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キャリアは、「これでいい」がちょうどいい

”キャリア”について

進学、就職、転職など、キャリアを決する意思決定はとても大切なものです。
「失敗したくない」という気持ちが募るのも当然であり、成功談や必勝法にまつわるコンテンツは、いつの時代も隆盛を極めています。

一方で、新卒で今の会社に入って6年半、あれやこれやと仕事をしてきた中で、こんな感覚にたどり着きました。

『正解なんてある訳がないし、そもそも成功も失敗も曖昧なものである』
『自分も社会も絶対に変わるのに、未来を見通せると考える方が不自然』

働く中で、自分自身のキャリア観も少しずつ変わってきました。


学生時代にもらった言葉

学生時代、現役学生と社会人でキャリアについて自由に語り合うイベントを主催するサークルで活動していました。
自分も含めて、学生から社会人への質問には、頻出テーマが存在します。

『今のキャリア選択に至った原体験はなんですか?』
『今の仕事を天職だと思いますか?それは何故ですか?』
『理想のキャリアを歩むために、学生時代にするべきことはなんですか?』

イベントの度にこの質問と出会い、多くの先輩のアンサーに触れてきました。僕も無邪気に質問しまくってました笑。


その中でも、あまりの強烈さに、今でも鮮明に覚えている言葉があります。

「未来は不確実だし、自分がどうなるかも分からないし、キャリアなんて思い通りにならないもの。自分次第でどうにかなるという前提は捨てた方がいい。原体験なんてないよ。キャリアも人生も成り行きだから。」

衝撃的な言葉でした。
就職活動は、自分が歩みたい人生を実現するための営みであり、得たい未来を獲得するための通過儀礼だと思ってました。
その深層にある考え方は、『未来はコントロール可能で、自分の意思と選択でどうにでもなるものだ』というものでした。

先輩の言葉は言うなれば全くの正反対、『未来はコントロール不可能で、自分の意思と選択ではどうにもならないものだ』というメッセージ。
にわかには信じ難かったのですが、どうやら本当にそうなのではないか、と思い始めたというお話です。


『これがいい』ではなく『これでいい』

前段が長くなりました。
『これでいい』は、無印良品のブランドコンセプトです。すごくしっくり来たので、少し長いですが引用しながら筆を進めます。

「これがいい」「これでなくてはいけない」というような強い嗜好性を誘う商品づくりではありません。無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり「が」ではなく「で」なのです。

『無印良品の未来』より)

ともするとキャリア選択の過程においては、『これがいい』と思える道を見つけ、『これがいい』と信じられる会社に入社することが善であるように語られがちだと思います。

でも、全ての仕事・業種・企業を見た上で判断することは不可能だし、その選択が本当に正しい選択だったのかなんて、誰にも分かりません。
できることといえば、「今の自分にとってはこの道が最善だ!」と確信できるまで考え続けることくらい。最善かどうかは主観で判断できますが、最高かどうかは判断が難しいでしょう。

就活の合否はもちろんのこと、入社後の配属、実際の業務へのアサイン、共に働く社内外の仲間など、基本的に働く上ではほとんどのことが不確実です。
入社を決意した時に憧れた業務に従事し、思い描いたキャリアを歩んでいる人なんて、ほとんどいないのではないでしょうか。


でもそれは、決してネガティブなことではないと思います。
「コントロール不可能である」ことは、時に不安やストレスになりますが、「予想外の未来に歩みを進める」ことは、想像もしていなかった喜怒哀楽との出会いであり、人生を彩ってくれるものでもあるはずです。

自分のキャリアを振り返っても、そんなことばかりです。

・ある企業の選考に不合格になり、急に週末が暇になったことで今の会社のインターンに参加し、入社に至った。
・ベンチャー企業向けのコンサル部隊に配属されたことで、学生時代は全く興味がなかったスタートアップの世界の魅力を知れた。
・ひょんなことからデザインチームの立ち上げに参画させてもらい、興味はあれど自分には無縁だと思っていたデザイン領域で働くことができた。

どれを取っても計算外で想定外、まったく思いもよらない道のりの連続でしたが、本当に充実したキャリアを歩ませてもらい、楽しい日々を過ごせています。

『これがいい』という強い情熱は、時に視野と可能性を狭めてしまいます。
『これでいい』という言葉は、妥協や諦めのニュアンスも帯びていますが、良いも悪いもひっくるめて全てを肯定する力強さも感じる気がします。
そのゆとりや余白こそが、様々な出会いや偶然を呼び込み、素晴らしい未来に導いてくれる鍵なんだと思っています。

もちろん、どんなものでも良いというわけではありません。再び無印良品のメッセージから。

無印良品はこの「で」のレベルをできるだけ高い水準に掲げることを目指します。「が」には微かなエゴイズムや不協和が含まれますが「で」には抑制や譲歩を含んだ理性が働いています。
一方で「で」の中には、あきらめや小さな不満足が含まれるかもしれません。従って「で」のレベルを上げるということは、このあきらめや小さな不満足を払拭していくことなのです。そういう「で」の次元を創造し、明晰で自信に満ちた「これでいい」を実現すること。それが無印良品のヴィジョンです。

『無印良品の未来』より)

これもまた、キャリアに通じる普遍的なメッセージであるように思います。
『これがいい』に縛られることなく、『これでいい』の基準を下げることもなく、常に自分をフラットな状態に保ち、何者にでもなりうるしなやかさを持ってキャリアを歩んでいくこと。
その先に、「明晰で自信に満ちた『これでいい』」人生が待っているのではないでしょうか。


気分で書き始めた割には長文になってしまったのですが、最近考えていたことを一旦吐き出してみました。
随分ご無沙汰してしまいましたが、細々とnoteの更新を再開していきたいなぁと思っています。

では、また。

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