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バリアフリーを本気で考察してみた

今、僕の目の前には高い壁がある。
とても自力では登れそうにない。
ベルリンの壁のように崩壊させることも出来そうにない。

さあどうしよう?

周りを見渡してみる。人が沢山いる。
あの背の高い人に肩車してもらえれば登れるかもしれない。あのはしごを持っている人に手伝ってもらえば、超えられるかもしれない。
でもみんな忙しそうだ。
それぞれ自分のことで精一杯なのかな?
困っている僕のことなんて視野にすら入っていない。

さあどうしよう?

このまま僕は壁の向こう側へは行けないのだろうか?行ってはいけない理由があるのかな?一生制限されたまま、暮らさなければいけないのかな?

そんな時に後ろから声が聞こえた。
振り返ると一人の青年が立っていた。

 「大丈夫ですか?」
「何かお手伝いしましょうか?」

 彼は高い壁に簡単にはしごをかけてくれた。
そして僕が登っている間、落ちないように支えてくれた。

僕は壁の向こう側に行くことができた。
そこには見たこともない世界が広がっていた。

さて、冒頭は少し物語風に書いてみましたが、ここからは本題へ。

■バリアフリーって何ですか?

そう聞かれて皆さんは何と答えますか?

段差を無くすこと?手すりをつけること?
それぞれ色んなイメージがあると思います。

何となく「バリアフリー」って言葉は聞いた事あるし、使った事もある方が多いと思いますが、ちゃんと説明できる人は少ないと思います。

僕もその一人です。

だから、僕なりに本気でバリアフリーを考察してみたいと思います。

■バリアフリーの種類

バリアフリーの概要は上記のサイトを参照ください。

まず「バリアフリー」と聞いた時、おそらく多くの人は最初に「物理的なバリアフリー」を思い浮かべると思うんですよ。

階段をスロープにして車椅子が通れるようにしたり、手すりをつけて片麻痺の人が安全に歩けるようにしたり。

これは皆さんよく知っていますよね。街中でも見かける事が多いと思います。

ただバリアフリーの種類は他にもあります。
そんな中でも今回は最近注目されており、僕たちが明日から実践できる「心のバリアフリー」に関して考察したいと思います。

■心のバリアフリーとは?

ここで冒頭で書いた物語を思い出して欲しいです。僕は物語の中で「壁」を「心身機能不全」の象徴として書いてます。

例えば、生まれつき手足が無いとか、脳卒中で半身不随になったりとか、目が見えないとか、言葉が喋れないとか、学習障害があるとか。形態的および機能的な不全のことです。

主人公はこの「壁」によって向こう側へ行けずに困ってるんですよね。これがバリアです。心身機能不全により選択肢が制限されている状態のことを不自由と言います。

ではバリアフリーにするためにはどうすればいいのでしょうか?皆さんの前にも高い壁があると思って考えてみてください。

どうでしょうか?

「壁を壊して無くそうよ」という発想になる人が多いかもしれません。

でも、実はこの壁ってめっちゃ頑丈で高くて、0にするのは現段階ではかなり困難なんですよ。

やっぱり足が無い人は移動するのが大変だし、手が無い人は物を持つのが難しいってことです。※今後はテクノロジーの発展で出来るようになるかも

だから、壁の存在を認めなければなりません。
重要なのは認めた上で何が出来るか?ということなんです。

そんな時に、吉藤オリィさんのこんなtweetがありました。まさに「心のバリアフリー」のことです。

壁(形態的や機能的な不全)が存在していても
困っていなければそれは障害ではないという考え方です。

だから目の前に壁がある場合は
困る壁→困らない壁に変えればいいって話なんですよね。

そこで僕たちができる事は
①壁の高さをできる限り低くすること。
②壁を乗り越える手段を知っておくこと。

これが「心のバリアフリー」の考え方なんですよ。

イメージが湧きづらい方もいると思うので、ちょっと実際の例を見てみましょう。

■心のバリアフリーの例

車椅子で単独世界一周を成し遂げた三代達也さんのコラムから引用します。ベィmagazineという車椅子×旅行をテーマにした雑誌に掲載されているので是非チェックして下さいね。

僕は滞在した国々で沢山のバリアを体験した。悪路、段差、急な坂道、階段、他色々。しかしだからとて、諦めたことは少なかった。何故ならその場でその場でその国の人たちが僕を助けてくれたからだ。「どうした?」「押してやるよ」「俺が付いてってやるから安心しろ」みんなフラットに声を掛けてくれた。

さっきの書いたことと照らし合わせると
①壁の高さをできる限り低くすること。
→困っている人がいたら、躊躇なく声を掛けられること
②壁を乗り越える手段を知っておくこと。
→車椅子などの手助けの方法を知っていること

これが出来れば心のバリアフリーが実現できるんですね。

しかしながら、現状として街で困っている人がいても「手を貸しましょうか」と声を掛けられない、「手伝ってほしい」と手を挙げられないなど、心のバリアフリーは十分に浸透していない状態です。

何故でしょうか?

■何故、心のバリアフリーは浸透しないか?

三代さんはこう言っています。

世界を旅してきて、日本人の心の温かさは今まで旅してきた国の中でもトップクラスだと思う。しかし、何故そこから一歩が出ないのか。それは“知らない”という事と“シャイ”という事なのかなと思う。

日本人が優しいことは皆さんもよく知っていると思います。しかし、そんな優しい日本人でも「知らない」ことに対して声を掛けるハードルは高いってことです。

では何故、僕たちは「知らない」のでしょうか?この記事にヒントがありました。一部抜粋して引用します。

そもそも、日本の社会っておかしいんですよね。欧米では障がい者と健常者の境界線がほとんどなくて、街でも普通に混在しています。車椅子のおばあさんがひとりで街に出てきて、バスの乗り降りや駅の階段の上り下りなどでは、知り合いでもなんでもない赤の他人がサポートする風景がごく自然に見られます。ところが日本の場合は車椅子の方が電車に乗るとき、大仰に駅員3人がかりで車椅子専用のリフトでホームまで上げて、最後尾から乗せています。こんなに両者の違いが際立っている先進国って日本くらいなんですよ。
このように障がい者は人目に触れにくいからこそ、日本の健常者は彼らに関する事実に基づく情報が圧倒的に欠落している。リアリティがないんです。彼らは子供の頃から学校でも「特別支援クラス」と称されたクラスに入れられ、一般学級と分けられています。僕らの時代は「特殊学級」と呼ばれていましたから、それに比べれば名称の進歩はあるのですが。いずれにせよ一般の子どもたちには、幼い頃から彼らとの「違い」を強烈に認識する構造が用意されており、親たちの中には「勉学の進捗スピードが落ちるので障がい児とは分けてくれ」なんて、平気でクレームをつける方もいます。従って、障がい者のリアルな動向や障がいの理由や種別に対して「無知」なのです。
「無知」ということはややもするとお化けや地球外生命体と同じで、その裏側には「恐怖」に似た感情が隠れているのだと思います。
だからほとんどの一般の健常者は障がいをもつ人に対して「なんと声をかけていいやら分からない」のです。彼らを「かわいそうな人」「弱者」と定義して、こちらは「救済側」に身を置くと定義することで本質的な意識改革が行われてこなかったのが、戦後日本の60年だと思うんです。

心のバリアフリーが浸透しない原因をまとめると、

僕たち日本人は子供の頃から「健常者」と「障害者」で分けることが当たり前な環境で育ってきたため、障害者と接する機会が非常に少ない。

その結果として「違う」という意識が強く刷り込まれ、「無知」に繋がっているということなんですね。

■まとめ

ここまで心のバリアフリーとは
①壁の高さをできる限り低くすること。
②壁を乗り越える手段を知っておくこと。

だと述べてきました。

次に、心のバリアフリーが浸透しない原因として
障害者に対する関わり方を「知らない」ことを挙げました。

そしてこれを解決するためには「障害者との接する機会を増やすこと」が重要だと結論づけました。

だから明日からは、電車で妊婦さんに席を譲る、道に迷ってる外国人に道を教える、重い荷物を持ってる女性を助ける。

それと同じように、街中で困っている障害者に声をかけて欲しいのです。最初の一歩が一番緊張すると思います。でも、その大きな一歩を踏み出したあなたのおかげで「困らない社会」に繋がります。2020年には東京パラリンピックがあり、多くの障害者が世界中から日本に来ます。そんな時に多くの人が困っている人を当たり前に助けられる人になれば良いなと思っています。

そして下記のツイートが本当に大事なこと。
僕も全く同感です。
全ての人間の多様性を認めて、共存できる社会が理想だと思ってます。

■オマケ:障害者との接点を作る取り組み

最後に、実際の取り組みを紹介します。

・脳卒中フェスティバル
僕は脳フェスでファッションショープロジェクトのリーダーをやっています。脳卒中当事者と一緒に楽しく遊べるイベントなので興味がある方はぜひ参加してみて下さいね。次は2020年5月に東京で開催予定です。

・Ubdobe
Ubdobeがやっている、Universal ChaosやSOCIAL FUNKといったクラブイベントでは車椅子の人が踊っていたり、人工呼吸器をつけたDJがいたり、自閉症のラッパーが歌っていたりします。僕も大好きなイベントです。とりあえず最高なので来た方がいいです。来れば分かります。


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