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時代を捉え、声を汲みとる。

気がつけば、私も30歳目前。バリバリのアラサーである。25歳の誕生日以降、年齢を重ねることに対して言われもない喪失感と漠然とした焦りに駆り立てられてきた。

学生時代の友人と数年ぶりにLINEをしてみれば、「そういえば俺、結婚したわ」の一撃である。いやとてもめでたく喜ばしい話じゃないか。皆んな知らぬ間に、それぞれのライフステージを歩み始めている。

周囲から幸せの報告が届くたび、未婚の自分は、ほんの少しセンチメンタルになりつつ、「結婚とは」「幸せとは」なんてことを考えはじめ、とあるCMを思い出す。

それは2017年、ゼクシィのCMで放たれたコピー。


結婚しなくても幸せになれるこの時代に
私は、あなたと結婚したいのです。

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引用元:https://mag.sendenkaigi.com/senden/202001/diversity-inclusion-in-advertising/017700.php


このCMとコピーは多くの共感を得て、瞬く間に話題になった。私自身、テレビで初めて目にした時の感動は今でも覚えている。

ゼクシィとは説明するまでもなく結婚情報誌であり、結婚というライフイベントを応援するサービス。ともなれば、これから結ばれる運命の2人の順風満帆な様子を描き、結婚とはいかに幸せで尊いものなのかをベタに語るのが一般的。

けれど、世間の感情の目を向けるとどうだろう。
「結婚することが全てではない」
「結婚=幸せのカタチではない」
「幸せのあり方はそれぞれが決めるもの」
という本音が垣間見えるし、もはや主流になりつつある。いわゆる価値観の多様性を認め合う時代になってきた。

・結婚は幸せになるための必須条件ではない。
・結婚しなくても十分幸せに生きている人もいる。

そんな時代の中でゼクシィは、結婚=万人にとっての幸せの象徴ではないという価値観と真正面から向き合いアンサーしたのがこのCMだと思うのです。

「結婚しなくても幸せになれる」という多様化した時代を捉え、生活者の本音を汲み取る真摯さと懐の深さ。ゼクシィにとって向かい風であるはずの価値観から目を背けず、むしろ逆手に取り「だからこそ結婚って尊い」と強く感じさせるメッセージを伝えることで、一貫した企業姿勢をブラすことなく、本来ターゲットではない人たち(結婚を考えていない人)すら味方につけてしまう。

結婚しない人の人生観を否定せず、その上で結婚という選択をした人たちに幸せを噛み締めて欲しい。そして応援するゼクシィでありたい。そんな確固たる意思が、「結婚しなくても幸せになれるこの時代に私は、あなたと結婚したいのです。」という言葉に込められているような気がするのです。

様々な価値観が許容される今の世の中において、時代の映し鏡である広告の作り手たちも、送り手であるブランドも、正確に時代を捉え生活者の本音を汲み取り向き合う姿勢が一層求められる。自分自身もひとりの生活者であることを忘れず、社会の感情変化に敏感でありたい。そしてやっぱり結婚っていいなとシンプルに思う私がいたのでした。

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