大きく変わることを実感し、企画、制作体制を整えることの重要性を認識し、実践するようになっていきました。

社内には、デザイナーはいない会社でした。なので、外部のデザイナーに仕事を依頼することができました。だんだんと信頼できる仲の良いデザイナーや制作会社が増えていき、効率よく仕事ができるようになっていきました。

仕事の内容によって、それまで仕事をしてきた制作会社に依頼することもあれば、新しい会社やデザイナーを探すこともありました。常に、いっしょに仕事をしたくなるデザイナー、イラストレーター、カメラマン、コピーライターなどのクリエーターとの出会いを求めていました

特に、20代は、イラストに関わる仕事が多かったせいか、常にイラストレーターを探している感じでした。いくつかのイラスト専門のギャラリーをまわったりする中で、イラスト業界の全体像みたいなものも見えて来るようになりました。イラストレーターの売り込みも多く、カレンダーやカタログの表紙にイラストを使うことが多くなりました。

その時期の仕事の内容によって、求めるクリエーターが変わっていきます。印刷会社に所属していた時には、会社案内やPR誌などを企画制作するために、エディトリアル系のデザイナー、編集者、コピーライター、カメラマンなどのクリエーターの知り合いが増えていきました。

30代で、展覧会の企画運営をするようになり、会場構成ができるデザイナーや建築家、会場のグラフィックを含めて、DMなどのデザインが得意なデザイナーの知りあいが増えていきました。

そして、いつのまにか、展覧会に参加するデザイナーや建築家とのネットワークができていき、その世界のハブのような存在になっていきます。自分の知り合いの90パーセント以上がクリエーターになリ、そのクリエーター同志をつなげるために、交流会を開催したりするようになりました。

40代になって、会社を離れて、商品企画の仕事をするようになってからは、それまでに展覧会に参加してくれていたプロダクトデザイナーとの仕事が増え、つくった商品を伝えるためのグラフィックデザイナーやWEBデザイナー、展示会や店舗を手がけるインテリアデザイナーや建築家とのネットワークが充実していきます。

自分が住んでいる地域を意識した仕事や活動が増えるにしたがって、志を共にするクリエーターとのつながりや、クリエーターに限らず地域を面白くしたいと考える人とのつながりが増えていきます。

依頼される仕事から、自ら仕事を生み出す仕事への変化。仕事を依頼するクライアントや、ただ求められる仕事をしていくれるクリエーターよりも、志を同じくして、目指す社会や暮らしを共感できるパートナーを求めるようになっていきました。それは、とても時間のかかることなのかもしれませんし、だからこそ、長く続く仕事になるかもしれません。

専門分野をこえて、目指す社会や地域を共有できるパートナー。組織をこえた個人がつながり、大きな力になる。共感できるネットワーク、そして、その先にあるコミュニティ。そこに、もっとクリエーターの力が活かされることを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?